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性教育っていつから何をどう教えるべき? 【産婦人科医 サッコ先生に聞く!】(前編)

「赤ちゃんってどうやってできるの?」そんな子どもからの無邪気な質問にドキッとした経験があるママパパは少なくないのではないでしょうか。

最近では、性教育は学校だけに頼らず、家庭でもおこなうものという認識が広まりつつあります。でも、いつどうやって何を教えたらいいのでしょう?

からだこころ研究所
「サッコ先生と! からだこころ研究所 小学生と考える『性ってなに?』(リトルモア刊)」の著者で、全国の小・中学校等で年間120回以上も性教育の講演をおこなっている、産婦人科医の高橋幸子先生(通称サッコ先生)にお聞きしました。
高橋幸子先生 プロフィール
埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター/産婦人科医。日本家族計画協会クリニック非常勤医師。彩の国思春期教育会西部支部会長。NHK「あさイチ」「ハートネットTV」「夏休み!ラジオ保健室〜10代の性 悩み相談〜」に出演、AbemaTVドラマ「17.3 about a sex」、ピル情報の総合サイト「ピルにゃん」、家庭でできる性教育サイト「命育」を監修するなど、性教育の普及や啓発に尽力する。
HP: https://sakko0607.wixsite.com/sakko

■性教育とは、自分らしく生きることを学ぶこと

?? そろそろ性教育を始めた方がいいのかなと思っているのですが、いつ頃から、どのタイミングで、どう伝えるのがいいのでしょうか?

いつから…という前に、そもそも「性教育」って何だと思いますか? 性教育というと、性器や赤ちゃんがどうやって生まれるかという性交について目が行きがちですが、じつは人権教育であり「性の多様性」を学ぶことでもあるのです。

具体的にいうと、性別には以下の4つがあります。
体の性
生まれたときに割り当てられた性で、男性器がついていたら男性、女性器がついていたら女性。

心の性
自分のことを男性と思っているか、女性と思っているか、どちらもか、それ以外か。

好きになる性
男性を好きになるか、女性を好きになるか、どちらもか、好きになるのに性別は関係ないか。

表現する性
他の人から男性に見える姿で生きたいか、女性に見える姿で生きたいか、どちらにもとらわれない姿で生きたいか。

この4つすべてが同じ性になるとは限りません。生まれたときにわかるのは体の性だけ。将来その子がどんな格好をして誰を好きになってどんな風に生きていくかは、その子自身が自由に決めるもの。

ひとつだけいえるのは、どの性もあなた自身そのものだということ。性という漢字は、心を意味する“りっしんべん”と“生”から成り立ちますよね。心を持って生きる、つまり性とは自分らしく生きることです。

体も心も全部自分だけの大切なものだから、他の人に無断で入り込ませてはいけないよというのが性教育なんです。


■自分の体の大切さを伝えることから始めよう!

(c) polkadot - stock.adobe.com


?? なるほど! 自分自身を大切にすることから性教育が始まるということですね。具体的には何を教えていけばいいのでしょうか?

まずは、自分の体は自分だけの大切なものなんだと伝えること。その上で、“水着で隠れるところ”“唇”「プライベートゾーン」なので、とくに他人が許可なく触れてはいけない大切な場所だというのを、繰り返し伝えていくことです。

お風呂で体を洗うときなどが伝えやすいですね。日常の中で親御さん自身もそのことを意識して、子どもの体に触れるときには「体を洗うから触るね」と許可を取ることが必要です。

また、プライベートゾーンだけでなく、頭のてっぺんからつま先まですべてがあなた自身の大切なものと伝えることが大事。自分の体を大切にすることが自己肯定感につながり、ひいては自分と周りの人の体と心を守ることにつながります。

■性教育は早ければ早いほどいい理由

(c) milatas - stock.adobe.com


?? 自分の体を大切にすることやプライベートゾーンについては、何歳頃から伝えた方がいいですか?

性被害を予防するという観点でいうと、早ければ早いほどいいです。

というのも、私が診察した性被害にあった子の中には、4〜5歳で尖形コンジローマという性感染症をもらってしまったり、7歳と10歳の姉妹が20歳の兄から性的虐待を受けていたという事例があるんです。そのときは7歳の妹がプライベートゾーンという言葉を学んでいて、母親に報告したことで事件が発覚しました。

他人がプライベートゾーンに触れるのはおかしい、自分の体は自分のものだということを早いうちから知っておけば、防げることもあるし、被害をいち早く知らせることもできる。

2歳位ならプライベートゾーンが水着で隠れるところと唇で、勝手に見たり触ったりしてはいけないという話は理解できると思います。


■子どもからのドキッとする質問への答え方

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?? たしかに2〜3歳になると自分の体への興味も出てきて、おちんちんを触ったりすることも出てきますよね。その場合、親はどう声がけをしたらいいのでしょう?

