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インスタ映えの世界観にある“虚構”にツッコミ、YouTuberヴィエンナ「コンプレックスも含め、それが自分」

2023-04-10 eltha

インスタ映えの理想 VS 現実。

インスタ映えの理想 VS 現実。

 SNSで強烈な変顔と映えた美しい姿を比較し、「理想と現実」を表現しているYouTuberのヴィエンナ(28歳)。先日同業のYouTuberとの結婚を発表し、アメリカに活動拠点を移すこと、お互いがライフワークとしている“旅”を続けていくことを報告した。現在、ヴィエンナはアメリカで暮らし、パートナーは南米を旅している。「夫婦だからこそ、自由にやりたいことをやる」“夫婦のかたち”にも注目が集まる。彼女の発信のルーツである「理想と現実」はどのように生み出されたのか、様々な国を旅して培われた価値観を聞いた。

加工で盛れた写真とリアルを追求した写真、印象のギャップが「理想と現実」に

 ヴィエンナはタイ・パタヤ出身で、父は香港人、母はタイ人。タイ語、日本語、英語を操るトリリンガルで、SNSフォロワーは2023年3月現在、合計130万人を超えている。そんな彼女が「理想と現実」というテーマに行き着いたきっかけは、アンチの声からだった。

「昔、SNSでは自撮り写真ばかり載せていたのですが、たまにお仕事でテレビに出たり、動画に出たりすると『写真と顔が全然違う』というコメントをいただいたんです。私は自分の顔にコンプレックスがあり、加工アプリを使っていて当時は今ほど当たり前に誰もが使うことが当然という認知ではなかったので、あまりにも顔が違うと言われ続けて(笑)、逆にそれを逆手に取って、めちゃくちゃ不細工に写っている画像と、盛れている画像をどっちも載せたんです。実際本当にそれが理想でもあり、リアルでもあるし、たくさん拡散されて、共感の反応が多数きました。それ以来『動画の顔が不細工』という声がなくなり始めました」

 この彼女のノリに便乗した流れで、ヴィエンナのSNSには微妙な半目や口が開いてしまっている“笑える不細工な写真”が送られてくるようにもなった。彼女はそれを「面白がってくれてうれしい」と表現し、この発信スタイルに多くの人が共感している。

 「最初は『なんで私だけ言われるの』という思いもあって『理想と現実』の投稿をやり続けていたのですが、逆に『みんなそうでしょ?』『共感できるでしょ』とも思っていて。それに対して『分かる分かる』と言ってくださる方がとても多かったんです。それが今も『理想と現実』をテーマに投稿を続ける理由になっています」

 「理想と現実」…昨今はアプリの加工を含めての“美しさ”を肯定的に捉える人も増えてきている。ヴィエンナは「その世界観での“嘘くささ”には、たくさんのツッコミどころがある」と話す。

「SNSでよく色々な人を見て、いや絶対これ違くない?と思う加工もあるし、例えば私もインスタグラムは素敵でかっこいい写真を載せるのは意識的にやっていますが、『現実は違うんやろうな』と普通に思いつつ、ネタとして面白がってアプローチしています」。そこには、今の時代のSNSを皮肉ったユーモアも感じられる。

日本に留学したからこそ理解できた「コンプレックスも含めてそれが“現実の自分”」

 「日本のアニメなどをきっかけに日本が好きになり、日本の大学に入学しました。卒業後、就職するまでタイに帰っていたのですが、そこで多くの海外の方と接する機会があったんです。国が違えば考え方も違う。国それぞれだし、人それぞれ。それがすごく面白くて、コンプレックスも含めてそれが“現実の自分”なんだと肯定的に考えられるようになりました。だから私のアイデンティティも“私”です。誰みたいになりたい、何人になりたいというのは止めました。マネしようと思ってもなれないし、なったところで私は私でしかない」

 国籍やルーツではない。憧れの存在でもない。カテゴリーに囚われず、世界に1つだけの“自分”をアイデンティティとして持てるようになった彼女は、地道にSNSでの発信を続けていった。Twitterで2019年に投稿した「インスタ映えの理想VS現実」という2枚の写真は38.9万いいねがつくほど話題に。YouTubeの動画コンテンツでは、留学で激太りした過去、23kgのダイエットを経験したことも洗いざらいすべて明かしている。

 SNS以外でも活躍の場を広げ、先日はアイドルDREAMING MONSTERの新曲「Adventure」MVにも出演。サプライズで花びらを散らすなどし、アイドルたちの作った可愛さだけではない(理想)、驚いたり困ったり(現実)といった表情を引き出すプロデューサー役を好演した。彼女が貫いてきた「理想と現実」の発信は、今や様々に形を変えて波及している。

■結婚したら一緒にいるべき? 固定概念をぶち壊す“夫婦のかたち”

 先日、YouTuber「EXIT JACK」のマンぺーと国際結婚したことを発表。結婚後も夫婦だからと枠にはまるのではなく、各々が自由に活動していく形をとるという。「彼と私は性格が真逆。今も私はアメリカ、彼はブラジルにいてお互い海外を飛び回っていますが、私は計画を立てるタイプ。彼は何とかなると思うタイプ。でもそれはお互いにすり合わせればいいし、日本人と結婚したからといって私は日本人ではないし、日本人になる予定もない。彼もタイ人と結婚したとわかってくれているからこそ、話し合いもできる」。

 離れていることにメリットもある。それぞれ別行動だからこそ話題も生まれる。24時間一緒にいると、ときに相手がうっとうしくなる瞬間があることも、多くの方が共感するところだろう。そして久しぶりに会うととても新鮮な気持ちになる。ヴィエンナは「相手も自分を信頼してくれているから、自分も信頼しようという気持ちが生まれる。離れているときのルールとして『おはよう』と『おやすみ』の連絡だけはするようにしている」という。

「今は、お互いの可能性を信じて、できる限りやりたいことに挑戦していきたいんです。子どもが産まれたら、また状況は変わってくると思います。行動の制限はできますが、家族でファミリーチャンネルを作って楽しめればいいと考えています。そのチャンネルを育てて、成長した子どもに渡してもいい。子どもが日本語、タイ語、英語どれを喋るようになるか、私たちのように海外旅行へ行きたいというようになるか、未来を考えると楽しいですね」。理想も現実も自分は自分。タイと香港のHAFUであろうと国際結婚もしようと自分は自分。日本を代表する批評家である柄谷行人は“差異”をキーワードに多くの本を著した。互いの“差異”を、自分と他人との間にまたがる深い谷の存在を、理解することからより良い関係づくりは始まるのかもしれない。

(取材・文/衣輪晋一)
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