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【女性起業家】ワンピースは女性だけの服でない…男女兼用の乙女な洋服を作ったワケ「男性でも華やかな洋服を着られる未来を」

2022-02-16 eltha

ファッションブランド「ブローレンヂ」のデザイナー兼代表の智世さん

ファッションブランド「ブローレンヂ」のデザイナー兼代表の智世さん

 ファッションブランド「ブローレンヂ」のデザイナー兼代表の智世さんが手掛ける男女兼用のワンピースが、SNSで「着心地、シルエットがとても良い」「性別を気にせずに着られる」と話題になっている。近年は、さまざまな商品のジェンダーレス化が進んでいるが、“ワンピース=女性が着る洋服”という風習が根強く残っている。ただサイズを大きくしたのではなく、男女ともに美しく着られるワンピースを作ろうと思ったきっかけや男性からの需要について聞いた。

認知心理学の錯視をデザインに応用、通常のレディース服よりも男性用はコストや時間がかかる

――男女共通で着られる洋服を作ろうと思ったきっかけは?

ブローレンヂ智世さん 私は女性として生まれましたが、10代の頃は男の子になりたいと思っていました。中学生になりセーラー服を着ることがとても苦痛でした。高校卒業後、紳士服店に就職した後、若い女性向けの洋服屋店員、ホステス、事務職を経て、23歳で結婚しました。そして25歳で大学に入学し、性同一性障害や認知心理学の錯視を学び、それをファッションに活かせないかと思ったことがきっかけです。

――事業を立ち上げる上で、大変だったことはありますか?

ブローレンヂ智世さん 工場探しに苦戦しました。アパレル業界では、店頭に並ぶ前から男女でわけられています。縫製工場では、レディースとメンズをわけて製造しています。両方を請け負っている工場でも、メンズ体型に合わせたレディース服の製造は、門前払いされて大変でした。

――男性の体型でも着られるかわいい服やワンピースを作るのは、難しいことなのでしょうか?

ブローレンヂ智世さん メンズのトルソーに合わせて立体裁断でパターン(服の設計)を作っています。そのパタンナーが作った土台を元に形を少しずつ修正していきます。認知心理学の錯視をデザインに応用してるのですが、その錯視効果が活きるように数ミリ単位で調整し、サンプルを作り直すことが大変です。前例がないので、通常のレディース服よりもコストや時間がかかります。

――男性と女性では体型が異なるので製造が難しそうですが、どのような違いがあるのでしょうか?

ブローレンヂ智世さん 生地量も1.5倍ほどかかり、YKKさんに特注で長いファスナーを作ってもらいました。身長が高く胴も長いので、脱ぎ着をスムーズに行うための工夫が必要です。また、肩幅やウエスト位置も男女で全く異なり、男性の細い腰をふっくらみせるように、ウエスト周りに生地をたくさん使うなど、さまざまな工夫を凝らしています。

男性のワンピース着用は機能面でも合理的、華やかな洋服が着られる未来を

――認知心理学の錯視を応用し、男女ともに美しく見えるデザインとのことですが?

ブローレンヂ智世さん 男性の広い肩幅を目立たせないために、身体の中心に視線を集めるようなデザインを施しています。例えば、身頃と袖の連結部分の縫い目を、肩の可動をスムーズにできる範囲で内側に入れています。少しだけパフスリーブにすることで、肩の位置を内側に入れることができ、肩幅を目立たせなくすることができます。そのほか、襟にリボンをつけたり、深めのVネックにしています。

――「ワンピースを着たい」という男性の声は、増えていますか?

ブローレンヂ智世さん ブローレンヂへのお問い合わせも増えています。今まで1人で悩みを抱えていた方も、SDGsの取り組みやジェンダーレスファッションに取り組む企業が増えたことで、勇気を出して連絡してくれているのかもしれません。

――どのような方が、購入しているのでしょうか?

