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ワンオペ育児は生きてる実感がない…「ママ」しかなかった“私の居場所”が推し活で劇的変化

2024-02-01 eltha

 ママになってから二次創作に目覚め、同人イベント専用の出張託児サービス『にじいろポッケ』を立ち上げた、四辻さつきさん。昨年12月には、自身の体験をコミカライズしたエッセイ『同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました』(KADOKAWA)を出版した。孤独な子育てから自分の居場所をなくしてしまった四辻さん。母親として、ひとりの女性として生きるための原動力を聞いた。

育児ストレスを取り払ってくれたのは、かつて自分が“好きだったこと”

 企業の営業職で働いていた四辻さんは、結婚、出産を機に退職して家庭に入った。夫の仕事の都合で見知らぬ土地に引っ越し、実家も友達とも離れた場所で、イヤイヤ期真っただ中の息子さんの育児に追われていた。

 そのストレスから「自分の居場所がない」と孤独感を抱えるように。そんな時、寝かしつけ後に観たあるアニメ。その作品との出会いによって四辻さんの運命が変わっていく。

 作中では「推しジャンルの沼に一瞬で落ちた」と表現していたが、当時について「自分の中の創作意欲がすごく刺激されて、『何か書きたい。何か形にして出さないといけない』という使命感が湧いてきたんです(笑)」と四辻さん。加えて、「子育てストレスが溜まっていた時に、自分の一番好きだったことがすごく“支え”になったかなと思っています」とも語った。

 そこからは彼女の行動力はすさまじいものだった。それまでのアニメ放映を制覇したり、イラストコミュニケーションサービス「pixiv(ピクシブ)」で二次作品を遡ったり、推しを語るためのSNSアカウントを開設したり…。「生きている実感がない」と言っていた彼女が、わずか1ヵ月にして、自身の二次創作小説を投稿するまでになった。子どもの頃から小説を書くことは好きだった彼女の“好きだったこと(創作意欲)”を“推しアニメ”が呼び起こしてくれたのだ。

「pixivでは、私の作品を見てもらって、そこにコメントや感想をいただきました。多くの方と接点ができて、すごくうれしかったです。自分の好きなことができて、他の人にも喜んでもらえるということがすごくありがたかった」

 “子どもの母親であること”を共通とした友達、いわゆる「ママ友」とは異なる交友関係が同人活動の場にはあった。

「ママ友が相手だと、どうしても子供中心の会話になるし、どう距離を縮めていけばいいのかわからなかったんですよね。子育てとも関係なく、自分が好きなことでおしゃべりできるというのは、すごく楽しくて…。“自分らしく生きている時間”だなと思いました」

ママ以外の“私”になれる場所を見つけて起業「あの時はちょっと狂ってたかも」

 同人活動をきっかけとして、四辻さんは「居場所」を見つけることができた。その後、彼女は同人イベントにも参加したいと思うように。コミックエッセイの中でも、子どもを預けて同人イベントに参加した際のエピソードが描かれており、数年ぶりに「ママ以外の自分」として過ごせたことが『にじいろポッケ』を立ち上げる原点となった。

「もともと新しいことをするのが好きだったんです。でも子育てって新しい刺激が少ないんですよ。毎日同じ日常を繰り返し、子どもに安定を与えることが大切だったりします。だから、何か新しいことに挑戦したいというチャレンジ精神が自分の中で溜まっていて、それが発揮されたのだと思います」

 独自にニーズ調査も行ない、託児に需要があることを確信し、SNSやクラウドファンディング、それまでの人脈なども活かし、2017年にサービスをスタート。順調に運営していったが、2020年からコロナの影響でイベントの中止が相次ぎ、苦境に立たされた。

 そんな中でも“推し活”を原動力に、四辻さんは動き続けた。コロナ禍であまり託児ができない間に、『にじいろポッケ』設立時の体験談をエッセイにして、KADOKAWA「カクヨムWeb小説短編賞2021 実話・エッセイ・体験談部門」に応募する。受賞すると書籍化・コミカライズ・映像化されると知り、1万字を12話に書き分け、見事「短編特別賞」を受賞、今回の書籍化に至った。

「このエッセイを漫画にしてもらって、たくさんの人に読んでもらいたいと思っていたので、すごくうれしかったです。最近また新しくハマっているジャンルもあるので、『二次創作書かなきゃ』って思ってるんです。家事のために早起きするのは嫌だけど、書く時間を捻出するためなら早起きできます! 人って、一つ好きなものがあると本当に強いですよ。パッションがすごい。私、『にじいろポッケ』を始めた時も、ちょっとおかしいくらいエネルギーが出てましたから(笑)。 オタク的に言えば“狂ってた”かもしれません」

無理して“ママらしい趣味”を見つける必要はない

 二次創作や『にじいろポッケ』の活動を始めることで、新しい世界がどんどん広がっていった四辻さん。子育ても、いい意味でちょっと力を抜くことができるようになったという。そうする中で、自身の心境や家族との関わり方にも変化が。

「自分の好きなことがあると、心に余裕ができます。自己実現は子どもじゃなくて自分でやろうと考えるようになりますから。最近夫がすごく戦力になってくれています。子どもも預ってくれるし、ご飯も作れるようになったし、すごく助けてもらっています」

 以前は「自分の居場所がない」と思っていたが、今は家庭や仕事場、子どもたちの学校、さらに趣味の世界など、たくさんの居場所ができた。そんな四辻さんの今後の目標は?

「『にじいろポッケ』に関しては、ここまで続けられたんだから、需要がなくなるまで続けていきたいなと思ってます。あとは、自分が楽しむことかな(笑)。仕事も趣味もバランスをとりながら楽しんでいくのが、とりあえず今年の目標ですね」

 四辻さんは偶然推しアニメに出会って日々を楽しめるようになったが、育児の閉塞感や孤独感を持っているママもいるだろう。そんな人たちに向けて四辻さんがこんなメッセージをくれた。

「別にアニメや二次創作を勧めるわけではないですが、自分が好きなことを大事にして、それを楽しむことは重要だと思います。ママになったからといって、“ママらしい趣味”を見つける必要はないですし…。子育ても“自分らしく”やればいいじゃないでしょうか。自分ができないことは誰かにやってもらって。『みんなはちゃんとできているのに、自分だけできてない』と思う人もいますけど、子育てを完璧にできている人なんていないんですから」

(取材・文/水野幸則)

同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました1話

  • 『同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました』(C)Satsuki Yotsutsuji, Yuka Matsuda 2023
  • 『同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました』(C)Satsuki Yotsutsuji, Yuka Matsuda 2023
  • 『同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました』(C)Satsuki Yotsutsuji, Yuka Matsuda 2023
  • 『同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました』(C)Satsuki Yotsutsuji, Yuka Matsuda 2023
  • 『同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました』(C)Satsuki Yotsutsuji, Yuka Matsuda 2023
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  • 『同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました』(C)Satsuki Yotsutsuji, Yuka Matsuda 2023
  • 『同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました』(C)Satsuki Yotsutsuji, Yuka Matsuda 2023
  • 『同人イベントに行きたすぎて託児所を作りました』(C)Satsuki Yotsutsuji, Yuka Matsuda 2023

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