――そのポジティブシンキングは生まれつきですか?
「子供のころはすごくネガティブで、暗い性格でした。小学校2年の頃まで、いじめられっ子だったですし。『気持ち悪い』とか言われて、背負い投げされたりして。何でそんな目に合うのか、意味がわからなかった」
――でも、乗り越えられたんですよね。
「いじめられない子はどういう子なんだろうと思ってね、クラスの子たちを観察するようになりましたね。それで、学校でどう振舞えばいいのか、人気者になれるかがわかってきた。朝早くから学校に行ってサッカーするとか、給食のおかわりを何度もすればいいんだ・・・とか。3年生になる頃には、とりあえず学校でモテる男になろうと、割り切ることができたんですよね」
――物心ついた頃から、男の子として扱われることに違和感があったんでしょう?
「だから、逆に客観的に自分をプロデュースできたんだと思います。自分は男として生まれてしまったけど、生まれ変わったら次は絶対、女に生まれようって思ったくらいで、どうにもならないと思っていたし、男としてカッコ良く生きようと思っていた。そうしないと、この世を生き抜けないと思っていましたね」
――どうにもならないと思っていたのが一転、“いいオンナ”を目指すことになった。
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『おネエ★MANS』の仲間たち(写真は、10月26日、華道家・假屋崎省吾氏の個展オープニングパーティーにて) |
「やっぱり運がいいんですよ。美容整形するお金を稼ぐことができたし、何より社会が追いついてきた?偏見はまだありますけど、みんな慣れてきたというか、身近になってきましたよね、ニューハーフが(笑)。インターネットの普及も追い風になって、いろいろな情報が手に入るようになったし、自己表現ができるようになった。私たちは、“ニューハーフ2.0”と言っているんですけど(笑)。“1.0”の時代は、ゲイやニューハーフといったマイノリティは、変態扱いが普通で。新宿2丁目で働くか、ひた隠しにするかだった。
“2.0”の今は、ブランド価値がついた状態。『おネエ★MANS』がまさにそれだと思うのね。情報感度が高いとか、センスがいいとか、学歴が高いとか、ある種のマーケットとして捉えられるようになった。先人たちの一人一人の努力がブランド化して、今、この時代にやっと花を咲かせている。でも、まだ特別視されていることには変わりなくて、マスコミが取り上げて、世間を納得させられるような実績がある人、力を持っている人じゃないとダメなところがある。
もうひと段階先に進んだ“3.0”になれば、 “おネエ”だから面白いってこともなくなるんじゃないかな」
――『おネエ★MANS』を見ていると、みなさんタレント性がありますよね。
「それにはちゃんと理由があって、マイノリティと言われる人たちは、“普通”じゃないことを自覚しているし、マイノリティであるが為に普通の事を客観視する事が出来るはずなんです。普通の人以上に、よく見られたいと思っている。だからセンスだって磨かれる。生まれ持った才能ではなくて、マイノリティという状況でたくましく生き抜くために身についた能力なんです」