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手に汗握る大捕り物!奈良の秋を彩る「鹿の角きり」

2022-09-16

秋になると、奈良市ではさまざまな行事や祭礼がもよおされます。とりわけ、ご覧いただきたいのが、春日大社の境内の一角でもよおされる「鹿の角きり」。逃げまわる鹿をつかまえ、その角を切り落とすさまは迫力満点!今回は奈良の秋を彩る恒例行事「鹿の角きり」をご紹介しましょう。

鹿苑でもよおされる「鹿の角きり」

写真:乾口 達司

「鹿の角きり」は、毎年10月にとりおこなわれる奈良の恒例行事。その名のとおり、奈良の顔というべき鹿の角を切り落とす様子を観覧する行事です。
「角きり」の起源は江戸時代にまでさかのぼります。春日大社の門前町として栄えた奈良において、鹿は神さまの使いとして大切にあつかわれて来ました。しかし、そのことが災いして、奈良に暮らす人が角を生やした雄鹿に危害を加えられるといった事故が多発。事故を未然に防ぐため、1672年(寛文12)、奈良奉行・溝口信勝の命によって「角きり」がはじめられます。当時は街中でおこなわれていましたが、1929年(昭和4)以降は春日大社の神域にある現会場の「鹿苑」でもよおされています。
写真はその会場となる鹿苑内の「角きり場」。鹿苑は春日大社の参道脇にあり、普段は傷を負った鹿の保護や治療などをおこなっている施設。ここで、一日数回、「角きり」がおこなわれます(入れ替え制)。当日は入場料を支払って鹿苑に入ることになりますが、大勢の観客が来場するため、ときには入場制限がなされることもあります。時間に余裕をもって訪れましょう。

写真:乾口 達司

観客は西側に設置された観覧席にすわり、眼下の「角きり場」を見下ろす形で観覧します。

入場する勢子や鹿

写真:乾口 達司

時間になると、「角きり場」にまず「勢子(せこ)」が現れます。勢子とは、鹿を追い込んだり、捕まえたりする人たちのこと。鉢巻きを巻き、法被を着ています。良く見ると、手にしているものに違いがあることがおわかりいただけるでしょう。持ちものの違いが役割の違いを示しています。

写真:乾口 達司

こちらの勢子が手にしているのは「十字(じゅうじ)」。「十字」は、その名のとおり、割られた竹を十字に組み合わせ、そこに縄を掛けた道具。「十字」を鹿の角目がけて投げつけ、角に引っ掛けて鹿を捕獲します。

写真:乾口 達司

さあ、いよいよ鹿の登場です。角をはやしているのは雄鹿。繁殖期に当たる秋は雄鹿の気性が特に荒く、角によって危害を加えやすい時期なのです。
「角きり場」に入って来た雄鹿は、当然、興奮状態。「角きり場」を猛スピードで走りまわります。

大興奮の大捕り物!鹿が捕獲される過程

写真:乾口 達司

鹿が入場すると、太鼓が響きわたり、いよいよ角きりのスタートです。赤旗を持った追い込み役の勢子たちが隊列を組んで、興奮して暴れまわる鹿を確実に追い込んでいきます。まさに大興奮の大捕り物!観客も歓声をあげて大捕り物を見守ります。

写真:乾口 達司

鹿は隊列を組んだ追い込み役の作った隙間から逃げようとしますが、次の瞬間、先ほどご紹介した「十字」が鹿を目掛けて投げつけられます。「十字」からはずれた綱が鹿の角に引っ掛かると、勢子たちはその綱を握り、写真の丸太の杭へ綱を巻き付け、鹿を次第に手繰り寄せていきます。この杭は「台付け」と呼ばれています。

写真:乾口 達司

鹿は最終的に「台付け」の根元でねじ伏せられます。ねじ伏せられた鹿は勢子たちに手足や身体をつかまれ、地面に敷かれたゴザまで運ばれます。

角が切られる様子

写真:乾口 達司

鹿が筵に寝かされると、いよいよ角を切る役目の神官が登場します。
ここで注目したいのは、こちらのシーン。神官が押さえつけられた鹿の口元に瓶を近づけているのが、おわかりいただけるでしょう。瓶には水が入っており、水を飲ませることで、鹿の興奮を静めようとするわけです。こういった細かな演出もお見逃しなく。

写真:乾口 達司

水を飲ませた後はノコギリで角を切り落とします。先ほどまで暴れていた鹿も遂に観念したのか、角が切り落とされるまでおとなしくしています。
ちなみに、角は毎年生え代わります。春に生えはじめた角も、この時期になると内部に神経や血管は通っておらず、出血も痛みありませんので、ご心配なく。

写真:乾口 達司

見事、左右両方の角が切られると、神官は角を高々と持ち上げます。鹿は解放され、何事もなかったかのように、角きり場の芝をはんでいます。これで一連の過程は終了。同じことがもう一頭の鹿にもほどこされ、角きりは終了します。

こちらもお見逃しなく!苑内の展示スペース

写真:乾口 達司

角きり場の横には展示ブースがあり、勢子の着る法被や「十字」を間近でご覧いただけます。

写真:乾口 達司

会場である鹿苑は鹿の保護や治療をおこなう施設であるため、奈良の鹿に関するさまざまな情報も展示されています。
写真はいったい何だと思いますか?実はこれ、鹿の胃袋から出て来たビニールの断片なのです。観光客が捨てたビニールを食べた鹿はビニールを消化することが出来ず、お腹にためてしまうのです。その結果、お腹を壊したり、最悪の場合、死んでしまうこともあるため、食事などで出たゴミは必ずゴミ箱に捨てるか、持ち帰りましょう。

写真:乾口 達司

ほかにも、奈良の鹿をモチーフにした特産品も販売されています。記念に買い求めてみてはいかがでしょうか。

「鹿の角きり」の基本情報

「鹿の角きり」がどういった行事か、おわかりいただけたでしょうか。奈良ならではの行事であるため、この機会に奈良を訪れ、手に汗握る大捕り物をご覧ください。
2023年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

【トラベルjp・ナビゲーター】
乾口 達司

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提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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