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座禅もできる奈良の禅寺「王龍寺」本尊は磨崖仏の十一面観音菩薩!

2021.08.14

奈良にある王龍寺は、南北朝時代に彫られた珍しい磨崖仏の十一面観音菩薩像を本尊とする黄檗宗(おうばくしゅう)の禅寺です。江戸時代に建てられた本堂は、座禅のために一般に開放されています。
今回は、禅寺ならではの特色と本堂にお祀りされている本尊の磨崖仏や、山門前に立つ「吉村長慶」の名が刻まれた道しるべの謎に迫ります。

黄檗宗の伝来と王龍寺

写真:花月 文乃

王龍寺の歴史は、奈良時代(710〜784)に聖武天皇の勅願により、若草山や東大寺を一望できる高台の山に建立されたことから始まります。聖武天皇は、奈良の大仏を造立したことでも知られています。
江戸時代(1600〜1868)に、奈良の大和郡山藩主になった本多忠平公(1632〜1695)が、黄檗宗(おうばくしゅう)の寺院として復興・創建し、菩提寺としたことで現在の禅寺の形に整えられました。開山は、梅谷禅師です。梅谷禅師は、曹洞禅を学んだ後、黄檗宗第二代木庵禅師に師事し、その法を継ぎました。
江戸時代に刊行された「大和名所図会」には「海瀧山 王龍寺」としてその名前が記載されています。

写真:花月 文乃

黄檗宗は、日本の三禅宗(曹洞宗・臨済宗・黄檗宗)の一つです。
禅宗は、お釈迦様の悟りの体験を自分自身の中に自覚することを重視するため、特定の本尊を持ちません。そのため、お祀りされている本尊はお寺により異なります。また、同じ理由により特定の経典へのこだわりもありません。
黄檗宗は、中国・明の時代に中国僧の隠元禅師(1592〜1673)により、江戸時代の日本に伝わりました。1654年、63歳の隠元禅師は弟子20名と共に日本に渡り、京都の宇治に萬福寺を開山。萬福寺は、黄檗宗の大本山として知られています。
黄檗宗の寺院の特色の一つに、中国風の建築様式があります。本堂の丸窓を左右対象に配置した形や障子の桟が建物の外側になる形には、黄檗宗の特色が表されています。

写真:花月 文乃

本堂の内部にある外陣では、毎月定例の座禅会を開催。
外陣の左右には、十八羅漢像が安置されています。これは、大本山・萬福寺の本堂に安置されている十八羅漢像と同じ中国の明様式で彫られた仏教彫刻として貴重なものです。
月例座禅会は、第三土曜日・日曜日の朝7時から8時まで、定例座禅会のない日曜日も朝7時から座禅ができるように本堂を開放しています。それ以外の日時でも、相談により対応可。遠方の方でも参加可能ですが、いずれも事前連絡が必要です。

磨崖仏の十一面観音菩薩像が彫られた時代

写真:花月 文乃

本尊は、磨崖仏の十一面観音菩薩像で本堂の内陣奥に安置されています。磨崖仏とは、自然の巨石や岩肌に彫刻された仏像です。
十一面観音菩薩像には、彫刻された年月が刻まれています。岩肌に複雑な観音像を彫るのは難しく、多くの磨崖仏は悟りを開いた如来であることに加え、年紀が彫られている磨崖仏は数少ない事例となっています。
刻まれた年紀は1336年、南北朝時代(1336〜1392)が始まった年です。

写真:花月 文乃

十一面観音菩薩像は、遠く東大寺の方角を向き、奈良の都を見下ろす岩肌に彫刻されました。
その脇に、彫られているのが不動明王です。不動明王には、室町時代(1336〜1573)にあたる、1469年の銘があり、どちらも奈良市指定文化財(史跡)に指定されています。
※磨崖仏を拝観希望の方は申し出が必要です。