ブローレンヂ智世さん トランスジェンダーの方を始め、普段は男性として生活して休日に女性装を楽しむ方、アスリートや大柄の女性の方もいます。男性が6割、女性が4割くらいです。「大きいサイズのレディース服は、しっくりこなかった。でもブローレンヂの服を着て、初めて鏡に映る自分の姿を可愛いと思えた」といってもらえて、とても嬉しかったです。

――“ワンピース=女性が着る洋服”というマインドを変えることは、とても難しいことだと思いますが。

ブローレンヂ智世さん 雨が降ると傘をさすのは当たり前ですよね。でも1750年代のイギリスでは、傘をさすのは女性だけだったそうです。男性は、貴族の場合は馬車移動、それ以外の人はびしょ濡れで歩いていた。そうしたなか、ジョナス・ハンウェイという貿易商の男性が傘をさして街を歩きました。周りから「女々しいやつ」と罵倒されても傘をさし続けたそうです。そのうち同じような男性が徐々に増え、今では当たり前になりました。同じように、「昔はワンピースを女の人しか着てなかったらしいよ?」なんて時代が来ても不思議ではないですよね。

――女性装としてではなく、男性として日常的にワンピースは着れるものなのでしょうか?

ブローレンヂ智世さん もちろん着れます。男性は股間を冷やした方が良いと言われているので、機能面でも合理的です。女性装だけでなく、ノーメイクでもワンピースを自然に着こなしている男性を街で見かけるようになりました。今はまだブラックやカーキといったダークカラーが多いのですが、色とりどりのワンピースを楽しむ時代が、もうすぐ来ると思います。そんな未来が来るように、私は男性でも華やかな洋服を着れるように作っています。

「男性は男性らしくしないといけない」という風習がある限り、女性の社会進出につながらない

――女性装としてではなく、男性にもワンピースを着てもらうために、どのような試みを行っていますか?

ブローレンヂ智世さん 性別を問わず誰もが自由にファッションを楽しめる世の中を作ることが、私の夢です。ブローレンヂでは、パステルカラーや花柄といった鮮やかなデザインが多いのですが、男性でも抵抗が少ないブラックのワンピースやブラウスも作っています。4年前に制作したブラックのロング丈ワンピースは、とても人気でした。

――男性が女性らしい装いをすることに、抵抗を持つ人もいます。そうした意識を変えるためには、どのようなことができますか?

ブローレンヂ智世さん 見慣れないものに抵抗があるのは、仕方がないことです。私にできることは、地道に男性用のワンピースやブラウスなどを作り続け、ブランドを発信し続けることです。コロナ禍でイベント開催は難しいのですが、展示会やお茶会、ファッションショーなど、いろいろな活動を通して、「性別に縛られず自由にファッションを楽しもう」ということを発信し続けていれば、そのうちそれが大きな波になると信じています。男女らしさのない中間を求めたデザイン、女性らしさのあるデザインを男性が着ることも、またその逆も素敵だと思います。

――SDGsの取り組みである「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」ことについてどのように考えていますか?

ブローレンヂ智世さん 本当にジェンダーの平等を実現するには、まず男性の開放の方が重要ではないかと思っています。なぜなら、日本の権利構造は年配の男性が有利であり、「男性は男性らしくしないといけない」という風習がなくならない限り、この構造を壊すことはできない。“男らしい”ということを強要し合い、そうすることで権利構造の中に居続けることを維持しています。だから政治家や企業の重役として活躍するには、女性は“オス化”しないと入れません。本当の意味でジェンダーの平等を実現するなら、その強烈な“男らしさ”から男性を解放することが第一歩だと思っています。そのためには、まずは着るものから変えていく。男性を社会的なプレッシャーから解き放つことが、女性の社会進出へつながると考えています。

――今後については?

ブローレンヂ智世さん 要望が多かった、目の錯覚を活かしたオーダーワンピースを企画中です。それと、コロナ禍で見送っていた『バンクーバー・ファッションウィーク』に参加する予定です。

男女兼用のワンピースを提供するファッションブランド「ブローレンヂ」

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