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“出生前診断”に約7割が賛成派 「綺麗事を抜きにして、障害を持つ子を育てられるか否かは親の覚悟も心の準備も必要だと思う」意見も

2022-09-28 10:30 eltha

 お腹にいる赤ちゃんに先天性の病気がないかどうかを調べる「出生前診断」。これまでは出産にリスクを伴う“高齢出産”にあたる35歳以上の妊婦や、過去に染色体異常のある子どもを妊娠した経験のある妊婦のみが対象とされていたが、今年の春からは年齢制限がなくなったことが日本医学会から発表された。では、実際に出生前診断について、世の中の人たちはどのように考えているのか。eltha by ORICON NEWSでは、1000名に意識調査を実施した。

“出生前診断”についてどう思う?(写真はイメージ)

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■「出生前診断」をすることに対する考え 年代別では20代の8割が賛成派

 「出生前診断」とは、胎児に先天性の疾患がないかどうかを調べる検査のことで、定期健診での超音波検査(エコー検査)もそのひとつにあたる。

 胎児の大きさや羊水の状態、胎盤の位置などを調べる超音波検査に対して、出生前診断は胎児の染色体の疾患を調べるもので、母体血清マーカー、コンバイント検査、新型出生前診断、羊水検査、絨毛検査、クアトロ検査などがある。ただ、非確定な検査もあるため、「偽陽性」「偽陰性」になる可能性もある上に、費用が高額。そして染色体異常の疾患のみの診断しかできないといったデメリットも存在する。

 タレントの東尾理子や歌手のSILVA、医師でタレントの友利新など、芸能人のなかにも出生前診断を受けたことを公表し、話題となった。

 今回の調査で「出生前診断をすることについてどのように思われますか?」と聞いたところ、「賛成・どちらかといえば賛成」が全体の71.3%を締め、「反対・どちらかといえば反対」が9.5%にとどまった。年代別に見ると、「賛成・どちらかといえば賛成」は20代が81.1%、30代が78.8%、40代が70.6%、50代が67.6%、60代が62.7%という結果に。年代が若くなるにつれ、出生前診断をすることに肯定的なようだ。

■「出生前診断」賛成派の7割は「事前に知ること準備の時間が持てるから」

出生前診断についてどのように思われますか?(年代別)※単一回答

出生前診断についてどのように思われますか?(年代別)※単一回答

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 「出生前診断をすることについて「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた人に対して、その理由を聞くと、全体の71.8%の人が「結果がどうあれ、出産に向けた準備の時間が持てるから(心身の準備や情報収集・環境整備など)」と回答。続いて、「妊娠中の不安を軽減させると思うから」51.0%、もし診断が陽性だった場合を考慮した「先天性疾患を持った子の療育や看護の負担を考えて」が49.5%、「先天性疾患を持った子の将来的なサポートについて考えて(親の死後や兄弟への負担等)」が42.5%、「高齢出産が増えているから」が34.5%、「子ども自身の将来を考えて」32.3%、「技術の進歩により、検査による流産等リスクも軽減していると思うから」が27.9%という結果になった。

■子を持つ覚悟、親としての負担、生まれてくる子どもの幸せ…さまざまな意見が飛び交う

出生前診断「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた理由(複数回答)

出生前診断「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた理由(複数回答)

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 また賛否に関わらず、「出生前診断についての考えや意見、実際のエピソードを教えてください」という問いに対しては、さまざまな声が寄せられた。

「愛情だけでは育てられないので、産んでから後悔することのないように選択肢は必要かと思う」(50代女性/東京都)という現実的な意見のほかには、「残念ながら私共夫婦の間には子どもはいないのですが、私は子どもは授かりものという思いがあります。出生前診断で何かあったと診断された場合には、私自身の心が持たないような気がします」(60代女性/千葉県)という率直な意見も。また、「100%信頼できる検査とは思えないのに、検査結果によって中絶をするのは殺人とも言えるし、その選択は障がい者差別だと思う」(60代女性/大阪府)との考えを持つ人もいた。

 さらに、「生まれてきた後の親も子も苦労することを考えたら調べたほうが良い。親の方が先に亡くなったら、後に残された子どもがかわいそう」(60代女性/千葉県)、「先天性疾患を持つ子どもを育てることが経済力的に難しい場合はあると思います。その場合、親だけなく産まれてくる子どもも幸せになれるとは思えない」(50代男性/埼玉県)、「命の選別となりとても難しい問題だが、事前にわかるのであれば心構えが持てる。最初から無理だと思う親だったら産まれてくる子も不幸だと思う」(40代女性/埼玉県)などの障害を持って生まれてくる場合、子どもの将来を踏まえたうえでの意見や、「実の妹が障害を持っているから、自分がもし親になったときにも色々と考えさせられるなと思った」(20代女性/神奈川県)という、きょうだい児だった立場ゆえの複雑な心情を吐露する意見も見られた。

 身近に出生前診断をした人の声の中には、「友人の子が重度の障害を持っていて、その次の子を妊娠したときに診断をしてもらっていた。結果、健常な子を出産したのだが、やはり気になるのは当然のことだと思う。上の子を産んだことですら、彼女は子どもに申し訳ないことをしたと悔やんでいた」(30代女性/静岡県)という重い意見も。また、実際に高齢出産をした人の中には「妻が不安を感じており、診断を受けた。何事もなく安心して準備できた」(30代男性/大阪府)、という声の一方で「第2子を妊娠中、40歳での妊娠だったため、子どもがどのように生まれてくるのか心配でした。しかし、もし検査をして異常が見つかっても、おろすかどうか、平常心で妊婦生活を送れるか、不安の要素しかなかったので、何もせず出産となりました。検査をして結果を受け止める覚悟がないのなら、検査はしないほうがいいのかなと思います」(40代女性/大阪府)という人も。どの方も今後の親としての責任、生まれてくる子どものことを考えたうえで、それぞれ出生前診断への答えを出しているようだ。

 産婦人科を舞台にしたドラマ『コウノドリ』(TBS系)では、出生前診断によって妊娠中絶を選択した母親の回がある。そこで宮沢氷魚扮する研修医の五郎が綾野剛演じる鴻鳥に出生前診断への不信感をぶつける場面がある。そこで鴻鳥はこんなふうに答える。

「その質問の答えは、僕にはわからない。命は尊い。(中略)だけど、その葛藤に僕たちが寄り添わないで誰が寄り添う?検査を受けた人、受けなかった人、赤ちゃんを産んだ人、産まなかった人、どの選択も間違ってない」

 命の誕生はもちろん喜ばしいことではあるが、産むこと以上に育てていくことが重要である。その責任をどのように果たしていくのかは、親に委ねられている。「命の選別」は、倫理的には良くないことなのは誰もが知っている。だが、生まれてくる子どもの幸せを考えたとき、それを容易く糾弾していいほど、「出生前診断」の是非は単純ではない。今一度、じっくりと考えたい問題だ。

【調査概要】
調査対象: OMR会員 20〜60代 男女
サンプル数:回答者全体 1000名 人口構成にあわせて性年代をウェイトバック
調査期間: 2022年8月30日〜9月5日(月)
調査手法: インターネット調査
調査機関: オリコン・モニターリサーチ(https://omr.oricon.co.jp/)

※出生前診断とは・・・赤ちゃんが生まれる前に、どのような病気を持っているかを調べる検査(出生前検査)を行い、これに基づいて行う診断のことをいいます。



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