身体的特徴の指摘に「NOと言い続けたい」 胸の大きさに悩む女性のロールモデルであり続ける気概
2021-04-25 eltha
胸が大きいことで「自分が意図していないのに、セクシーが出てしまう」
「もともと私、Iカップあるんですね。体はMサイズなんですけど、市販のお洋服でMサイズを買っても、バストの部分だけ入らないという現象が起きる。だからって、バストに合わせて3Lの洋服を着ると、肩落ちしちゃうとか、すごく太って見えちゃうとか、洋服に関してはそんな悩みがありましたね」
――日常生活のなかでは、どんな影響があったのでしょうか?
「自分が意図していないのに、セクシーが出てしまうことが一番嫌でした。例えば、胸が大きい方がMサイズの服を着たときに、首元が空いているデザインだと、バストで生地がものすごくひっぱられてしまうんですね。首回りがより空いて、谷間が出てしまう。日本だと会社で働いている時に、隣の席の子の谷間が見えたら、目のやり場に困っちゃうじゃないですか。
セクシーを良しとしない環境のなかで、自分が意図していないのにそれが出てしまうと、周囲からは『どうにかしてほしい』と言われますし、同性からも『あれ、見せてるよね?』『アピールしてるよね』と、自分の性を強調することで仕事をしているんじゃないかと疑念を持たれてしまう。服装はTPOに合わせていくことは基本ですが、TPOにあわせた服装もできないのが一番の大きな悩みでした」
――ご自身が抱えていた悩みへの答えが、アパレルブランドを立ち上げることだったんですね。
「自分が本当にやりたいことをやってみたいと、何も分からずアパレル業界に飛び込み、2016年に、クラウドファンディングでブランドを立ち上げました。なぜ市販の服を上手く着ることができないのか、洋服にバストの概念がないからだと気づいていない人も多くいらっしゃると思うんです。おもしろいことに、私も気づくのにかなり時間がかかったんですよ(笑)。服が上手く着れないのは、自分が太っているからだと思い込んでいて。学生時代も大人になってからも、周りの子が服をきれいに着こなしているのを見て、なんで自分は…と落ち込んで。無理なダイエットをして、痩せようと頑張っていた時期もありました」
身体的特徴に触れる「意図が見えない」、SNSの発信も熟慮する必要性
「市販の洋服は、サイズがS・M・Lとあるじゃないですか。多くて、SSからLLの5サイズ。SサイズでAカップの方も、Gカップの方もいらっしゃるんですけど、お洋服って全て平面でデザインされていて、JIS規格でトルソーのS・M・Lすべて胸のサイズはBカップ程度と定められているんですよね。
ブラジャー自体は70サイズくらい展開があって皆が選べているのに、洋服 はSS・S・M・L共通でBカップのサイズなんですよ。胸が大きい人にとっては、何着たらいいのって話になってくる。女性の身体に備わっているもので選択肢が少ないってしんどいですし、意図しない誤解を生んでしまうのがつらいなと。日本でも胸が大きい女性が増えているなかで、その現状を変えたいと思いました」
――同ブランドは、現在百貨店でも取り扱われるまでに。注目されている状況からか、商品を売るためのインスタライブで、「胸大きいね」「セクシーだね」とモデルさんを性的に消費しているようなコメントもあったと聞きました。
「ここは、服を選びに来る場所だけど…って思いましたね。一番に考えたのは、うちのユーザーさんが傷ついていないかと心配になりました。胸が大きいことでトラウマになるような経験をしている方もいらっしゃるので、それをフラッシュバックさせてないかなとか…。
服を選びにきて、『おっぱい大きいね』と知らない人に言われて嬉しい人は誰もいないじゃないですか。他のアパレルブランドさんと同様に、服を選んでもらうためのライブ配信です。そのコメントを残された方は、なんのための趣旨なのか理解して入ってきてくださってるのかな?と思うところはありました」
――容姿に焦点を当てたコメントに違和感があります。SNSでは「やめてください」と明確に発信されていましたね。
「私も『胸おっきいね』とよく言われますが、当事者としては『だから、何?』って心の中で思うんです。その先がないじゃないですか。あえて伝える意図が分からない。インスタライブの件はとても戸惑いましたし、どう触れたらいいのか回答にも困りました。胸が大きいことって、世間ではよいこととされていますけど、物事には何でもいいことの反面悪いこともあるじゃないですか。『胸が大きくていいな』と言われて、『意外と大変ですごく困ることもあるんだよ』って返すと、『そんなの贅沢な悩みだよ…』って言われてしまいます」
――確かに、どう返しても逃げ場がないですね。
「渡辺直美さんも身体的特徴に触れられたことについて、ご自身のYouTubeで、“意図が見えない”っておっしゃってたじゃないですか。まさに、それだと思って。そこにどんな意図があるのかを考えて発言をする必要があると感じています」
「いたづらに身体的特徴を指摘するのは NOと言い続けたい」
「ついてまわりますよ、ずーっと。日本のジェンダーギャップ指数ってひどいですよね。それがダメなことだって心の底では皆分かっているけど、変わらないじゃないですか。それと同じです。時代の流れもあるし、声を発せられる人は限られている。思っていても嫌だと言えない人もたくさんいらっしゃると思います。怖い思いをして、自分の胸を隠したいと思う人も。人の傷つき方、表現の仕方はそれぞれだと思うので、その気持ちを否定したくはありません。
ただ、HEART CLOSETのスタンスとしては、いたづらに身体的特徴を指摘するのはNOと言い続けたい。胸が大きくて困っている方のロールモデルとして存在していたいです。どれだけ議論しても分からない人には分からないし、根絶やしにできるかと言われたら、まだ難しい。でも繰り返し繰り返し、NOを言い続けていかないと知ってもらえない。知る機会がないと、正しい理解をしてもらえない。コツコツ発信を続けるしかないんじゃいかなと思っています」
――今後は商品を通してどのようなことを伝えていきたいですか?
「最初は、自分の胸が大きくて洋服が選べなかったですし、周りの言葉で嫌な思いもして、つらかったんですよね。でも事業を大きくしていくなかで、私の思いに共感してくださる人の多さにびっくりしました。服を通して、自分を愛することを知ってもらえた実感がありますし、『ファッションを楽しめるようになった』『自分の身体をもっと好きになった』と言ってもらえることが一番嬉しいんです。胸の大きい人が洋服を楽しむことによって、自己表現が豊かになることを目指しています」
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