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空海ゆかりの南都七大寺!奈良市の「大安寺」とその遺構探訪

2023-01-14

奈良に「大安寺」というお寺があることをご存知でしょうか。飛鳥時代に創建された大安寺は、都の移動にともなって奈良の地に移り、隆盛をきわめました。そんな大安寺も現在ではささやかな寺域を持つお寺に過ぎませんが、その痕跡は周辺の各所に見出せます。
今回はあの弘法大師・空海も修行した奈良市の大安寺をめぐり、巨大寺院のかつての栄華をしのびましょう。

広大な寺域を有していた大安寺

写真:乾口 達司

大安寺の創建は飛鳥時代。聖徳太子が平群郡額田部の地に「熊凝精舎」を創建したことにはじまります。その後、熊凝精舎は百済大寺、高市大寺、大官大寺とその名称と所在地を変え、平城京に移って以降は「大安寺」と称しました。
大安寺は東大寺・興福寺・元興寺・西大寺・薬師寺・唐招提寺(法隆寺の説もあり)とともに「南都七大寺」の一寺であり、『大安寺伽藍縁起并流記資財帳』によると、平城京左京の六条および七条の地に広大な寺域を有していました。
金堂や講堂を三方から取りかこむように多くの僧坊が建ち並び、数多くの僧侶が居住。あの弘法大師・空海や空海の師であった勤操大徳、インドからやってきた菩提僊那のような渡来僧もおりました。しかし、中世に入ると、衰退。近代に入って本格的な復興がはかられ、現在にいたっています。

写真:乾口 達司

写真は本堂。大安寺のかつての本尊は金堂に安置されていた丈六の釈迦如来像でしたが、現在の本尊は十一面観音立像(国の重要文化財)。普段は秘仏で、毎年10月1日から11月30日の2か月間のみ御開帳されます。

ダルマみくじや絵馬

写真:乾口 達司

境内をめぐると、ご覧のようなダルマをあちらこちらで見かけます。これはダルマの形をしたおみくじ。興味のある方はひいてみましょう。

写真:乾口 達司

写真の右側は、本堂裏手の嘶堂に安置されている馬頭観音菩薩立像を描いた絵馬。左は毎年1月23日にもよおされる「光仁会癌封じ笹酒祭り」にちなんで描かれた「がん封じ」の絵馬。
特に「がん封じ」の絵馬は、がんの治癒を願って、たくさん奉納されています。

境内の内外に見られる大安寺の遺構

写真:乾口 達司

境内には、ご覧のような石が点在しています。よく見ると、表面が丸く加工されているように見えませんか?実はこれ、かつて建物の柱を支えていた礎石なのです。
建物自体は失われても、こういった礎石が当時の大安寺の隆盛を物語っているわけです。

写真:乾口 達司

境内の外側にも、ご覧のような形で、大安寺の遺構が復元されています。こちらは北面中房跡。

写真:乾口 達司

写真は経楼の跡地です。
ごく普通の住宅地のなかにこういった復元遺構が見られることからも、かつての大安寺がいかに広大な寺域を有していたかがわかりますね。

巨大な東西二つの塔

写真:乾口 達司

大安寺の往時の壮麗さを示すものとして、もう一か所見逃せないのが、二基の大塔の遺構です。
大安寺の寺域は当時の六条大路の南側にも広がっており、東西二つの大塔は、その南側の敷地に並んで建立されていました。金堂から遠く離れた南側に両塔が居並ぶ形式は「大安寺式伽藍配置」と呼ばれており、大安寺ならではの特徴となっています。
写真はそのうちの西塔。ささやかな土壇の上に、かつて塔の心柱を支えていた大きな礎石(心礎)が残されています。

写真:乾口 達司

心礎をよく見ると、矢穴の列を確認することができます。矢穴とは、ノミで掘った穴のこと。矢穴は大きな石を割る目的でつけられますが、心礎がそのまま残されているということは、それがあまりにも大きかったため、途中で割るのを断念したことが考えられます。

写真:乾口 達司

こちらは東塔の跡。建築部材を支えていた礎石の跡が示されていますが、発掘調査の結果、東西両方とも七重塔であったと考えられています。
<大安寺の基本情報>
住所:奈良県奈良市大安寺2-18-1
電話番号: 0742-61-6312
拝観時間:午前:9時〜午後5時
アクセス:奈良交通パス「大安寺バス停」下車徒歩約10分

大安寺の瓦を焼いていた杉山古墳

写真:乾口 達司

大安寺の北方500メートルほどの位置に、杉山古墳と呼ばれる前方後円墳があります。築造年代は5世紀後半頃。墳丘のまわりにはかつて周濠も張りめぐらされていましたが、実はかつての大安寺の寺域は、この杉山古墳を取り込むような形で広がっていたのです。
『大安寺伽藍縁起并流記資財帳』では、杉山古墳は「池并岳」と呼ばれており、境内の北東の「隅」にあったことから、後年「隅の山」が訛って「杉山」と呼ばれるようになったと伝えられています。
杉山古墳の前方部南斜面には6基の瓦窯跡があり、ここで大安寺の瓦が焼かれていたことがわかります。現在、そのうちの2号窯がガイダンス施設として復原模型の形で敷地内に展示されています。
<杉山古墳の基本情報>
住所:奈良県奈良市大安寺4丁目
開園日時:火曜日・木曜日・土曜日・日曜日の午前9時〜午後5時(1月1日〜1月3日は閉園)
アクセス:奈良交通パス「大安寺バス停」下車徒歩約10分

写真:乾口 達司

杉山古墳のさらに北側の住宅地の一角には、ご覧の地蔵堂があります。堂内に安置されている仏像のうち、像高160センチメートルになる大きな地蔵菩薩立像(奈良市指定文化財)は平安時代前期の作。大安寺から流出したものではないかと考えられており、大安寺とのゆかりの深さがしのばれます。
ほかにも、付近の看板には「西護麻堂自治会」「西護麻堂町」といった表記も見られます。もちろん、「護麻堂」は大安寺のお堂の名前に由来しており、こういった日常の光景にも、かつての巨大寺院・大安寺の痕跡がうかがえます。
<木造地蔵菩薩立像の基本情報>
住所:奈良県奈良市大安寺4丁目(地蔵堂内に安置)
拝観時間:自由
アクセス:奈良交通パス「大安寺バス停」下車徒歩約10分

大安寺とその周辺を散策しよう!

大安寺がいかに広大な寺域を持つ寺院であったか、おわかりいただけたでしょうか。
ちなみに、2023年1月2日から同年3月19日まで、東京国立博物館本館11室にて特別企画「大安寺の仏像」展が開催されています。大安寺所蔵の仏像群のほか、大安寺より出土した瓦などが展示されています。
東京国立博物館で「大安寺の仏像」展が開催されている今日、奈良まで足を伸ばし、実際に大安寺に参拝してみてはいかがでしょうか。
2023年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

■関連MEMO
病気平癒・癌封じの祈祷やお守り 奈良県のお寺 大安寺(外部リンク)
http://www.daianji.or.jp/
史跡大安寺旧境内 杉山古墳・杉山瓦窯跡群―奈良市ホームページ(外部リンク)
https://www.city.nara.lg.jp/site/bunkazai/3269.html
木造地蔵菩薩立像―奈良市ホームページ(外部リンク)
https://www.city.nara.lg.jp/site/bunkazai/8655.html

【トラベルjp・ナビゲーター】
乾口 達司

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提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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