空の旅の“おもてなし” 機内食作りの知られざる裏側とは?
2013-12-30 11:00 eltha
今回取材したのはJAL(日本航空)グループへ国際線機内食を提供しているJRC(ジャル ロイヤル ケータリング)。食材、備品の管理、調理、品質管理、運搬など全5部門で成田発10路線12便の機内食を担当。1日平均4063食、1年で148万3000食を提供している。食器洗いはベルトコンベアや機械を使っているものの、これだけの数を調理から盛り付けまですべて手作業で行っている。
どこの食品工場でもそうだが、ここでも最も大切にしているのは衛生管理だという。調理中にちりやほこりが舞い散らないようにするのはもちろんのこと、食材の管理体制も徹底。「8度を超えたチルド品は受け取らない」といった決まりがあるほか、肉ひとつにしても日付や部位、産地、使用料理名、搭乗便などを明確に管理。乗客から食材の産地などの質問があっても、即対応可能なシステムを整えている。
“作ってすぐに提供”というわけにはいかないこともあり、調理時にも「肉調理の加熱は75度以上」や「調理後4時間以内に10度以下に急冷」など、衛生面と品質を考慮したルールを徹底。また、調理して24時間以内に提供することが決められており、「フライトの急な遅延などがあった場合は作り直す」という。
機内食に力を入れているJALは人気店とのコラボでも話題になっている。最近ではファースト・ビジネスクラス「BEDD」で、創作料理『山田チカラ』(東京・麻布十番)の山田チカラシェフなど計6人の一流シェフが監修。プレミアムエコノミーやエコノミークラスの「JAL KITCHEN GALLERY」も、ケンタッキーフライドチキンのメニューを提供し話題となった「AIRシリーズ」や、日本各地の郷土の味を創作アレンジした「J級創作グルメ」など盛りだくさん。過去にも吉野家、俺のフレンチ・イタリアンなどともコラボレーションを行っている。
どのシェフ達も大切にするのが、提供する際の“ライブ感”だという。機内では刃物や火気が使用できないため、狭い機内でいかに表現できるか、話し合いと試食を繰り返しながらメニューを決定。その結果、ファースト・ビジネスクラスではギャレー内の電子レンジを使って白米を炊いたり、刃のないおろし金を使用し、すだちの皮をすりおろしたり、プリンのカラメルをスポイトに入れ自らかけられるようにするなど、さまざまな趣向を凝らしたメニューも展開しているという。
制限がある中で少しでもおいしく食べられるよう創意工夫を行っている機内食。空の旅ならではのメニューが今後、どのように進化していくか注目だ。