「パパ浮気してるよ?」すべてを見抜く小3娘、突然のカミングアウトに戸惑う母「親の恋愛沙汰に巻き込まれるってキツイ」
2023-01-01 07:30 eltha
■「憧れの彼と結婚できた」妻の呪縛、「パパの好きな人はママじゃない」娘の葛藤
学生時代から憧れていた初恋の同級生と結婚した主人公の妻は、モラハラ気質な夫からどんなに見下されても、「こんな自分と結婚してくれた」と感謝する日々を過ごしていた。夫の派手な交友関係にも目をつぶっていたが、ある日、小学3年生の娘から「パパ、好きな人いるよ。ママじゃない人」と告白されてしまう。離婚を提案する娘は、父親の不倫とモラハラを見抜いていたのだ。
不倫にまつわる作品が増えている中、昨年6月の発売以降、様々な書籍ランキングで上位を獲得した同作。著者・芸子さんは、同作には子どものつらい心情も込められていると語る。
「育児をしている中で、子どもは大人が思っているよりも鋭いし、空気を読むんだなと思う事がよくあります。自分が子どもの頃も、“親たちは気づいていないと思っているみたいだけど、バレてるよ”って思っていたことがいくつもありますし、それを汲んで大人の顔色や空気を読んで発言していた気もします。子どもにとって、親の不倫は一生つきまとうトラウマになると思いますから…。子どもが親の恋愛沙汰に巻き込まれるって、かなりキツいですよね…」
これまで夫の顔色をうかがいながら暮らしてきた妻だったが、冒頭の娘の告白を受けて、子どもに大きな負担を課してしまっていたことを知る。今の関係が「理想の家族」の姿ではないことに気付き、夫への復讐にようやく立ち向かっていく。
「“理想の家族”のイメージは人それぞれだと思いますが、私が思うのは、結婚する前は『笑いが溢れる家庭』が理想の家族像でした。だけど今は、『笑いが溢れているけど、笑いだけで誤魔化さず、したくない話もしっかりできる家庭』だと思います。本作を通じて、何か感じ取っていただけたらうれしいです」と、作品に込めた思いを語ってくれた。
■「金銭面に不安」離婚に踏み切れない妻、女性の“再就職”問題も…
夫の不倫を知りながらも、「子どもたちに与えられる教育の機会やクオリティを下げたくない」という理由から夫婦生活を継続。それから10年経っても相変わらず浮気を繰り返す夫と、一方で頼もしく成長していく子どもたちの姿を描いた『マタしてもクロでした』。「子どものために離婚をしない」選択の是非については、さまざまな議論が展開されるが、作者のうえみあゆみさんは、自身の決断についてこう説明する。
「もともと私は子どもの貧困問題に関心があり、取材を重ねてきました。そこでわかったのは、教育とは『子どもの選択肢を広げ、いずれ夢や希望への挑戦権になるサイクルである』ということ。それを与えてあげられないのは、親として違うなと私は判断したんです」
さらに、「人間は完璧ではありませんからね。子どもたちには、不倫を擁護はしないまでも、両親の姿を通して、どうしようもない弱さを持ったのが人間であるという視点を持ってもらえたらと思いました」とも語る。
パートナーの裏切りに対して、離婚したいと考える人は多い。しかし一方で、金銭面での不安で離婚に踏み切れない人が多いことも事実である。もし離婚できたとしても、養育費が支払われないケースも多い。さらに、年齢を重ねた女性の再就職の壁も立ちはだかる。離婚か結婚の継続か、いずれにしても、裏切られた側の負担は大きくなる。
ネットでは、「日本がもっと女性の再就職が安易で、賃金が男性と同じ離婚しやすい国で、別れた子どもに対して親が責任取る国ならいいんだけど」という声もあり、女性が生きづらいと言われる厳しい日本の現状もうかがえる。同作の主人公のような割り切った考え方もまた、“正解”なのだろう。