2023-03-11
京都市上京区に鎮座する北野天満宮といえば、学問の神さまとして名高い菅原道真をまつった社として、年中、多くの参拝者が訪れます。そんな北野天満宮の参道沿いにひっそりたたずむ寺院があること、ご存知ですか?それが「東向観音寺」です。
実は東向観音寺も菅原道真ゆかりの寺院である上、平安時代の武将・源頼光が退治したと伝わる「土蜘蛛」とも深いかかわりを持っているのです。今回は東向観音寺をご紹介しましょう。
「東向観音寺(ひがしむきかんのんじ)」は京都市上京区にある寺院。学問の神さまとして知られる菅原道真をまつった北野天満宮の参道沿いに位置しています。
寺伝によると、創建は延暦25年(806)。創建当初は「朝日寺」と呼ばれていましたが、応和元年(961)、筑紫国・観世音寺より菅原道真自作の十一面観世音菩薩が請来され、「観音寺」と呼ばれるようになりました。以来、東向観音寺は道真自作の十一面観世音菩薩を本尊としてまつる寺院として、多くの人に崇敬されています。
写真は東向観音寺の山門。寺名のとおり、東を向いて建っています。
山門にはご覧のような提燈がぶら下げられています。その文言のとおり、道真自作の十一面観世音菩薩は北野天満宮の本地仏であり、それを安置する東向観音寺は神宮寺としての役割を担っていました。
東向観音寺が北野天満宮の参道沿いにあることには、このような理由があるわけですね。
山門の真正面には、本堂が位置しています。現在の本堂は、慶長12年(1607)、北野天満宮の本殿などの再建時にあわせて再建されたものですが、入母屋造・本瓦葺の本堂の前面にやはり入母屋造・本瓦葺の礼堂を連結させた珍しい構造となっており、京都市指定有形文化財となっています。
内陣に安置されている道真自作の十一面観世音菩薩は、25年に一度、御開帳される秘仏。次回の御開帳は2027年を予定しています。
東向観音寺でもう一つ見逃せないのは、境内の奥に据えられているこちらの石塔。「伴氏廟」と呼ばれる石造の五輪塔で、鎌倉時代の作。「伴氏廟」の名称は、道真の母親(大伴氏の出身)をまつった石塔であるということにちなみます。
「伴氏廟」は「忌明塔(いみあけとう)」としても知られています。忌明塔とは、四十九日の法要が終わった忌明けの日に参拝し、身体を清めるために参拝する石塔のこと。中世以来、都の人たちに崇敬されてきた石塔であることが、ここからもわかりますね。
それにしても巨大!土壇の上に据えられている上、五輪塔自体の高さが4メートル以上もあるため、そのたたずまいには圧倒されます。これほど大きな五輪塔は非常に珍しいものです。
ちなみに、東向観音寺に隣接するように、北野天満宮の摂社の一つである「伴氏社(ともうじしゃ)」が鎮座しています。伴氏社は道真の母親をまつった社であり、「伴氏廟」は明治時代初頭に出された神仏分離令によって東向観音寺に引き取られるまで、こちらに置かれていました。
あわせてお参りしましょう。
「伴氏廟」の脇にも小型の五輪塔が並んでいますが、その前に小さなほこらがあるのが、おわかりになりますか?ほこらのなかに置かれているのは、石燈籠の火袋部分。平安時代の武将・源頼光に退治されたとされる「土蜘蛛」ゆかりの遺物です。
かつて近所に「土蜘蛛」を埋葬したといわれる塚があり、明治時代になって塚を発掘したところ、さまざまなものが出土。ある人がそのうちの火袋をもらい受けて庭に飾っていると、家運が衰退。土蜘蛛の祟りではないかということで、東向観音寺に奉納されて以来、東向観音寺では火袋を丁重に供養しています。
東向観音寺がいかにさまざまな魅力を有する寺院であるか、おわかりいただけたでしょうか。北野天満宮の参道沿いにあるため、拝観しやすいのも魅力の一つ。東向観音寺で道真や土蜘蛛ゆかりの遺跡を見学してください。
住所:京都市上京区今小路通御前通西入上る観音寺門前町863
電話番号:075-461-1527
拝観料:境内自由
アクセス:京都市バス「北野天満宮前」より徒歩約5分
2023年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
■関連MEMO
北野東向観音寺公式ホームページ(外部リンク)
http://www.higasimukikannon.sakura.ne.jp/
【トラベルjp・ナビゲーター】
乾口 達司
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