海をバックに撮影された家族写真
――くるみさんにとってターニングポイントとなった出来事はありますか。くるみさんまず人生観が変わったのは、大学2年時に今の夫と出会ったことでした。お付き合いして早々に夫の実家のホームパーティーに招いてもらったのですが、家族仲がよくて本当に幸せそうで、「こんな家庭を作りたい!」と思いました。自分の家は両親の離婚もあり、家族団欒の形から遠ざかっていたこともあって、”家庭の幸せ”を目にして衝撃を受けました。それまでの人生で当たり前だった「幸せ=人生で成功すること」という方程式にヒビが入った瞬間でした。その時から“家族を大切にしたい”という想いで選択を続け、今に至っています。
――会社員として働いたことはどのような経験になりましたか?くるみさんモルスタで高収入&激務な世界を垣間見て、逆にお金を稼ぐことへの執着心が消えました。莫大な資産を築いてFIREするには激務でも高収入になる必要があって大変すぎるし、何十年かかるかも分からないですよね。でも私は何十年か後の経済的自由を手に入れたいのではなくて、今しかない20代の時間を楽しみたいのです。
元のエリート街道への未練もここで完全に断ち切れた気がします。キャリアへの執着がなくなったので、23歳で第1子出産。1年間の育休を取るという選択にも抵抗がありませんでした。夫も同じ考えで、1年間の育休を取る決断をしてくれました。
――現在はマイホームを購入された千葉県勝浦市で育休移住されています。実際に住んでみていかがですか。くるみさんまだ移住して間もないですが、勝浦はとても居心地がよいです。自然が豊かで、それでいて住環境は整っていて、住みやすい場所です。
映画館やショッピングモールのようなお金を使って楽しむような娯楽は勝浦にはあまりありません。でも主体的に取り組める楽しさがあります。例えば、勝浦名物の朝市では、地元の人も移住者も各々の好きなこと、得意なことで出店しています。買い物はもちろん、出店者さんとのコミュニケーションが醍醐味です。
子どもを連れて街を散歩していると、たくさんの人に話かけてもらえるし、魚やたけのこなんかをお裾分けしてもらうこともあります。元々、お金を使うことにはあまり興味がなかったので、精神的な豊かさのある今の暮らしは性に合っています。
――勝浦移住時に以前住まれていた家を賃貸に出し、大家デビューをされました。非課税レベルの不労所得を得て、給付金をフル活用しながらサイドFIREを目指すという逆転の発想を選択されたのはどのような背景からだったのでしょうか。くるみさん数年社会人として働いてみて、日本的サラリーマンの働き方に疑問を持ちました。働かなくても今の給料と同じお金がもらえるのだったら、働かない人が多いと思うんです。多くの人が好きなことや、やりたいことを仕事に出来ているわけではないですよね。それでも家族のために、と働いていることと思います。
ところが、サラリーマンとして「家族のために働く」という選択肢を選んでしまうと、会社に縛られて家族と過ごせる時間は途端に減ってしまいます。かと言ってFIREを達成するには時間がかかりすぎてしまう。本当に時間が欲しいのは子育てをしている今です。子どもが小さいうちに一緒に過ごせる時間は貴重ですから。
ーーお子さんのことを考えての選択だったのですね。くるみさん 逆に「家族のために働かない」という選択肢もあることに気付きました。日本は他国に類を見ないほど育休制度が充実しています。たとえば育児休業給付金は、非課税であることを利用して、選択的に住民税非課税世帯になるという方法です。日本は非課税世帯への子育て支援が幼・保・小・中・高・大を通して充実しています。無理をしてまで「経済的強者」を目指すより、子育てをしている間はあえて「経済的弱者」になることで、ひとまずお金の不安なく、子どもとの時間も生み出せるのではと考えました。
とはいえ、現在育休中の私たちはまだ課税世帯なのをお断りしておきます。(住民税は前年の所得で決まるので、来年度は非課税になれるだろう、という仮定のお話です)