2024-07-10
寛文2年創業。箱根の芦之湯に建つ老舗旅館「松坂屋本店」は、風格ある建築、湯量豊富な自家源泉掛け流しのお風呂、そして美食と多くの文人墨客に愛された歴史がたまらない魅力となっています。
箱根の良い旅館、良い温泉で思い出に残る滞在がしたいというときに、強くお勧めしたいこちらのお宿を詳しくご紹介します。
箱根温泉郷の玄関口である箱根湯本から、バスで約25分。早川に沿っていくつもカーブを曲がり、宮ノ下、小涌谷を経由してたどり着く「松坂屋本店」はどっしりとした重厚な趣きある和風旅館です。
一歩館内に歩みを進めると静けさに包まれ、窓の外に揺れる緑が別世界のように感じられます。
チェックインを行うラウンジは、まるで明治か大正時代の洋館のよう。もとはダンスホールとして使われていたスペースで、豪華なシャンデリアが過ぎ去りし日々を思わせます。
歌川広重の浮世絵にも描かれたこの宿は、木戸孝允と西郷隆盛の密談が行われた歴史の現場であり、他にも勝海舟、山岡鉄舟、副島種臣といった著名人が数多く逗留しています。
バーカウンターの壁にさりげなく掲げられた書は、山岡鉄舟と副島種臣の筆によるもの。
館内には見どころが多く、1泊では時間が足りないほど。
例えばこちらの重厚な二つの鏡は、かつて芦ノ湖畔にあった箱根離宮に飾られていたフランスより寄贈された大きな姿見。大正12年の関東大震災や昭和5年の北伊豆地震など度重なる震災で離宮の建物が倒壊したのちに、左の鏡は松坂屋本店に、右の鏡は他の旅館に下賜されました。
さらに右の鏡を所有した旅館はその後廃業し、二つの鏡は松坂屋本店にて再会。装飾の彫りの深さの違いから、左は明治天皇陛下の、右は皇后陛下のお姿を映すためのものであったと考えられています。
よく見ると右の鏡と異なり、左の鏡は菊の御紋を削り取ってあります。当時の松坂屋本店の館主が、皇室の御紋のある鏡をそのまま使わせていただくのは恐れ多いと削らせたものなのです。
写真のお部屋は芦刈荘1階の「姫沙羅」。メゾネットタイプのお部屋で、障子をあけ放つと奥に露天風呂と足湯が見えます。カップルに人気の高いお部屋です。
なお、客室棟は、明治時代に建築された鶴鳴館、定員1〜2名の芦刈荘、定員1〜4名の芝蘭荘、岩崎家別邸を移築した春風荘、元皇室の別荘であった離れの全5棟。鶴鳴館の4室と、芦刈荘の松風を除きどのお部屋にも温泉のお風呂が付いています。
現在は春風荘と離れは工事中ですが、これも新しく立て直すのではなく、伝統的な元の建物を残しつつ修繕しています。
こうした貴重な建築に泊まることができるということ自体が、松坂屋本店のこのうえない魅力ともいえます。
こちらは「姫沙羅」の隣の「芦笛」のお部屋の露天風呂。松坂屋本店は露天風呂付きのお部屋も多く、おこもり滞在をしたい時にもぴったりです。
もう一つお部屋を紹介します。こちらは芝蘭荘の「若紫」。芝蘭荘のお部屋の名前は全て源氏物語にちなんでいます。
松坂屋本店の温泉は自家源泉。泉質は美肌効果が期待できる弱アルカリ性の、含硫黄―カルシウム・ナトリウム・マグネシウム―硫酸塩・炭酸水素塩泉。
メラニンを分解してシミを予防してくれる硫黄泉、肌のクレンジングをしてくれる炭酸水素塩泉、そして肌を保湿してくれる硫酸塩泉の3つの泉質が全てそろっているうえに、美肌サポート物質として注目されているメタケイ酸の含有量も多く、まさに理想的な美肌の湯といえます。
その極上の温泉をたっぷり堪能できるのが、2023年にリニューアルした大浴場の権現の湯。
画像で浴槽の底の模様に見える白いものは、全て沈殿した湯の花です。
実はこちらの温泉は非常に湯の花が多く、温泉をよく知らない海外の方にはティッシュが底に沈んでいるとびっくりされることもあるのだとか。それほどにインパクトがあります。
しかし湯の花が多いということは、配管が詰まりやすいということでもあります。そのため毎日湯口の湯量を測り、詰まり具合を計測し、毎週月曜日の昼間にタンクの清掃を行うため、特に月曜日の午後には、流れてきた湯の花で白濁した温泉が楽しめることが多いのです。
