2022-11-10
狛犬といえば、参道の両脇にあって神殿を守る神獣として、ご存知の方も多いでしょう。しかし、滋賀県には珍しいお姿をした狛犬の鎮座する神社があります。野洲市の「兵主大社(ひょうずたいしゃ)」です。兵主大社の狛犬は何と包帯でぐるぐるに巻かれているのです!その痛々しいお姿にはいったいどのようなわけがあるのでしょうか?今回はそんな謎の狛犬の鎮座する兵主大社をご紹介しましょう。
兵主大社は滋賀県野洲市に鎮座する神社。八千矛神(やちほこのかみ)を主祭神とする式内社で、社伝によれば、景行天皇の時代、大和国の穴師の地にまつられていた社(現在の穴師坐兵主神社)が近江国に遷座し、欽明天皇の時代に現在の地に社殿が造営されたのがはじまりであると伝えられています。中世にはとりわけ武士の崇敬を集め、源頼朝や足利尊氏によって社殿の造営もなされており、兵主大社が近江国にあって重要な位置を占めて来たかがうかがえます。
写真は本殿。一間社切妻造の神殿で、野洲市指定文化財となっています。
こちらは本殿の前に立つ拝殿。珍しいのは、中央の一棟の左右に翼楼がついていること。1842年(天保13)に建立されたものです。
拝殿の前には、一対の狛犬が鎮座しています。その狛犬の姿はご覧のとおり。満身創痍という言葉がぴったりの包帯姿!何とも痛々しいですよね。
しかし、この白い帯、実は包帯ではありません。これは「祈祷布」と呼ばれる祈祷用の布。特に手や足腰などに病のある人がこれを狛犬の該当箇所に巻きつけることで病が治ると信じられています。包帯を巻きつけているかのようなお姿には、そのようなご利益があるとされているわけです。
民間信仰に狛犬が活用されている珍しい事例ゆえ、兵主大社に参拝の折はお見逃しなく。
祈祷布は拝殿前に置かれており、初穂料を納めると、誰でも狛犬に巻き付けることができます。
まずは備え付けのマジックインクで祈祷布に願い事を記しましょう。
祈祷布に願い事を書いた後は、願い事と関係のある狛犬の部位にそれを縛り付けるだけ。身体に不具合を感じていらっしゃる方は、祈祷布を奉納してみませんか?
本殿の脇には、平安時代末期に造営されたと考えられている庭園が広がっています。庭園の中央には広い池があり、庭園は池を中心にして広がっています。いわゆる池泉廻遊式の庭園で、中央には石橋もかかっています。風情のある光景ですよ。
庭園は国の名勝となっているほどの貴重なもの。あわせて拝観しましょう。
庭園は参道と平行するように東西に長く伸びています。石垣の向こうに見える参道沿いの高い木立もその一部。見応えのある庭園ゆえ、ゆっくり散策してみてはいかがでしょうか。
拝殿と並び、境内の建物で珍しいのは、1550年(天文19)に建立された楼門。左右に翼廊のついた珍しい四脚門で、現在は滋賀県指定有形文化財となっています。
翼廊の軒下にはそれぞれ神さまの名前のついた額が掲げられており、兵主大社にはたくさんの神さまがまつられていることがうかがえます。
楼門では、下層部の軒に見られるご覧の建築部材に注目しましょう。これは「蛙股(かえるまた)」と呼ばれる部材ですが、そこには珍しい巴紋が見られます。ほかには亀甲紋も見られ、1766年(明和3)の墨書があることから、楼門はその時期に改修されたと考えられています。
楼門の脇には、乙殿神社と呼ばれる摂社が鎮座しています。こちらの祭神は稲背入彦命。農地開田の神さまであり、摂社のなかでも第一の存在と位置付けられています。
広い境内を歩くと疲れてしまいますよね。社務所に隣接するこちらの棟にはベンチや自動販売機も置かれているため、疲れたときはこちらを利用しましょう。
いかがでしたか?兵主大社がいかに珍しい神社であるか、おわかりいただけたでしょうか。祈祷布姿の珍しい狛犬や名勝の庭園など、見どころ満載の兵主大社をご堪能ください。
住所:滋賀県野洲市五条566
電話番号:077-589-2072
アクセス:JR琵琶湖線「野洲駅」よりバスで約15分。「兵主大社前」下車
2022年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
■関連MEMO
兵主大社-滋賀県観光情報(外部リンク)
https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/178
【トラベルjp・ナビゲーター】
乾口 達司
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