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コロナ禍で留学断念、バンライフをはじめた女子大生 「女の子だから…」干渉の声から見えてきた夢

2023-03-13 eltha

「バンライフ」とはクルマを暮らしの拠点に仕事や勉学、旅、趣味などを自由に設計するライフスタイルのこと。現役女子大生で起業家の宮本芽依さんもバンライフを実践する1人。バイトの貯金60万円で中古の福祉車両を購入し、クラウドファンディングを募ってリメイクしたバンで旅とオンライン授業を両立させながら、日本各地で多くのバンライファーと出会ってきた。バンライフ生活を通して見えた生き方とは。

リタイヤしたご夫婦とか漫画家、人生に希望を見いだせなくなった人…さまざまなバンライファ―との出会いで見えた共通点

──バンライフを始めたきっかけを教えてください。

「王道ですけど、きっかけはコロナです。その前まで大学のダブルディグリープログラムで中国に留学していたんですが、半年で帰国して家から出られない日々。もともとアクティブなほうだったのでストレスが溜まってしまって、そんなときに思い出したのが高校時代から『いつかやってみたい』と憧れていたバンライフでした。クルマなら人との接触も抑えられるし、授業もオンラインだからどこでも受けられるしと、2020年秋に軽のバンをレンタルしたんです」

──そしてまずは1ヵ月のバンライフをトライアル。どんな手応えがありましたか?

「すべてが最高でしたね。制約の多かった高校生から大学生になってある程度の自由は満喫していたけど、学校の外にはもっと大きな世界と面白い人たちとの出会いがあるんだと、価値観がどんどん広がっていくのが楽しくてたまらなかったです」
──旅先ではどんな印象的な出会いがありましたか?

「リタイヤしたご夫婦とか漫画家さん、人生に希望を見出せなくなったこともある方──いろんなストーリーがありましたが、出会ったバンライファーすべてに共通していたのが『自分を大切にできている』ことでした。それってなぜかな? と考えて行き着いた答えの1つが、『バンライフは社会との距離を主体的に取れる生き方だ』ということ。都会のせわしなさや人間関係に疲れたら旅に出ればいいし、人恋しくなったら会いたい人に会いに行けばいい。運転中はスマホが触れないから、無駄な情報も入ってこないですしね」

──雑念からも解放されそうですね。

「まさにそうなんです。バンライフをしていると今日はどこで車中泊をするか、どこでご飯を調達するかなど、五感に直結した選択をする場面がたくさんあるんですね。自分がしたいことに向き合い、それを実現するために行動する。都会で便利な定住生活をしていると、そんなことを考える余白の時間もなかったなと実感する日々でした。元引きこもりの方が『クルマはタイヤが付いてるから前に進むしかない』とおっしゃっていたのもとても印象的でしたね」

憧れは女性で初めてエベレスト登頂した田部井淳子さん「『やりたいことに年齢も性別も関係ない』を体現したい」

──昨年4月には本格的なバンライフを開始。準備にあたってどんなことが大変でしたか?

「アルバイトで貯めた60万円で中古のバンを購入。リメイク費用はクラウドファンディングで賄いました。やるべきことを1つ1つクリアしていくだけで、それほど大変さは実感してないです。ただ当時やっていたYouTubeチャンネルのコメント欄にはさんざん書かれましたね。『キャンピングカー登録は難しすぎて女子大生にできるわけがない』とか『女の子1人でバンライフは危険すぎるからやめたほうがいい』とか」
──「女の子だから」という理由で止める声が多かったんですね。

「女性が何かを始めようとすると、必ずと言っていいほどそういった声が上がるんです。起業するときも『若くて実績もないうちから起業はリスクが大きすぎる』と言われました。私はやると決めたらやるほうなのでぜんぜん気にしなかったんですけど、何かに挑戦しようとしている女の子がそういう社会や大人の声で諦めてしまうこともあるんだろうなと思ったら悔しくて」

──宮本さんがバンライフを実現したことそのものが、女性たちへのエンパワメントになるのではないでしょうか。

「私は世界の女性で初めてエベレスト登頂を達成した田部井淳子さんに憧れてるんです。田部井さんは戦前生まれ。きっと現代女性よりもっと『できっこない』と言われてきたと思うんですね。女性は家庭を守るべきだとか。でも田部井さんはお子さんを立派に育てるという夢も実現されているんです。そして人生の後半ではご自身の経験を生かして多くの社会貢献をされた。そんな田部井さんをロールモデルに、私も『やりたいことに年齢も性別も関係ない』ということを、身をもって証明したいと思っています」

バンライフ生活からヒントを得て起業へ「『自分を大切にできる女性』を増やしたい」

──実際のところバンライフで危険な目に遭ったことはなかったのでしょうか。

「それがないんですよ。もちろん最低限のリスク回避はしています。たとえば夜はクルマの中の光を遮断して気配を消すとか、居場所がわからないようにリアルタイムでSNS投稿しないとか。でもこれは性別関係ないですね。もうちょっとお金が貯まったら外に防犯カメラを付けたいと思ってます」
──想定外だった出来事は?

「大学が対面授業に戻ってしまったこと(苦笑)。なので今は遠出ができるのは休日だけで、基本的に関東でバンライフをしています。ただ起業をして実務的にやることも増えたので、ちょうどいいタイミングだったかもしれないです」

──どのような事業をされるんですか?

「メインはキャンピングカーの空間デザインですが、ほかにもバンライフのグッズなどライフスタイル全般をカバーしたブランドを展開したいと考えています。ただバンライフに限定しているわけではなく、私がこの会社で目標にしているのは『自分を大切にできる女性』を増やすことなんですね」

──それは逆に言えば、今の社会には女性が自分を大切にできない場面が多いということでしょうか?

「私のYouTubeのコメント欄もそうでしたが、女性は『女の子だから』という心配のフリをした足かせ的な声を浴びせられがち。それによって自分の人生を生きられなくなってしまう女性は多いと思うんです。だけどやりたいことを我慢するなんてもったいない。バンライフも『いつかやりたい』と言ってる人は多いけど、自分から掴みに行かないと『いつか』はいつまで経っても来ないんです。女性たちが自分でも気付かないまま固く締めていた心の蓋を開けたい。それが、私がこれからの事業で実現したいことです」
(取材・文/児玉澄子)

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