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オランダのアイセル湖畔に佇む静かな村「ヒンデローペン」

2023-08-23

オランダ北部のアイセル湖に面した美しい漁師村「ヒンデローペン」。小舟が浮かぶ運河と木製の橋、煉瓦畳の路地、手入れの行き届いた庭のあるオレンジ色の煉瓦造りの屋根の家屋、教会など、どこを見てもまるで童話の世界の様な佇まい。うっとりさせられる可愛らしい村です。
ヒンデローペンは13世紀に都市権を取得し、17世紀には海運業と伝統工芸で栄えました。その頃からの煉瓦造りの家屋が今でも大切に残されています

アクセスは大変だけれど訪れ甲斐があるヒンデローペンへ

写真:Hiroko Oji

アムステルダムから北東約130キロメートルに位置するのが「ヒンデローペン」。アクセスは主に鉄道とバスとなり、プラットホームは一つだけという駅舎もない無人駅の前には小さなバス停があるだけ。
周りは殺風景な牧草地風景のみで、こんなところに人が住む集落があるのだろうかと不安になりますが、村の中心地へは車が走っていく広い道路をひたすら20分ほど歩きます。

写真:Hiroko Oji

道路に沿って小さな水路があり、長閑な風景と草を食む羊の姿に癒されながらのお散歩。家並みが見えてくると自然と歩みが早まります。

写真:Hiroko Oji

20分ほど歩いて見えてくるのは、かつて栄えたアイセル湖畔の港風景。漁船やボート、クルーザーがたくさん浮かんでいます。
ヒンデローペンのヒンデは「鹿」、ローペンは「走る」という意味があり、北海の細い部分をせき止めて出来た村です。孤立した位置のため独特な文化と言葉が根付いてきたのです。
オランダは海よりも低い国のため水害に見舞われることも多く、特に1916年には北海からのひどい高潮に襲われ、ゾイデル海のまわりの堤防が2カ所決壊。アムステルダムの北方一帯が大洪水に見舞われ大変な犠牲者が出ました。そこで、政府はゾイデル海の入口をダムでふさぐ大計画をたて、1932年に大堤防で締め切って淡水湖にし、現在のアイセル湖となっているのです。

素朴だけれど絵のような美しい風景が潜むヒンデローペン

写真:Hiroko Oji

ヒンデローペンは、2015年「Team EUROPE」が発表した「ヨーロッパの美しい村30選」に選ばれたのが納得できるほど、愛らしく素朴な美しさが村のあちらこちらに潜んでいます。
村中を縦横に走る大小の運河に架かる白や緑でできた木製の橋が可愛らしく、お花や緑で溢れる庭のある民家、小舟やボートが浮かぶ運河風景は心癒されます。

写真:Hiroko Oji

村の中は、運河だけでなく煉瓦で埋められた路地が縦横に走り、路地沿いに軒を並べるのはオレンジ色の瓦屋根をもつ煉瓦造りの家屋。17世紀に建てられたものが多く、民家の壁や玄関周りには木彫りを施した木の根っこや丸太で造ったオブジェが置かれていて、散策を楽しませてくれます。

写真:Hiroko Oji

この村では手書きの草花や鳥を雑貨や家具などに絵付けする「ヒンデローペン塗り」という伝統工芸が今でも大切に受け継がれ、工房やショップが点在しています。
赤・紺・緑などの地色に、花や鳥、人物、スクロール(つる草のようなデザイン)などを描いたもので、通りを歩いているだけでも、民家の軒先の美しくデザインされた看板や表札、窓の覆い戸などに施された作品を見ることができます。

海運業で栄えたヒンデローペンの閘門小屋

写真:Hiroko Oji

ヒンデローペンは、17世紀と18世紀は特に黄金時代を迎えた貿易・海運業で栄えました。
アイセル湖に面した港前にあるのは白い跳ね橋と時計塔のある閘門小屋。この小屋は1619年に建てられました。

