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女人禁制の山修行!登山・覗きで死の疑似体験!奈良県大峯山

2021-08-18

奈良県の世界遺産、大峯山(山上ヶ岳)。女人禁制が今も守られ、日本で唯一、宗教上の理由から女性が立ち入ることができない聖地です。絶壁から逆さづりにされる「西の覗」などの荒行で有名。厳しい修行ですが、修験道体験ツアーというのがあり、健康で山を登る体力のある男性であればどなたでも参加できます。“一度死んで生まれ変わる”という擬死再生(ぎしさいせい)を体験。関西屈指のパワースポット、大峯山に登りませんか?

修験道発祥の大峯山(山上ヶ岳)

写真:沢木 慎太郎

「みたらい渓谷」で知られる奈良県天川村。修験道発祥の霊峰、「大峯山」を源流とする清流が、関西屈指の絶景スポットへと流れこんでいます。
吉野から大峯を経て、熊野まで続く修行の道を「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」と呼び、『紀伊山地の霊場と参詣道』の一部として、山上ヶ岳の山頂にある修験道の根本道場「大峰山寺(おおみねさんじ)」とともに世界文化遺産に登録されています。

写真:沢木 慎太郎

写真は、“天女の舞”と呼ばれる峰から眺めた大峰山系。山上ヶ岳や稲村ヶ岳、大普賢岳、弥山(みせん)、八経ヶ岳(はっきょうがたけ)、行者還岳(ぎょうじゃがえりだけ)などを含む山々の総称が大峯山。このうち、「西の覗」などの修行場がある、女人禁制の聖地が山上ヶ岳(標高1719メートル)
修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が開山。自然崇拝や神道、仏教などが融合し、深山幽谷に入って修行することで不思議な力を得て、自他を救済しようとする日本独自の山岳宗教が「修験道(修行して験力を顕す道)」です。

写真:沢木 慎太郎

山上ヶ岳は今も女人禁制が守られている修行の山。登拝(とはい)する前に、紅葉名所の「大峯山龍泉寺(おおみねさんりゅうせんじ)」で心身を清めるのが習わし。
初心者であれば修験道体験ツアーに参加すると良いでしょう。山を登れる体力のある男性であればどなたでも参加でき、子供(小学校高学年)〜70代まで幅広い年代の方々が体験しています。
※個人ツアーに関しては奈良県ビジターズビューロー(0742-23-7702)で受け付けているほか、行体験については龍泉寺(0747-64-0001)にお問い合わせください。

女人禁制!女人結界門から登山

写真:沢木 慎太郎

写真は、龍泉寺での水行のようす。身を切るような冷たい水に浸かり、心身を清めます。

写真:沢木 慎太郎

山上ヶ岳への登拝(登山)ルートは、大峯山遥拝所(清浄大橋)から登るコースが一般的。駐車場もあり、公衆トイレも整備。登山口にあるのが、「女人結界門(にょにんけっかいもん)」。ここから先は、女人禁制。女性は立ち入ることができません。
役小角は山で厳しい修行をしていましたが、息子を心配した母親がこれ以上、自分の後を追って危険な目に遭わないように設けられた門と伝えられています。子が想う母への感謝の気持ちを今に伝え、「女性がいない世界で悟りを開き、日ごろ口に出せない女性への感謝の気持ちを強くする」という意味合いがあり、女性差別から生まれた風習ではありません。
※女人結界門の手前までは女性の方も入ることができます。
なぜ女人禁制があるのか、その理由についても記事にしていますので、関連MEMOからのぞいてみて下さい。

写真:沢木 慎太郎

修行体験ツアーでは、女人結界門をくぐり、杉林を黙々と登って行きます。修行者を先導する熟達した山伏、先達(せんだつ)の後に一列となって歩み、法螺(ほら)貝の音を聞きながら、前の人と同じ踏み跡を進みます。参詣者とすれ違う時は、「こんにちは」ではなく、「よう、お参り」と声をかけあいます。
※修験道体験なので、参加者の体力や登山ペースに合わせて指導していただけます。山や自然が好きな方ならぜひおすすめ。

油こぼし、鐘掛岩、西の覗で修行

写真:沢木 慎太郎

陀羅尼助茶屋から先の分岐は、「表行場」と「登山道」があり、「表行場」では先達の先導がなければ登ることができません。ここから本格的な修行。
「油こぼし」と呼ばれる修行場を過ぎ、写真の「鐘掛岩(かねかけいわ)」へ。役行者によってつり鐘が掛けられたという岩壁で、こちらも難所のひとつ。途中までは素手で登らなくはなりません。足を掛ける位置や順番を間違えると登れなくなります。先達の教えに従って、垂直の岩壁を素手で登ります。

写真:沢木 慎太郎

最後は、岩から垂れた鎖をつかみ、教えに従って足を掛け、自分の腕だけを命綱にして登ります。自分自身の苦しみは、自分で背負うしかない。自分の力で這いあがるしかない。誰も自分を救ってくれない。ひとりきり。しかし、必ず手助けしてくれる先達がいる。教えに従って、身体の姿勢を変えなければ登れません。しかし、もっと、大切なのは心の姿勢。

