2024-10-03
京都市街の西端に位置する嵯峨・嵐山エリアは、京都屈指の観光エリアとして知られています。今回紹介する「天龍寺」の曹源池庭園(そうげんちていえん)は、“古都京都の文化財”として世界文化遺産に登録されています。特に紅葉の時期は庭園内のモミジが色づき、ここでしか見られない美しい光景が広がっているので、ぜひ実際に足を運んでみてください。
天龍寺は、室町幕府の初代将軍である足利尊氏が、敵対した後醍醐天皇の菩提を弔うために、暦応2年(1339年)に創建した寺院です。禅庭園の完成者とされる夢窓疎石(むそうそせき)を開山に迎え、約6年の歳月をかけて完成させました。その間、造営に必要な費用を調達するために、天龍寺船と呼ばれる貿易船を使い、元冦以来途絶えていた中国との貿易を再開させたことでも、歴史的にも大きな意義を持つ寺院です。
桜が美しい春と並んで、嵐山・嵯峨野の観光シーズンとなっているのが、秋の紅葉の時期です。天龍寺でも例年11月中旬から下旬にかけて見頃を迎え、12月には散り紅葉を楽しむことができます。10万平方メートルの広大な境内には、背後の山々を借景とした「曹源池庭園」をはじめ、自然の傾斜に沿って整備された散策路である「百花苑(ひゃっかえん)」などが人気の紅葉スポットとなっています。
曹源池庭園は、天龍寺の初代住職である夢窓疎石が最晩年に作庭した庭園で、面積約1,200坪の巨大な敷地面積を有しています。庭園の名称は、造営中に池の中から「曹源一滴(そうげんいってき)」と刻まれた石碑が発見されたことが由来になっています。この「曹源一滴」という禅語は、水源の一滴が大河となるように、小さな努力の積み重ねが大願の成就につながることや禅の根本思想が広く普及していくことを示しています。
曹源池庭園が造営される以前、この土地には鎌倉時代頃まで御嵯峨天皇の離宮である「亀山殿」があったとされています。夢窓疎石は亀山殿の遺構を利用し、自然の景観を取り入れた力強い石組を特徴とする禅宗の庭を完成させました。池の手前には、海辺を思わせる美しい曲線の州浜(すはま)が作られており、現在の曹源池庭園が作庭される以前の平安時代の王朝文化の名残も感じさせます。
曹源池庭園の特徴として、力強い石組の「龍門瀑(りゅうもんばく)」があげられます。成功や悟りの境地に至る関門という意味の登龍門の故事に因み、鯉が滝を登る様子を石で表現しています。曹源池庭園では三段の滝のうち上段と中段の間に鯉を示す「鯉魚石(りぎょせき)」を配置し、まさに鯉が龍へと変化する様子を捉えています。
龍門瀑の石組の手前には、三枚の自然石を並べた石橋があり、自然石で作られた石橋としては日本最古のものとなっています。
曹源池庭園は前景を池、中景を庭園の木々、遠景を借景としている山々を配置し、奥行をもたせた構造になっています。そのため、紅葉にもグラデーションが生まれ、前方の庭園の木々と遠景の山々の色づきの違いを楽しむことができます。
また、曹源池庭園から多宝塔や百花苑に続く散策コースも整備されているので、ゆっくりと紅葉を堪能できます。
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
料金(庭園 曹源池・百花苑):高校生以上500円、小中学生300円、未就学児無料
拝観時間:8時30分〜17時(受付終了16時50分)
アクセス:
京福電車「嵐山」駅下車、徒歩1分
阪急電車「嵐山」駅下車、徒歩15分
JR嵯峨野線「嵯峨嵐山駅前」下車、徒歩13分
2024年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
■関連MEMO
天龍寺公式サイト(外部リンク)
https://www.tenryuji.com/
京都観光オフィシャルサイト「京都観光Navi」天龍寺ページ(外部リンク)
https://ja.kyoto.travel/tourism/single01.php?category_id=7&tourism_id=428
【トラベルjp・ナビゲーター】
島塚 渓
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