2024-05-04
奈良時代、聖武天皇の詔により、全国に国分寺・国分尼寺が建立されたことをご存知の方も多いでしょう。紀伊国と呼ばれていた古代の和歌山県にもやはり国分寺・国分尼寺が建立されており、現在、国分寺の方は「史跡紀伊国分寺跡歴史公園」の名で保存整備がなされています。
紀伊国における国分寺はどのようなものであり、どのような形で復元されているのでしょうか。今回は「史跡紀伊国分寺跡歴史公園」をご紹介しましょう。
仏教の興隆によって国家を鎮護するという目的のもと、聖武天皇によって「国分寺建立の詔」が出されたのは、741年(天平13)のこと。以来、各地に国分寺・国分尼寺が建立されました。
古代、紀伊国と呼ばれた和歌山県では、現在の紀の川市東国分の地に紀伊国分寺が建立されました。紀伊国分寺は、中世に入ると、次第に衰微。国分寺医王院の名の小寺として余命を保ってきましたが、昭和に入って発掘調査が進められ、その規模がようやく判明しました。
創建時の寺跡は国の史跡となり、その跡地は「史跡紀伊国分寺跡歴史公園」の名で保存整備がはかられています。
発掘調査の結果、紀伊国分寺の寺域は2町(約218メートル)四方の広さを有していること、南から北に向かって「南門」「中門」「金堂」「講堂」「軒廊」「僧房」が一直線に配置され、その主軸の周辺に「塔」「鐘楼」「経蔵」が配置れていることなどが判明しました。
写真はそのうちの講堂部分を撮影した一枚。講堂の跡地には、江戸時代の1700年(元禄13)に再建された本堂(紀の川市指定有形文化財)が建てられていますが、注目したいのは、講堂の基壇部分が瓦を積み重ねて築かれていること。いわゆる「瓦積基壇」です。
瓦積基壇は朝鮮半島の寺院でしばしば見られることから、紀伊国分寺の創建に際して、古代朝鮮半島の築造技術が積極的にとり入れられていたことがうかがえます。
基壇上には、複数の礎石(建造物の柱を下から支える石)が規則的に配置されています。
現在の本堂をとりかこむように、その外側にも礎石が配置されていることから、かつての講堂は現在の本堂よりもさらに規模の大きな建造物であったことがうかがえます。
講堂跡のすぐ南側には、金堂跡が位置しています。金堂跡でもやはり瓦積基壇が復元されており、基壇上には礎石が配置されています。
金堂跡からは、複弁八葉の蓮華紋のある軒丸瓦や左右均整の唐草紋のある軒丸瓦が出土しており、720年(養老4年)、奈良の興福寺円堂(北円堂)建立時に設けられた「造興福寺仏殿司」の官窯製造の瓦と同型であることが判明しています。
こちらは塔跡。塔跡もやはり瓦積基壇でした。
画面の手前、瓦積基壇に沿うようにガラス張りの保護施設が見られますが、復元された周囲の基壇とは異なり、内部には発掘当初の瓦積基壇がそのまま保存されています。
ガラス越しにぜひその様子をご覧ください。
塔跡の礎石は、紀伊国分寺創建時の原型をそのまま残しています。
塔の中心を貫いていた心柱を支える心礎は、緑泥片岩製。その規模から、塔は七重塔であったと推測されています。
写真は経蔵跡。その名のとおり、経典を多数収蔵する施設でした。
講堂跡の北側には、僧侶たちの住まいに当たる僧房が広がっていました。
ほかの跡地とは異なり、僧房は短い木柱で礎石の配置が示されています。
中門および南門跡は、土段の形で痕跡が示されています。こちらでも礎石が配置されており、当時の門および回廊の規模をしのぶことができます。
史跡紀伊国分寺跡歴史公園に隣接するこちらの施設は「紀の川市歴史民俗資料館」。紀の川市の文化財や埋蔵文化財、小民具などが多数収蔵・展示されています。
もちろん、紀伊国分寺に関する資料も数多く展示されています。
写真は紀伊国分寺の創建当時の姿を現した模型。こちらを参考にしながら、紀伊国分寺をめぐるのも一計でしょう。
史跡紀伊国分寺跡歴史公園が、古代の紀伊国における国分寺の規模を学ぶのにいかに貴重な史跡公園であるか、おわかりいただけたでしょうか。史跡紀伊国分寺跡歴史公園を訪れ、奈良時代、聖武天皇の詔によって建立された古代の国分寺の様子をぜひご自身の目でお確かめください。
住所:和歌山県紀の川市東国分
電話番号:0736-77-0090(紀の川市歴史民俗資料館)
入園料・入館料:なし
入園時間:なし(紀の川市歴史民俗資料館の開館時間は午前9時〜午後4時/休館日は毎週月曜日・火曜日・国民の祝日の翌日・12月29日〜1月3日)
アクセス:JR下井阪駅より徒歩約10分
2024年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
■関連MEMO
史跡紀伊国分寺跡歴史公園&歴史民俗資料館―紀の川市ホームページ(外部リンク)
https://www.city.kinokawa.lg.jp/kanko/culture/kiikokubunji.html
【トラベルjp・ナビゲーター】
乾口 達司
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