ポテトサラダが日本の食文化に浸透していく過程を調査し、日本調理科学会2024年度大会で発表
明治・大正・昭和初期のポテトサラダの再現レシピ3品
ケンコーマヨネーズ株式会社(東京本社:東京都杉並区 代表取締役社長:島本 国一、以下「当社」)
は、9月6日(金)・7日(土)に鎌倉女子大学 大船キャンパスで開催された一般社団法人 日本調理科学会が主催する日本調理科学会2024年度大会にて、「明治・大正・昭和初期のポテトサラダの特徴」を発表しました。
先行研究にて、工場製マヨネーズが普及する以前の明治・大正・昭和初期には、多様なサラダ用調味料が存在したことを報告。今回は、サラダの代表例であるポテトサラダも同時代において多様なレシピが存在したと考え、当時の料理書に記載されていたポテトサラダのレシピ約180件を調査、分析を実施。レシピをいくつか抜粋して再現試作を行い、ポテトサラダはどのように日本の食文化に浸透したか、その過程を報告しました。
じゃがいもの生産量は大正・昭和初期に100万トン以上に達しており、当時の人口比で考えると手に入りやすい食材だったと推測されます。そのため、当時の料理書にもじゃがいもを中心としたサラダのレシピが多く掲載されており、明治大正期にはドイツやフランス由来と思われるオイルやバターでじゃがいもを和えるレシピが見られました。しかし、日本人の嗜好に合わなかったためか、このような食べ方は定着しなかったようです。
その後、欧米のサラダの中で日本人の嗜好にあった、ボイルドドレッシング(※クリーム状のサラダ用調味料)やマヨネーズを使用したクリームタイプのサラダが浸透。さらに、欧米のサラダの影響なども受け、これまでじゃがいもを中心に作られていたサラダは、他のいくつかの茹で野菜と組み合わせたり、西洋野菜の代わりとしてセリ・にら・うど等を取り入れた野菜サラダに発展しました。
次第に、野菜サラダが一般化し日本で広まっていく中で、じゃがいも料理として浸透していた「コロッケ」等の他料理の影響を受けて、現在の潰したじゃがいもが用いられるポテトサラダへと変化。
現在のような、マヨネーズで和えて具材が豊富なポテトサラダへ進化・普及していったのは、工場製マヨネーズの生産量が増える、1955年頃以降だということが分かりました。(図:ポテトサラダの変遷)
当社は豊かな未来をつくるため、今後も食に関わる研究を通じて、食の進化・発展に貢献してまいります。
(図)ポテトサラダの変遷
特徴のある明治・大正期のポテトサラダ 再現レシピ
「膾(なます)」 ※日本最古のポテトサラダレシピ
明治5年(1872年)発刊、『西洋料理指南 下』 敬学堂主人 著
再現レシピ「膾(なます)」(イメージ写真)
【材料】
・じゃがいも(輪切り) 中5個
・ゆで卵 (輪切り) 1/2個
・えび (厚みを半分に切る) 6尾
・赤かぶ (※)(薄切り) 適量
・レタス (皿に敷く) 適量
★ソース(食べる直前にかける)
・卵黄 2個分
・サラダ油 大さじ1
・酢 大さじ1
・からし 小さじ1
(※)食材は代用品で試作。
<味の所感>
ソースは、現在のマヨネーズと比べ油の配合量が少なく、サラッとしている。塩など含まないため、卵黄のコクが強く、素材の味をダイレクトに感じる。
<考察>
・明治維新直後の当時は、外国語がわかる知識人が欧米のレシピを翻訳していたので、西洋のレシピを「なます」や「黄身酢和え」のような日本料理に当てはめ、レシピが書かれたと推測される。
・ソースに必要な「塩」の記載が抜けているのは、翻訳した知識人が、料理を普段つくらないためと推測される。
「馬鈴薯サラダ」
明治38年(1905年)発刊、『家庭西洋料理法』 藤村棟太郎 著
再現レシピ「馬鈴薯サラダ」
【材料】
・じゃがいも 中2個
・せり 少々
・三つ葉 少々
・バター 6g
・こしょう 少々
・酢 小さじ1
・塩 少々
・オイル お好み
【作り方】
1.じゃがいもは皮をむき、よく茹で、縦2つに切り、3mm厚の半月切りにする。
2.せり、三つ葉をみじん切りにし、じゃがいもにまんべんなくまぶす。
3.バター、こしょう、酢、塩を加えてよく混ぜ、皿に盛り付ける。
<考察>
この頃には、次第に「サラダ」の名称も定着し、食材を日本のものに置き換えるなど、日本向けにアレンジされて取り入れられたと推測される。
「ルシアンサラド」
大正15年(1926年)発刊、『西洋料理法:家庭趣味』 住田たま子 著
再現レシピ「ルシアンサラド」(イメージ写真)
【材料】
・鶏肉 40g
・松茸(※) 1/2本
・青豆(※) 少々
・じゃがいも 1/2個
・にんじん 1/4本
・卵 1個
・ちしゃの葉(※) 適宜
・マヨネーズソース(※) 少々
(※)食材は代用品で試作。
【作り方】
1.鶏肉は塩・こしょうを振り、茹でて角切りにする。
2.松茸は薄い小口切りにして茹でる。
3.じゃがいもは角切りにして、塩茹でする。
4.にんじんは花形に切り、3mmの小口切りにして茹でる。
5.青豆はさっと茹でる。
6.卵は茹でて、白身と黄身を別々に裏ごしする。
7.1.〜6.とマヨネーズソースを和える。
8.器にちしゃの葉を敷き、7.を盛りつけ、その上に6.を美しく振りかける。
一般社団法人 日本調理科学会 2024年度大会 実施概要
主催者 :一般社団法人 日本調理科学会
会 期 :2024年9月6日(金)・7日(土)
開催場所:鎌倉女子大学 大船キャンパス
(所在地:神奈川県 鎌倉市)
テーマ :「調理科学のこれからー家庭・地域・社会への貢献ー」
鎌倉女子大学 大船キャンパス
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