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野原に埋もれる列車と木造駅舎!岡山県北の因美線でレトロな鉄旅へ

2023-03-23

近年ではJR三江線の廃線などがありましたが、中国地方には他にも幾つか、郷愁溢れる山間の風景の中をひた走る内陸部のローカル線が存在します。
JR因美線がそのひとつで、年に1〜2回開催される「みまさかスローライフ列車」のツアーも人気ですが、ツアー日以外でまったりのんびりと路線の魅力を味わうのも一興でしょう。
鉄道ファンのみならず、レトロ好き、写真好きの方にもおすすめしたい因美線の見所をご案内します!

JR因美線とは

写真:小々石 曲允子

JR因美(いんび)線は、鳥取駅から岡山県津山市の東津山駅までの区間70.8kmを結ぶローカル線で、1919(大正8)年12月に開業、1932(昭和7)年7月に全開通しました。
因美線の名は、鳥取県東部の旧国名「因幡(いなば)」と岡山県北東部の旧国名である「美作(みまさか)」の頭文字から。
山深い県境付近、山麓に広がる田畑の景観など、日本の原風景である山里の風景がほぼ全線に渡って続く路線です。

写真:小々石 曲允子

非電化のディーゼル気動車が走る路線であること、イベント時を除き基本は1両のみのワンマン運行であること(岡山県北ー鳥取県南の区間)、2、3時間に1本という少ない運行本数、沿線の大半の駅が無人駅であることなど、都市に暮らす人間にとっては別世界のような鉄道事情ではありますが、その分、日常の慌ただしさから逃れてのんびりと旅を楽しむには最高とも言える路線です。
(2023年3月現在、岡山県側の各駅からは鳥取駅までの運行はされておらず、鳥取県南部の智頭(ちず)駅までの運行となっています。)

写真:小々石 曲允子

草むらに埋もれて進む列車の姿が愛しい!美作河井駅

写真:小々石 曲允子

因美線は鉄道開業当時からの木造駅舎が多く残っていることが大きな特色です。沿線内で岡山県最北端に位置する駅、美作河井(みまさかかわい)駅もそのひとつで、1931(昭和6)年の開業当初からの駅舎が今も現役で使用されています。
県境の峠に近く、山懐に抱かれてポツンと佇んでいるかのような小さな無人駅は、秘境駅ムードたっぷり。
鄙(ひな)びた駅舎と共にノスタルジックなムードを高めてくれているのが、傍らに残るかつての手動転車台と今ではもう使われていない線路跡でしょうか。

写真:小々石 曲允子

手動転車台は、冬場に鳥取方面からやってくる除雪車の向きを変えるために使用されていたもので、使われなくなって土中に埋められていたものを2007(平成19)年に鉄道ファンの協力を得て発掘、2009(平成21)年には近代化産業遺産の認定を受けました。
明治時代に日本で最初に鉄道が開業した東京・新橋駅にあったものと同サイズの輸入品で、完全な形で残っているのはもうここだけという国内的にも非常に貴重な鉄道遺産。
一方、駅舎からホームに渡る間にある線路跡は、上下の列車がすれ違う複線のホームだった時代に使用されていたもの。急行列車の停車駅でもあった時代の名残が、長い直線ホームと線路跡からもうかがえます。

写真:小々石 曲允子

そして、美作河井駅で下車したらもうひとつ見逃してほしくないのが、ホームから南の方向に見えるこの風景。
1両だけの小さな列車が背丈の高いススキの群生の中に埋もれていくようにも見え、どこか健気(けなげ)で幻想的とさえ感じられる光景でもあります。
ススキの季節である秋以外の季節でも、草むらをかき分けて進んでいく列車の姿を見ることができますよ!
<基本情報>
住所:岡山県津山市加茂町山下51
アクセス : JR津山駅より、因美線鳥取方面行きの列車に乗車約40分(7駅目)

「寅さん」にも登場の有名レトロ駅舎!美作滝尾駅

写真:小々石 曲允子

津山駅から出発すると3駅目に位置する美作滝尾駅は、因美線に1928(昭和3)年に開業した駅。
開業当時から残る駅舎は、2008(平成20)年に国の登録有形文化財に登録されました。駅舎自体が歴史的価値を有する、沿線でも名の知られた駅となっています。

