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「この顔で産んでくれてありがとう」顔のアザを“誇り”に変えたダンサー 傷ついた子ども時代、叱咤激励してくれた母の存在

2023-05-02 eltha

 生まれつき顔に大きな赤アザのあるダンサーで振付師のRICACOさん。TikTokではダンス動画のほか、あざを生かした遊び心のあるメイクやカバーメイクを発信。エンタメ精神あふれる明るいキャラクターとポジティブなメッセージは多くの視聴者を惹きつけ、昨年は資生堂のCMにも出演した。コンプレックスで押しつぶされそうだった思春期を経て、「birthmark(あざ)は個性」「この顔で生まれてよかった」と笑顔で語る彼女が素顔を通して伝えたいこととは。

「あんたは可愛い。堂々としてなさい!」ドシっと構える母の存在が大きな支えに

「SNSのフォロワーさんはみんな優しいです。たまーにアンチさんもいますが、いかに面白く返すかってことしか考えてないですね(笑)」

 そう笑うRICACOさんの第一印象は、とにかく明るくてパワフルな関西の女の子。単純性血管腫を持ち、顔の左側に赤いアザを持って生まれた。
「子どもの頃から人前で何かをするのが大好きで、小学校でもよく友だちと漫才とかダンスをしていました。口の悪い子に『赤ピーマン』とあだ名を付けられても、ひるまず言い返してましたね。勝気な性格は親譲りだと思います」

 そんなRICACOさんも心の奥底で傷ついていなかったわけではない。長く伸ばした前髪でアザを隠そうとしたこともある。

「それを見た母から『コソコソするな!』と怒られました。『あんたは可愛い。堂々としてなさい!』というのが母の口癖でしたね」

 転機は小4のときに入所したミュージカルスタジオだった。「発表会に出たくない。大勢の知らない人にアザを見られるのは嫌」と拒むRICACOさんに、講師がカバーメイクを施してくれたのだ。

「とにかく“みんなと同じ”になれたことがうれしくてうれしくて。そこからカバーメイクを研究するようになり、中学校に上がってから大学を卒業するまでずっとアザを隠してきました。SNSで初めて素顔を投稿したときには、同級生も『知らんかったわ!』と驚いてましたね」

「ありのままの自分でいることが、こんなにも人を前向きにできる」資生堂のCM出演も

 大学卒業後、憧れていた企業にダンサーとして就職を決めた。しかしそこで働く条件は「スッピンで活動できること」だった。

「何年もアザを隠してきたので、最初は悩んだんです。それでもダンスを仕事にしたいという気持ちが強くて、エイヤッとスッピンで初出社しました。そしたら、誰もアザのことをジロジロ見たり言ったりしなくて。いわゆる“大人の対応”だったと思うんですが、そのときに気づいたんです。『アザ=ネガティブなものと思い込んでいたのは自分だったのかも?』『コンプレックスで自分を縛ってたのは自分だったのかも?』って」
 その気づきを確信に変えたのが、初めて素顔のままで投稿したSNSだった。「RICACOさんらしい美しさ」にあふれたその投稿は芸能人からの「いいね」がついたことで瞬く間に拡散。多くの称賛がとともに、「人と違う」ことにコンプレックスを抱いていた人からは「勇気をもらいました」というコメントも寄せられた。

「ありのままの自分でいることが、こんなにも人を前向きにできるんだと知ってから、コンプレックスだったこのアザが誇りに思えるようになりました。他の誰とも違う、私にしかない個性なんだって」

 昨年は「自分らしい美しさ」を後押しする資生堂のキャンペーンCMに素顔で出演。ダンス発表会に出ることを拒んでいたあの頃の自分に「自慢してあげたい」と笑顔をほころばせる。

「母にはCM出演を報告するとともに『この顔で産んでくれてありがとう』って伝えました」

アザを持つ親御さんから相談も「『アザで産んでしまってごめんね』とは言わないで」

 SNSではあざを生かした個性的なメイクのほか、カバーメイクのテクニックも発信。コンプレックスを隠すのではなく、メイクを楽しむオプションの1つになっているカバーメイクは「説得力がすごい」「どのレビューよりも参考になる」と評判だ。

 そんなRICACOさんのもとには自らのアザがある人のほか、「子どもにアザがある」という親からの相談も多く寄せられるという。
「私からお答えできるのは、まず心配してくれる親御さんの存在はお子さんにとっても心強いはずです、ということ。その上で『アザで産んでしまってごめんね』とか『かわいそう』とは言わないでほしい。その子の性格にもよるかもしれないけど、親御さんがドシッと構えていれば、意外とたくましく育つかもしれませんよ、とお答えしています」

 レーザー治療に関する相談も多い。

「実は私も1歳のときに1回、小5〜中1にかけて5回、レーザー治療をしています。ドシッとした親でしたが、やっぱり心配してくれてたんだなと思いますね。当時と比べて今は治療器もよくなってると聞きますが、アザの種類によっては消すのが難しいケースもあるようなので、アザを取っても取らなくても、自分を認めてあげるのが大事なような気がします」

 思春期には多くの人が「人と違うこと」に悩むもの。それはアイデンティティを確立する健全な発達段階だ。その時期を超えて、社会に出たときに「人と違うこと」を強みにできたら、これほど素晴らしいことはない。

「私も初めて好きな人ができたときには、余計アザを隠したい気持ちが高まりました。でも今では彼氏にも『私のアザ、素敵でしょ』って見せてます(笑)」
(取材・文/児玉澄子)
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