写真:Hiroko Oji

ここでは手動で港と水路の間の水位を調節して舟を通す役割を果たしてきました。

写真:Hiroko Oji

港側のファサードには17世紀のフルートが飾られています。このフルート船はヒンデローパー家の船だったもので、漁師たちが漁をする風景を伝えています。
下の空間は、かつて魚のセリが行われたところ。付属の寝そべりベンチが置かれて250年以上もその頃のまま。漁業の全盛期には、主にニシンやカタクチイワシなどが捕れました。漁師たちはここで漁船の到着を待ちながら地元の政治について話し合ったそうですが、現在漁師として残っているのはたった一人とのこと。壁にはヒンデローペンの古い紋章と説明が刻まれた銘板があります。
<閘門小屋の基本情報>
住所:Her Oost 12,8713 JP Hindelopen

スケート博物館

写真:Hiroko Oji

北部フリースランド州では、氷がしっかり張った冬の1日、11の町々を氷でつないで行われるスケートマラソンがあります。約2万人もの参加者が200キロメートルのコースを1日かけて滑る大会なのですが、最近は温暖化の為、開催が難しくなっています。
そのスケートに関しての博物館が村の中にあります。1983年に細々と始まった博物館には、歴代の大会写真やスケート靴に並んで古くは12世紀頃から使われていた馬の骨を利用したスケート靴に下駄スケートなどまで展示されており、なかなか興味深い!今ではスケートの分野で最大の博物館といえるまでになりました。

写真:Hiroko Oji

また古くからのスケート靴製造工程を、人形を使って大工仕事・鍛冶・窯元・皮作り・塗装など様々な角度から再現しているのも見応えがあります。

写真:Hiroko Oji

博物館出入り口には土産物コーナーがあり、伝統工芸であるヒンデローペン塗りの小物や家具も展示されており、購入も可能です。また併設のカフェでゆっくり一休みするのもお薦めです。
<スケート博物館の基本情報>
住所:Kleine Weide 1,8713 KZ Hindelopen
電話番号:+31-514-521-683

村で唯一の教会

写真:Hiroko Oji

村で唯一の教会は1632年にプロテスタント教会として建てられ、1658年に教会の南側の通路を追加して拡張されました。しかし、1892年に取り壊され基礎だけが残され、現在の姿はその後に再建されたものです。教会の周りはお墓になっています。
少し東側へ傾いた鐘楼の高さは40.5メートル。上部の円柱部分がわずかにずれており、塔がさらに沈むのを防ぐためのさまざまな修復工事が行われています。

写真:Hiroko Oji

教会内に入ってみると、白壁に木製の天井、とてもシンプルですっきりした内装です。

写真:Hiroko Oji

ひときわ目を惹くのは祭壇向かいにあるパイプオルガン!とても美しい装飾が施されています。
<教会の基本情報>
住所:Kerkstraat 1、8713 KG Hindelopen

訪れ甲斐のある魅力が潜むヒンデローペン

「ヒンデローペン?」「それってどこの国?」といわれるほど日本人にとっては聞きなれない村。アムステルダムからならぎりぎり日帰り訪問も可能かなというロケーションで、アクセスは1時間に一本の列車かバス、駅からも徒歩で20分はかかります。それでも、訪れてよかった!と思える魅力が村の中にはたくさん潜んでいます。
小舟の浮かぶ大小の運河沿いには美しい民家と庭、風情のある路地、海のように見えるアイセル湖畔沿いに続く遊歩道…特に見所といえるものは少なく、村そのものが見所といっても過言ではない心癒される風景がぎっしり詰まっています。オランダ北部の町レーワルデンやハルリンゲンに宿泊すれば、スタフォーレンと合わせての訪問も可能です。ぜひ少しでも長く時間をとってこの村の魅力に触れに来てください。
なお、現在は休館中の「ヒンデローペン博物館」(この村の伝統工芸であるヒンデローペン塗りの博物館)は2024年春からリニューアルオープンの予定ですので、その頃に訪問されるのもお薦めです。
2023年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

■関連MEMO
ヒンデローペン公式サイト(外部リンク)
http://www.hindeloopen.nl/
ヒンデローペン博物館(外部リンク)
https://www.museumhindeloopen.nl/
スケート博物館(外部リンク)
https://schaatsmuseum.nl/
オランダ国鉄時刻検索(外部リンク)
https://www.ns.nl/en

【トラベルjp・ナビゲーター】
Hiroko Oji

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提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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