2023-10-03
奈良市の世界遺産・春日大社の一角に「萬葉植物園」と呼ばれる植物園があります。萬葉植物園では『萬葉集』にちなんだ季節の草花を楽しめますが、そんな園内で、毎年11月3日の文化の日におこなわれる行事があります。「文化の日萬葉雅楽会」です。その名のとおり、大陸伝来の雅楽や舞楽を誰でも気軽に楽しめる行事で、異国情緒あふれる世界に見るものをいざないます。今月は「文化の日萬葉雅楽会」の魅力をお伝えしましょう。
「文化の日萬葉雅楽会」は、毎年11月3日、春日大社の境内の一角にある「萬葉植物園(まんようしょくぶつえん)」でとりおこなわれます。5月5日のこどもの日にもよおされる「子供の日萬葉雅楽会」とともに、萬葉植物園を代表する恒例行事ですが、植物園の恒例行事が、古代に伝来した舞楽や雅楽とは、いかにも奈良らしいと思いませんか?
会場となる萬葉植物園は『萬葉集』に詠まれた植物を栽培する施設で、1932年、春日大社の境内に開園しました。『萬葉集』にちなんだ植物を栽培している植物園としてはもっとも古く、その規模はおよそ9000坪にもおよびます。
「文化の日萬葉雅楽会」は、園内の池に張り出した浮き舞台でおこなわれます。観客は対岸の正面および側面から舞楽を観賞することになります。
舞台の背後には、雅楽を演奏する「南都楽所(なんとがくそ)」の方々がひかえています。ここからもおわかりのように、「文化の日萬葉雅楽会」における舞楽は、彼らの生演奏によって舞われるのです。「笙(しょう)」や「篳篥(ひちりき)」など、大陸伝来の珍しい楽器を堪能する機会はなかなかありません。その独特の音色や異国情緒たっぷりのハーモニーもご堪能ください。
定刻になると、雅楽のみを演奏する管弦の部に引き続き、舞楽がはじまります。
最初に演じられるのは「振鉾(えんぶ)」。読んで字のごとく、舞い手が鉾を手にして舞います。公演の最初に演じられる演目で、鉾によって舞台を清め、これから次々に演じられる舞楽の露払い役をになっています。
こちらは「万歳楽(まんざいらく)」。鳳凰が賢王の治世を寿ぐという中国の伝承に由来することから、おめでたい演目とされています。
先ほど演じられた「振鉾」の衣装と色彩が異なっていることにお気づきになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
舞楽には朝鮮半島などの北方から伝来した「高麗楽(こまがく)」と中国や東南アジア、インドなどから伝来した「唐楽(とうがく)」の2種類があるとされ、「高麗楽」は緑や青、「唐楽」は赤やオレンジの系統の衣装をそれぞれ身にまとっているのです。そのあたりのことも踏まえながら、舞い手の衣装もご覧ください。
こちらは高麗楽の「地久(ちきゅう)」。四人で舞う演目で、舞い手は仮面をつけています。
舞い手の仮面をよく見ると、顔面が赤々としており、大きくて高い鼻を持っていることがわかりますね。その表情は温和そのものですが、その面相からも「地久」が異国の人を主人公とした舞いであることがわかります。
こちらは唐楽の「還城楽(げんじょうらく)」です。ご覧のような一人舞で、ヘビを好んだ西域の民がヘビを見つけて喜び、捕獲して持ち帰るさまを表した演目です。
ヘビと対峙し、捕獲後はそのことを喜ぶさまが躍動感あふれる動作で表されます。こういった動きの激しい演目は「走舞(はしりまい)」と呼ばれており、とりわけ人気のある演目の一つです。
舞楽の終演後は広い園内を散策し、『萬葉集』にちなんださまざまな植物を観賞しましょう。
秋といえば、やはりススキ。首部を垂れる穂が風に揺れると、あたかも手招きされているかのような錯覚をおぼえますよ。
こちらは真っ赤なケイトウ(鶏頭)の花。ケイトウは熱帯地方の原産で、日本には早くも奈良時代には伝来していました。『萬葉集』には「韓藍」の名で歌に詠まれています。意外に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
11月初旬には、早くも赤く色づく樹木が見られます。紅葉とセットで舞楽を観賞するのも、旅の良い思い出となることでしょう。
「文化の日萬葉雅楽会」がいかに魅力的な行事であるか、おわかりいただけたでしょうか。当日は萬葉植物園の入園料だけで誰でも気軽に観覧することができるため、この機会に異国情緒たっぷりの雅な世界をご堪能ください。
※演目は毎年変わります。
2023年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
【トラベルjp・ナビゲーター】
乾口 達司
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