写真:花月 文乃

本尊の磨崖仏は、奈良時代にお寺が建てられた以後、南北朝時代に彫られ、中世の人々の信仰を集めてきました。
その後、お寺は江戸時代に禅宗の寺院になりましたが、本堂が建てられた1689年までは、この磨崖仏は本堂の後ろにある岩肌から続いていた大岩に彫られていました。
本堂の中にある磨崖仏が彫られている岩は、高さ4.5メートル、幅5.5メートル。本堂の裏手にある大きな岩の断崖と磨崖仏が彫られている岩は、下部でつながっています。
このことから、初めは屋外にあった磨崖仏を岩ごと切り出して、それを覆うように本堂を後から建てたと考えられます。

「宇宙菴」吉村長慶とは?

写真:花月 文乃

山門の近くには、「吉村長慶」の名が刻まれた「石佛観音 岩屋大黒天 王龍寺」の道しるべがあります。「吉村長慶」とは、一体誰なのでしょうか?
吉村長慶(1863〜1942)は、江戸時代の終わり頃、ならまちに生まれた奇豪です。
長慶には複数の顔があります。質屋を営み莫大な富を築いた相場師としての顔、奈良市会議員を務めた政治家の顔、国家政策を論じて平和論を著した思想家の顔、宇宙教を提唱して長慶寺を開基した宗教家の顔などです。
長慶は自らを「宇宙菴」と名乗り、自分で考えた特異な石像物をお抱えの石工に彫らせ近畿各地の社寺に奉納しました。その数、なんと2百以上。
王龍寺付近には、長慶の寄進した道しるべが6つあります。

写真:花月 文乃

本堂から大黒堂に至る途中にあるのが「宇宙菴 吉村長慶寿像碑」です。石柱の背面には、長慶の像が彫られています。

写真:花月 文乃

王龍寺の大黒堂にお祀りされている大黒天も、長慶の作と伝わります。近年、長慶が山腹の岩壁に彫った大黒天に、大黒堂が建てられました。

天然記念物の豊かな里山の自然

写真:花月 文乃

王龍寺の境内地は、古来より信仰の場であったため豊かな自然が残されています。
山門から山道をへて、本堂の周辺に広がる山林は、コジイ林です。コジイ林は、市内に残された貴重な里山の自然として、奈良市の指定文化財(天然記念物)に指定されています。

写真:花月 文乃

コジイ林の中を山門から本堂まで進む途中には、行場だった滝があります。

写真:花月 文乃

南門近くにあるのが、樹齢300年を超えるヤマモモの大木です。ヤマモモの古木は、奈良県の保護樹林に指定されているだけでなく、コジイ林とともに奈良市の指定文化財(天然記念物)となっています。

奈良・王龍寺へ行こう!

写真:花月 文乃

本尊の磨崖仏・十一面観音菩薩像は、遠く南北朝時代からこの地で人々の信仰を集め、周辺には美しい自然が残されました。
寺院の周辺は住宅街ですが、山門をくぐると広がるのは別世界。都会の喧騒から離れた里山の静寂な空間で、座禅を組むことができます。座禅を組む本堂の内陣には、本尊の磨崖仏がお祀りされています。
本堂は、座禅を希望する方に広く解放されています。あなたもぜひ、王龍寺の山門をくぐり、禅の世界にふれてみてください。

海瀧山 王龍寺の基本情報

住所:奈良県奈良市二名6-1492
電話番号:0742-45-0616
アクセス:近鉄奈良線富雄駅下車 奈良交通バス 杵築橋下車 徒歩20分
2021年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

■関連MEMO
黄檗宗 海瀧山 王龍寺(外部リンク)
http://oryuji.com
王龍寺 写真ブログ 「王龍寺の季節」(外部リンク)
https://oryuji.hatenablog.com
黄檗宗大本山 萬福寺(外部リンク)
https://www.obakusan.or.jp

【トラベルjp・ナビゲーター】
花月 文乃

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提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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