2024-07-20
岡山県が桃太郎による鬼退治の伝承の地であることをご存知の方も多いのではないでしょうか。岡山県では、桃太郎を『日本書紀』『古事記』に登場する吉備津彦、退治される鬼を「温羅」と呼ばれる存在にあてはめ、桃太郎伝説を史実として解釈していますが、総社市には何と温羅の本拠地であったというお城まで存在するのです。それが、今回、ご紹介する「鬼ノ城」です。今回は「鬼ノ城」とその魅力をご紹介しましょう。
「鬼ノ城(きのじょう)」は、岡山県総社市に位置する山城跡。桃太郎伝説の最有力地・岡山では、桃太郎=吉備津彦命に成敗される鬼=「温羅(うら)」が本拠としていたお城と目されています。
しかし、実際には、西暦663年、白村江の戦いにて唐・新羅の連合軍に大敗した大和王権が、倭国の防衛体制を強化する目的のもと、筑紫国の大野城や基肄城、大和国の高安城、讃岐国の屋嶋城などとともに築いた古代の山城であることが判明しています。
現在は、発掘調査の成果にもとづき、部分的に遺構が復元されており、視覚的にも古代山城としての鬼ノ城の規模を知ることができるようになっています。
鬼ノ城が築かれているのは、標高397メートルの鬼城山山頂部付近。写真はその山頂付近を撮影した一枚ですが、城壁や土塁の遺構は山頂部をぐるりと取りかこむようにして残されています。その全長は2.8キロメートル!
城壁の内側からは礎石建物や掘立柱建物、烽火場、鍛冶場などの遺構も確認されており、鬼ノ城がいかに規模の大きな山城であったか、その城壁の全長や城内の遺構からも推しはかれます。
とりわけ、その規模に圧倒されるのは、1996年(平成8)の調査で新たに発見された西門の遺構。正面が12.3メートル、奥行8.3メートルにおよぶ巨大な城門で、現在はその一部が復元されています。
城門はほかにも東門・南門・北門の計4ケ所が確認されていますが、4ケ所の城門のうち、西門は鬼ノ城内部にいたる主たる進入路として設けられていたと考えられています。
中央には通路に当たる部分が設置されており、ご覧のように、その床面には巨大な敷石が見られます。
城門を支える柱は、12本の掘立柱から構成されていました。
写真は、西門の北側に位置する角楼跡から撮影した一枚。眺望もよく、そのスケールの大きさに圧倒されること、間違いありません。
ちなみに、城壁側に向かって突出している角楼は、西門付近の防衛機能を強化する目的で設置されていました。
西門の左右には、見上げるほど巨大な城壁も残されています。
鬼ノ城をめぐる城壁の大半は、土を突き固め、何層にも積み重ねる「版築(はんちく)」と呼ばれる技法で構築されていますが、ところどころ、石垣も使われていたことがわかります。
注目したいのは、城壁の各所に見られる敷石の遺構。その名のとおり、板状の石を敷き詰めたもので、通路としての役割とともに、雨水の浸水によって城壁が破壊されることを防ぐ目的で構築されたと考えられています。
敷石の遺構は、古代山城のなかでも鬼ノ城のみに見られるもの。必見です。
城壁をめぐると、ご覧のような水門(通水溝)の遺構が6ケ所で見られます。
鬼ノ城の城内には4つの谷があるため、谷を流れてくだる谷水の処理が課題となりました。水門はその谷水を城外へ排出するために設けられた施設です。
こういった細やかな工夫までなされているとは、驚きですね。
吉備平野を見下ろす位置にあるため、鬼ノ城はビュースポットとしても魅力にあふれています。
写真は「学習広場」と呼ばれる展望台。鬼ノ城の西門付近を眺めるのに格好のスポットですが、西門と同時に岡山平野もぜひ眺めましょう。
遠くに見える街並みは、岡山市の中心部。そのはるか向こう、山のように見えているのは、瀬戸内海に浮かぶ小豆島です。
こちらは総社市中心部から倉敷方面を撮影した一枚。遠くに見える河川は、吉井川と旭川とともに岡山三大河川の一つとなっている一級河川の「高梁川」です。
お天気がよければ、鬼ノ城と同時期に築城されたと推定される四国側の屋嶋城跡(屋島)まで眺められます。白村江の戦いで敗北した大和王権は唐・新羅連合軍の倭国侵攻を恐れて西日本各地に山城を次々に築造しましたが、瀬戸内海をはさんで鬼ノ城と屋嶋城とが設置されているということは、瀬戸内海を東上してくる唐・新羅連合軍を鬼ノ城と屋嶋城とで挟撃するという意図があったのかも知れませんね。
鬼ノ城がいかに規模の大きな古代山城であったか、おわかりいただけたでしょうか。標高300メートル以上の山上に位置しているとはいえ、近くには駐車場も設置されているため、車での来場も可能。古代山城の代表格である鬼ノ城を訪れ、古代のロマンにひたってください。
住所:岡山県総社市奥坂
アクセス:岡山自動車道「岡山総社IC」から車で約20分。駐車場から西門までは徒歩約15分
2024年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
■関連MEMO
鬼ノ城―総社観光ナビ(外部リンク)
https://www.city.soja.okayama.jp/kanko_project/kanko/kannkou_bunnka/kankouti/kinojyo/kinojo.html
【トラベルjp・ナビゲーター】
乾口 達司
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