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これは夢か幻か?奥会津「霧幻峡の渡し」は美しく儚き幻想体験

2024-03-11

奥会津の深い山々、そして幽玄に漂う川霧の中を進む一艘の渡し船。
ーこれは夢か、それとも幻か?ー
この情景を初めて見た人は、きっとそう思うことでしょう。
誰が付けたか、この船の名は「霧幻峡の渡し(むげんきょうのわたし)」。その名の通り、まるで夢か幻かのように美しくもあり、儚くもあるこの類稀なる絶景の存在が、今、じわじわと知られはじめています。

霧幻峡とは?

写真:星賢孝

霧幻峡とは、福島県の奥会津地方、金山町と三島町にまたがる只見川沿いの渓谷のこと。夏の朝晩に渓谷を漂う川霧があまりにも幻想的なため、いつからかそう呼ばれるようになった俗称で、普通の地図には記載がありません。
実際の場所はJR只見線の早戸駅の近く、早戸温泉「つるの湯」とその対岸にかつて存在した「三更(みふけ)」という集落を結ぶラインを中心とした只見川の渓谷のことをそう呼んでいます。

写真:星賢孝

この霧幻峡の特徴は、なんといってもこの幻想的な川霧。
山間部や高原に行くと朝靄や山霧はよく目にしますが、川面に漂う霧はなかなか見ることがありません。なぜ霧幻峡ではこれほど美しい川霧が見られるのでしょうか?それはここを流れる只見川にその秘密があったのです。

写真:風祭 哲哉

豊富な水量を持ち、電源開発が盛んな只見川には数多くのダムがあるため、この霧幻峡の流域も川は堰き止められ、流れはほとんどありません。そこに尾瀬などを水源とする冷たい水が流れ込むため、只見川の水温は夏でも非常に冷たいのです。そこにあたたかい空気が触れることにより、こうして大量の川霧が発生するのです。
川霧が発生しやすいのは、夏の早朝、夕刻の遅い時間ですが、気象条件によりこの光景が見られるのは年間30日程度ともいわれています。

かつての住民の足が「霧幻峡の渡し」として復活

写真:風祭 哲哉

現在、この霧幻峡では「霧幻峡の渡し」と呼ばれる渡し船が運航されています。この渡し船を復活運航させたのは、奥会津と只見線の郷土写真家、星賢孝さん。
復活運航と言ったのは、かつてここにはたくさんの渡し船が行き交っていたのです。

写真:星賢孝

この川幅の広い只見川をはさんでJR早戸駅の対岸に、かつて戸数わずか10戸ほどの三更という集落がありました。この三更では全戸が渡し舟を持ち、対岸へと渡る交通手段として住民自らが船頭となって行き来していたのです。
ところがこの奥で行われていた硫黄採掘のため三更集落の地盤が不安定となり、度重なる山崩れが発生、住民は集団で土地を移転せざるを得なくなりました。そのため最後の住民が三更を離れた1964年以来、この渡し船の運航は長い間途絶えていたのです。

写真:風祭 哲哉

そんな渡し船を復活させたのが、かつてこの三更で育ち、自ら渡し船を漕いでいた星さん。地元の企業に勤務する傍ら、地域活性化のためにこの渡し船の復活を計画、「霧幻峡プロジェクト」の中心として奔走し、2艘の船を建造、2010年に定期運航を開始したのでした。
星さんは現在も郷土写真家として活躍しながら、自らも手漕ぎの櫓を握り、この霧幻峡の渡しの船頭としてその魅力を伝えています。

「霧幻峡の渡し」基本コースはパワースポット三更集落散策も

写真:星賢孝

霧幻峡の渡しは観光用の渡し船として冬期間を除き定期運航され、1時間で渡し船の乗船と三更集落の散策をセットで楽しむことができます。
基本コースはJR早戸駅側「早戸温泉つるの湯」船着場から乗船し15分ほどかけて只見川を渡り、三更側の船着場に到着、30分ほどかつての三更の集落を散策した後、再び15分かけて渡し船で戻ります。
また、三更側の発着場に直接お越しいただければ、30分の周遊乗船と30分の散策という組み合わせにすることもできます。