写真:小々石 曲允子

この駅が全国的に有名になったきっかけは、昭和を代表する名作映画「男はつらいよ」シリーズの最終作のロケ地になったこと。主役の寅さんが登場する冒頭シーンがここ美作滝尾駅で撮影されました。
山田洋次監督が事前のロケハンの際に「寅さんと共に日本中の駅を見てきましたが、美作滝尾駅ほど美しい駅は、もう日本のどこにもありません。・・・」と駅あてに残した手紙が現在も保管されていて、イベント時など駅の事務室が開放された際に公開されることがあります。

写真:小々石 曲允子

その外観だけでなく、出札口、窓口跡や表示看板、ベンチ、また事務室内に置かれた机や椅子、柱時計に至るまで駅内にあるものの大半が昭和初期から変わらぬ状態で現存しており、そのせいか、随分前に無人駅になってしまった駅とは思えないような温かな気配が今でも感じられます。
初めてここを訪れる人をも故郷のような懐かしさで包んでくれる、素朴ながらも美しい佇まいの駅舎です。
<基本情報>
住所:岡山県津山市堀坂263
アクセス : JR津山駅より、因美線鳥取方面行きの列車に乗車約15分(3駅目)

扇形機関車庫に国鉄時代の名車両が!「津山まなびの鉄道館」

写真:小々石 曲允子

津山まなびの鉄道館は、JR津山駅の構内に2016(平成28)年に開館した鉄道博物館で、開館以来、鉄道ファンや家族連れなどで賑わっています。
中でも扇形機関車庫は、京都鉄道博物館の扇形車庫に次ぐ国内2位の規模を誇ると共に近代化産業遺産にも指定されており、D51などのSLのほか、キハ58系気動車など国鉄時代に因美線で活躍した車両を含む懐かしい列車が展示されています。
車庫前の転車台は岡山県内に唯一残る現役の転車台で、全国的にも貴重なものであるとのこと。回転実演イベントも時々開催されています。

写真:小々石 曲允子

また、館内には、昔、沿線の駅で使用されていた切符や鉄道運行用の手動装置、列車や駅名のプレートなどの年代物の収蔵品・資料が展示されており、往時を知る人間にとっては非常に懐かしく、また知らない人にとっても古き良き時代の鉄道ノスタルジーを味わえる内容となっています。
因美線に乗る前の予習、また情報収集を兼ねて立ち寄るのにもおすすめの施設です。
<基本情報>
住所:岡山県津山市大谷
開館時間:9:00〜16:00(最終入館受付は閉館時刻の30分前まで)
休館日 : 月曜日(祝日の場合はその翌日)、12月29日〜12月31日
アクセス : JR津山駅より徒歩約10分

因美線は、日本の原風景が残る国内屈指のローカル線

因美線には他に、マンガ/アニメ「のんのんびより」の舞台とされ、やはり開業当初からの木造駅舎が残る知和駅などもあります。
目立った絶景はありませんが、古い木造駅舎や車窓に見える山里の風景など懐かしい日本の原風景を今でも沿線の大半で満喫できるという点では、因美線は国内屈指の魅力度を誇るローカル線と言えると思います。
列車の運行本数が少ないので、上手に計画を立てて是非ノスタルジックな旅を満喫して下さいね! 鳥取県側の智頭駅まで乗ると、関西や鳥取方面へのアクセスに便利な智頭急行も出ています。時間帯によっては特急列車にも乗れますよ。
2023年3月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください

■関連MEMO
つやま小旅 津山市公式観光サイト(外部リンク)
http://www.tsuyamakan.jp/tour/
津山まなびの鉄道館(外部リンク)
http://www.tsuyamakan.jp/manabi/
のサムハラ発祥の地!岡山県サムハラ神社奥の宮、神秘の源を訪ねる
https://www.travel.co.jp/guide/article/29810/

【トラベルjp・ナビゲーター】
小々石 曲允子

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提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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