2025-05-21
奈良県桜井市の真言宗豊山派の総本山「長谷寺」は、古くから観音信仰の聖地として知られています。平安時代には、貴族による観音信仰が高まり、藤原道長をはじめとして、宮中に仕えた紫式部、清少納言などの女流文学者も盛んに長谷寺を参詣しました。『源氏物語』や『枕草子』をはじめ日本を代表する古典文学にも描かれ、多くの文化人を魅了してきた歴史ある名刹を訪れてみませんか?
長谷寺門前町は、桜井市初瀬にある古い町並みで、長谷寺の参詣道として古くから賑わってきました。初瀬街道に続く門前町には、古民家が立ち並び、土産物店や飲食店が軒を連ねています。
『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』に取り上げられているおとぎ話「わらしべ長者」の舞台は、大和国長谷寺とされています。
毎月18日、観音様のご縁日には、わらしべ長者のお話を描いた17枚の絵本風の暖簾が民家の軒先に飾られます。
「わらしべ長者」は、長谷寺の御本尊の観音様を熱心に信仰する身寄りのない若者が、観音様のお告げを受けて、物々交換により運が開け、ついに長者になっていく観音信仰の物語です。長谷寺の参道を登るにつれて暖簾に描かれたわらしべ長者の物語は進展します。
毎月18日に長谷寺を訪れたなら、暖簾でめぐるわらしべ長者の物語をお楽しみください。
<長谷寺門前町の基本情報>
住所:奈良県桜井市初瀬
アクセス:近鉄大阪線「長谷寺駅」下車、徒歩約15分
また長谷寺では、毎月18日、午前と午後の二座、護摩供が行われます。護摩とは、御本尊様の前に壇を設け、護摩木を燃やし、仏様の智慧の炎で煩悩を焼き尽くし、様々な願い事を成就するよう祈念を凝らす密教の修法です。
なお、護摩木受付は、本堂相の間(御本尊様前通路)にて随時受付しています。家内安全や無病息災などを祈念してみてはいかがでしょうか。
<護摩供の基本情報>
法要場所:本堂内舞台
法要時間:4月1日〜9月30日 9:00〜、13:00 10月1日〜3月31日 9:30〜、13:00
料金:一体300円(一体につき一願)※別途入山料が必要
長谷寺は、紫式部の『源氏物語』の登場人物、玉鬘(たまかずら)と夕顔の侍女だった右近の出会いの舞台として登場します。
光源氏の娘で、夕顔の姫君の玉鬘が、筑紫から群がる求婚者を避けるために京へ向かいます。その際、乳母に育てられ母・夕顔の死を知らぬ玉鬘に、従者が母との再会を祈願するために初瀬詣(長谷寺参詣)をしてはどうかとすすめます。
一方、右近は光源氏に仕えながら、玉鬘との再会を念じ、初瀬詣を続けていました。やがて観音様のご加護により、二人は桜井の市場、椿市で劇的な再会を果たします。
二人はその後、長谷寺の参籠の途中に、境内で歌を詠み交わします。右近は「二もとの 杉の立ちどを 尋ねずは ふる川のべに 君を見ましや」と詠み玉鬘との再会の喜びを表しています。
この歌にある「二もとの杉」とは、現在も境内の東参道にある根元が一つで幹が二本の大きな杉の木のことです。
この杉は、大切な人との縁を守り、願いをかなえる霊木として祀られています。
「二もとの杉」からさらに奥へ進むと、平安時代後期から鎌倉時代初期の公家・歌人の藤原俊成と、その息子であり『新古今和歌集』や『小倉百人一首』の撰者である藤原定家を供養する石碑「藤原俊成碑・定家塚」があります。あわせてお参りしてはいかがでしょうか。
長谷寺には多くの古典文学碑もあります。中登廊から上登廊への曲がり角、蔵王堂の奥にあるのが、紀貫之の「故里の梅」です。脇には「人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける」の歌碑が建ちます。
小倉百人一首にも歌われるこの句の中の「花ぞ」の花は、長谷寺の梅の花です。貫之は幼少期を長谷寺で過ごし、叔父の雲井坊浄真を訪ねて再訪した際に詠んだ歌です。
399段の登楼を登りきった本堂横の広場にあるのが鐘楼(重文)です。1650年(慶安3年)に再建されたもので、梵鐘は「尾上の鐘」と呼ばれています。