写真:星賢孝

三更集落の散策は、さながら50年前の日本の原風景にタイムスリップする旅。大山祇神社や子安観音、霧幻地蔵などが廃村となった当時のまま残されています。度重なる土砂災害などから逃れたこの地蔵や神社や観音堂はパワースポットとしても注目を浴び、訪れた人の運気を上げると言われています。
集落の中心部の高台に位置し、渓谷の絶景を望む場所にあるのが霧幻地蔵。土砂崩れの際、崩壊した土砂はこの地蔵を境にしてストップし、住民全員の命を守ったことで、守り本尊として地区民の全幅の信頼を集めていたのがこのお地蔵様です。

写真:風祭 哲哉

集落の一番奥にあるのが当時の古民家を改装した建物。豪雪でも出入りができるよう、玄関を母屋と直角にして落雪を玄関両脇に落とす、典型的な雪国仕様の曲がり屋となっています。現在は個人の所有物となっていますので中に入ることはできませんが、目の前のベンチでのんびりと休憩することができます。
古民家の上にある大山祇神社は、地区唯一の社として集会や講事など全てここで行われていた場所。また当時の若者たちの唯一の逢瀬の場であったとも言われ、現在でもその痕跡が残されています。

「霧幻峡の渡し」はさまざまなアレンジも可能

写真:風祭 哲哉

「霧幻峡の渡し」は貸切での運航が基本となるため、希望によりさまざまなアレンジも可能です(1艘1時間5000円/4名まで、5名以上は追加料金)。もちろん三更の散策をせず、1時間まるまる霧幻峡の遊覧を楽しむこともできます。
船着場から下流に進むと目の前に現れるのが真っ赤な早三橋。この付近は湯の上場崖(ばっけ)と言われ、かつては住民に怖れられた巨大な断崖が続きます。
また、上流に進めば船の上からJR早戸駅や只見線の列車を眺めることもできるので、船頭さんといろいろ相談しながら船に揺られてみるのも楽しいかもしれませんね。

写真:星賢孝

この霧幻峡の渡しで特徴的なのは、自分では船に乗らず、写真撮影のために船を貸切ってしまう人もいること。もちろん貸切なので、1時間の周遊コースは自由自在。船頭さんに思い描いているカットを相談すると、それに見合ったコースに船を進めてくれるので、イメージに近い写真が撮れるかもしれませんね。
もちろんこちらは朝晩の川霧のシーンがおすすめです。

写真:風祭 哲哉

今まで「霧幻峡の渡しは川霧が魅力」と話してきましたが、たとえ川霧が出なくても、ここは素晴らしい絶景を楽しむことができる、ということを忘れずにお伝えしなくてはなりません。
山に囲まれた只見川は風の影響を受けにくいため、只見川が水鏡となって、その深山渓谷がきれいな対称となって川面に輝くシーンもたびたび目にすることができます。春の桜、初夏の新緑、秋の紅葉シーズンの美しさも川霧に勝るとも劣りません。
そう、だから川霧が発生しなくてもがっかりすることはありません。船からの景色を楽しむ分には、むしろよく晴れた日中をおすすめします。

霧幻峡の渡し 基本情報

住所:福島県大沼郡三島町早戸湯ノ平888(つるの湯 船着場)
予約・問合せ:080-1168-3959(星賢孝さん)または 0241-42-2244(奥会津観光)
営業時間:4月下旬〜11月中旬の日の出〜日没まで ※要事前予約(原則5日前まで)
アクセス:磐越自動車道会津坂下ICから国道252号で25キロ、またはJR只見線早戸駅から徒歩約15分で早戸温泉つるの湯へ ※三更側の船着場の場所についてはお問合せください。
※2018年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

■関連MEMO
霧幻峡
https://www.mugenkyo.info/
三島町観光ポータルサイト
https://www.town.mishima.fukushima.jp/site/kankou/

【トラベルjp・ナビゲーター】
風祭 哲哉

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提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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