写真:沢木 慎太郎

続いての荒行は、「西の覗(にしののぞき)」。不動明王がまつられた崖下に向かって両手を固く組み、断崖絶壁から身を乗り出してのぞき込む、捨て身の修行です。
背後から、「親孝行するか?」「奥さん(彼女)を大切にするか?」と先達の激しい剣幕に押され、「はい」と大声で答えるまで吊るされ続けます。

大峯山の山頂!大峰山寺に参拝

写真:沢木 慎太郎

修験道の修行は、「疑似再生」と言われ、死に迫る修行をすることで、生まれ変わるという意味があります。しかし、最初は強烈に怖かった覗き修行も、2度3度と行えば恐怖心が薄れます。苦しみも同じこと。つらく悲しくても、一度困難を克服すれば、以前よりも楽に乗り越えられる。自らが行動を起こし、苦しい思いをして実践することが修験道(実修実験の道)。大峯山の修行は、現代社会で生きていくヒントを与えてくれます。

写真:沢木 慎太郎

すべての修行を終えると、山頂の「大峰山寺」に参拝し、無我の境地で修験道のご本尊「蔵王権現(ざおうごんげん)」に感謝の気持ちを伝えます。蔵王権現は絶対秘仏でお姿を見ることはできません。しかし、役行者を水面に映した姿を模写した行者像を拝観することができ、強烈で最強の霊的なパワーが働いているのが感じられます。

写真:沢木 慎太郎

修験道の服装は、白い衣装と、はちまきをまとうのが原則。はちまきに御朱印を押していただけるので、お守り代わりにもなります。一生に一度しか使えない、“世界最強のお守り”とされる「九重守(ここのえまもり)」も、ご利益がありそうです。

自他に問いかけ、道を歩む修験道

写真:沢木 慎太郎

写真は、山上ヶ岳の山頂にあるお花畑。天空へと伸びる一本の道は、人生を旅する修行の道のようにも見えます。

写真:沢木 慎太郎

こちらは、お花畑の先にある日本岩。この断崖に立つと、「女人大峯」とされる稲村ヶ岳など、雄大な大峯山脈を眺めることができます。
修行を終えて思うのは、風が通り過ぎてゆくような自然な感情。危険なことをするのが修行ではなく、先人の教えに従い、人に尋ね、人に問いかけて、一歩ずつ歩いていくことが修行。
おごりの気持ちはなく、苦行を共にした先達や参加者たちの間に不思議な連帯感が生まれ、ここで出会った人も、この風景も、この人生も、ただ一度きり。そして、生き物はすべて一人きりということ。

写真:沢木 慎太郎

写真は、オオヤマレンゲ。「天女花(中国名)」とも呼ばれる清浄な花は、国の天然記念物に指定。関西の最高峰「八経ヶ岳」で梅雨時の7月上旬ごろに咲くことで知られていますが、「山上ヶ岳」でもオオヤマレンゲを見ることができます。ほのかな甘い香りを漂わせ、下向きにつけた白い花びらは、少しはにかんだ笑顔のよう。
下界から遠く離れた幽界で、めったに見られない可憐な白い天女を見つけた時、地上に残した女性のことを想う男性は多いのではないでしょうか?
大峯山登山口の近くには、行者の宿場町として古くから栄えた洞川(どろがわ)温泉があるので、昭和レトロな木造旅館に宿泊して温泉を楽しむのもおすすめ。鍾乳洞や「みたらい渓谷」のハイキングコースなど、天川村の観光名所もまとめていますので、ご興味のある方は関連MEMOに張り付けたリンクからのぞいてみて下さい。

大峯山(山上ヶ岳)の基本情報

住所:奈良県吉野郡天川村洞川
電話番号:0747-63-0999(天川村総合案内所)
アクセス:近鉄下市口駅からバスで約80分(洞川温泉行き、終点「洞川温泉」下車)、洞川温泉バス停から清浄大橋(大峯大橋)登山口まで徒歩約1時間(登山口に駐車場あり)、登山口から山頂まで約2時間30分〜約3時間
宿泊施設:山頂には宿坊などの宿泊施設あり(※戸開け期間中・要予約、龍泉寺0747-64-0001まで)
修業期間(戸開け期間):例年5月3日〜9月23日
【登山ルート(標準時間)】
清浄大橋→(約90分)→洞辻茶屋→(約60分)→山上ヶ岳→(約40分)→洞辻茶屋(約70分)→清浄大橋
2021年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

■関連MEMO
修験道の聖地で霊的体験!奈良県天川村のパワースポット5選
https://www.travel.co.jp/guide/article/45111/
ごろごろ水と鬼の子孫の里!奈良県天川村「洞川温泉」に宿泊しよう
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奈良県天川村「みたらい渓谷」でハイキング!新緑や紅葉の時期におすすめ
https://www.travel.co.jp/guide/article/20806/
女も修行するぞ!日本最古の霊場、大阪・犬鳴山で修験道体験
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絶景の天空ハイキング!奈良県・大台ヶ原おすすめ登山ルート
https://www.travel.co.jp/guide/article/46576/

【トラベルjp・ナビゲーター】
沢木 慎太郎

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提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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