鐘の名前の由来は、『新古今和歌集』の藤原定家の歌「年も経ぬ 祈る契りは 初瀬山 尾上の鐘の よその夕暮れ」にちなむと言われています。
また鐘楼では、毎日2回、午前6時と正午に鐘がつかれます。さらに正午の鐘の時には同時に、修行中の僧侶によってホラ貝が吹かれます。
梵鐘とホラ貝の和合は「時の貝」と呼ばれ、清少納言が『枕草子』で、「法師の坊に 男をのこども わらはべなどゆきて つれづれなるに ただかたはらに貝をいとたかく俄に吹き出したるこそ 驚かるれ」と表現しています。
清少納言を驚かせたホラ貝の音は、今も昔と変わらず、一山の僧侶・参詣者・町の人々に時を告げています。
長谷寺参拝の往路・復路のいずれかで立ち寄りたいのが、長谷寺の参道沿いに位置する「法起院(ほうきいん)」です。西国三十三所観音霊場の番外札所で、西国三十三所観音巡礼の実質的な創始者、徳道上人をお祀りしています。
徳道上人は奈良時代の僧で、20歳の時に大和国長谷寺の道明上人の弟子となり、やがて道明上人とともに長谷寺の開基となった人物です。
境内には、徳道上人の御廟、十三重石塔があります。
718年(養老2年)、突然の病のために仮死状態となった徳道上人は、夢の中で閻魔大王に会います。そして大王から悩める人々を救うために三十三ヶ所の観音菩薩の霊場を広めるよう命じられ、三十三ヶ所の宝印を授かり現世に戻されました。
現世に戻った上人は三十三ヶ所の観音霊場を設けましたが、人々は荒唐無稽ともいえる上人の話を信用せず、やむなく上人は時が満ちるのを待つため、宝印を摂津国中山寺の石の櫃に納めました。
その後、花山天皇が仏門に入って法皇となると、徳道上人が納めた宝印の話を聞き、988年(永延2年)、これを探し出して石の櫃から取り出し、約270年ぶりに西国三十三所観音霊場を復興しました。
法起院の特製切絵朱印には、世に観音信仰を広めるため、閻魔大王から徳道上人が三十三の宝印を託される様子がデザインされています。拝観の記念に授かってみてはいかがでしょうか。
<法起院の基本情報>
住所:奈良県桜井市初瀬776
電話番号:0744-47-8032
拝観時間:8:30〜17:00
拝観料:無料
アクセス:近鉄大阪線「長谷寺駅」下車、徒歩約15分
住所:奈良県桜井市初瀬731-1
電話番号:0744-47-7001
入山料:中学生以上500円、小学生250円
入山時間:
8:30〜17:00(4月〜9月)
9:00〜17:00(10月〜11月、3月)
9:00〜16:30(12月〜2月)
本尊大観音特別拝観料金:1000円(入山料別途)
アクセス:近鉄大阪線「長谷寺駅」下車、徒歩約20分
車利用の場合は、大阪方面から天理ICを降り約40分 名古屋から針ICを降り約30分
駐車場:あり(有料)
2025年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
■関連MEMO
大和国 長谷寺(外部リンク)
https://www.hasedera.or.jp/
法起院(外部リンク)
http://www.houkiin.or.jp/
桜に牡丹に紅葉!奈良・花の御寺「長谷寺」で四季の風情を満喫
https://www.travel.co.jp/guide/article/34847/
紫陽花が彩る石段も!奈良・長谷寺「大和観音あぢさゐ回廊」
https://www.travel.co.jp/guide/article/47653/
カラフルな「菊回廊」と紅葉!奈良「長谷寺」で秋の絶景を満喫
https://www.travel.co.jp/guide/article/48046/
【トラベルjp・ナビゲーター】
モノホシ ダン
関連記事
オリコンタイアップ特集
オリコンタイアップ特集
(PR)ジハンピ
(PR)洋服の青山
オリコン顧客満足度ランキング
CS動画配信サービス20選
プレゼント特集