もうひとつ、松坂屋本店の温泉が素晴らしいのは、循環していないのはもちろん、加水加熱をせず湯量の調節だけで入浴に適した温度にしていること。温泉の劣化を極力とどめて、ベストな状態で入浴できるようにしてあるのです。
大浴場は夜に男湯と女湯が入れ替わるので、宿泊したらぜひ夕と朝に入ってみてください。
夕食は「宿場会席」と名付けられています。箱根は江戸時代においては東海道五十三次の宿場町として栄えた歴史があり、急峻な難所であった箱根を越えるため、参勤交代の行列など多くの旅人がこの地で羽を休めたことでしょう。
その当時をイメージした創作和食が松坂屋本店で食べられます。
足柄産の山女、小田原産の下中たまねぎ、静岡産の海産物や枝豆、箱根大平台の名水「姫の水」を使って作り上げた湯葉など、材料の多くも地元や隣接する静岡県から取り寄せたもの。
箱根は山だという先入観がありますが、実は一山超えれば静岡県の駿河湾。海産物も鮮度の良い一級品がそろいます。
お料理のひとつひとつが繊細で調味料にもこだわりが感じられるもの。足柄牛の陶板焼きは、卓上でコンロに火をつけアツアツをいただきます。
一方朝食は「旅人朝食」として、これから箱根越えをする人でもしっかり力が出せるようなメニュー。
コトコトとお湯の中で踊る鍋物のお豆腐は、箱根の名店、箱根銀豆腐の桶豆腐。端を使わず美味しい真ん中の部分だけを使っています。
一夜干しの金目鯛も大きさにびっくり。身もふっくらとして食べ応え抜群。
ご飯は麦入りで、南足柄産の自然薯を自分ですり下ろして掛けると、つるつるとのど越しよく何杯でも食べられそうです。
※夕食・朝食ともにメニューは季節やプランで変更になります。
雰囲気の良い大浴場「権現の湯」は広々として露天風呂付き、一部のお部屋を除き多くのお部屋に温泉のお風呂が付いている…これだけでも温泉を満喫するには十分すぎるのに、なんと松坂屋本店にはこのほかに5つも貸切露天風呂があるのです。
しかもこの貸切露天風呂、宿泊者は空いていれば何回でも利用できると聞けば、贅沢さに驚きが止まりません。
貸切風呂全体は「万右衛門の湯」と呼ばれ、5つの貸切風呂はそれぞれ「兵蔵」「忠蔵」「金左衛門」「清右衛門」「平兵衛」と名付けられています。
1回の利用時間は45分間。フロントで鍵を借りてから向かいます。
こちらのお風呂は浴槽の縁が比較的フラットな「平兵衛」のお風呂。
5つの貸切露天風呂は露天風呂だけでなく、それぞれ屋内のシャワールームと湯上りに大人2人ぐらいは余裕でごろごろできる大きなソファーが備え付けられています。
こちらの露天風呂は「忠蔵」。埋め込みタイプの浴槽であった「平兵衛」と異なり、縁の持ち上がった据え置きタイプの浴槽です。
お湯が少し熱い場合は、自分で水を足すこともできます。
ここまで松坂屋本店の魅力について様々な角度から紹介してきましたが、まだまだ書き足りないことがたくさんあります。
その一つはラウンジのフリードリンク。利用時間は15時〜22時と7時〜12時。夕方から夜はワイン、ビール、日本酒(地元の箱根山)、焼酎とソフトドリンクが飲み放題。朝はアルコールは姿を消し、牛乳が追加されていました。
こちらのドリンクをグラスにそそぎ、ラウンジまたはバースペースで傾ければ、このうえない極上のくつろぎタイムとなること間違いなしです!
箱根で伝統を感じる老舗旅館に滞在し、源泉掛け流しのお風呂三昧、美食と優雅なバータイムを過ごしたければ、ぜひ松坂屋本店を訪ねてみてください。
2024年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
取材協力:松坂屋本店
■関連MEMO
松坂屋本店(外部リンク)
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【トラベルjp・ナビゲーター】
泉 よしか
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