恥ずかしいから触ってはいけないというのではなく、自分の体を触るのが気持ちいいことはわかっているけれど、プライベートなところだから人前ではしないんだよと伝えることが大事です。

というのも、小さな頃に親から性器を触ってはいけないといわれて育ったために、中学生になってもマスターベーションできないという子もいるんです。著書ではマスターベーションのことを“セルフプレジャー”といっていますが、悪いことでも恥ずかしいことでもないので、触ってはいけないという伝え方はNG。

手をキレイにしてから、誰もいないところで自分の体を触るのは自由だよと伝えるといいですね。

?? プライベートゾーンは他人に許可なく見られてもいけないし、見せてもいけないということですね。子どもが面白がって人前でおちんちん!と叫んでしまうのも当然NGですよね?

これも先ほどと同じように、プライベートゾーンのことを話したり聞いたりすることはいけないことや恥ずかしいことではないけれど、プライベートなことだから人前でするとイヤな気持ちになる人もいるし、マナー違反だよと伝える必要があります。

幼い子の軽口くらい別にいいじゃないかと思うかもしれませんが、小児性愛者はこういう無防備な子どもを狙います。なぜならそういう発言をしている子に 対して「おちんちんがどうしたの?」と話しかけやすくなるからです。親御さんはこういう些細なことから性被害にあう可能性が高くなることを知っておいた方がいいですね。

子どもにプライベートゾーンについての認識を持たせることは、一度で習慣づけられることではありません。日常の中で何度も繰り返し伝えてみてください。

■幼い子に性交についてどこまで伝えるか問題

?? お話が上手になったり、ママが下の子を妊娠したりすると、「赤ちゃんってどういう風にできるの?」と質問される機会も増えます。どう答えればいいでしょう?

早い子だと2〜3歳で聞いてくると伺います。一番いけないのは、橋の下で拾ってきたとか、コウノトリが運んできたとかごまかしてしまうこと。ゆくゆく事実と違うとわかったときに、こういう話は親の前でしちゃいけないんだと考え、思春期を迎えてから何かあったときに親に性について相談しづらくなってしまいます。

2〜3歳なら、パパの体の中に赤ちゃんのもとが半分あって、ママの体の中にもう半分あって、それがくっついてできたんだよ、というくらいでいいと思います。


著書の中では「赤ちゃんが生まれる3つの科学」のパートで、赤ちゃんの通り道である膣や性交についてもわかりやすく説明しています。


?? その先に「赤ちゃんのもとはどうやって届けるの?」と聞かれたときにはどう答えればいいでしょうか?

それは、性交について伝えるかどうかということですよね。そもそも聞かれたときに戸惑うのは、親御さん自身が性交(=ここでは性器の挿入)を恥ずかしいこと、伝えちゃいけないことという先入観があるから。赤ちゃんができるしくみを伝えるときに性的な興奮について説明する必要はないので、パパのおちんちんを使ってママの膣(ちつ)というところに届けるんだよ、と答えて問題はありません。

もし「それって気持ちいいの?」と聞かれたときは、「お風呂の湯船に入るのは気持ちいいよね」などの前置きをして、「安心できるパートナーとだったら、とっても気持ちいいことなんだよ」と付け足します。

もし、何の準備もしていなくて返答に困ったら「必ず答えてあげるからちょっと待っていてね」と先延ばしにしても大丈夫。いまはいい絵本なども出ているので、後でそういうものを用意していっしょに読んでもいいですね。


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性教育=自分らしく生きることを学ぶというのは目からうろこでした。そして、できるだけ早いうちからプライベートゾーンについて知ることが大切だということがわかりました。

では、幼少期を過ぎてしまっていたらどうしたらいいのでしょう? また、性被害にあわないために親ができることや、万が一、わが子が性被害にあってしまったときにすべきこととは? 後編に続きます。

サッコ先生と! からだこころ研究所 小学生と考える『性ってなに?』(リトルモア刊)

小学生が自分で読んで学べる性教育の新しい教科書。サッコ先生がときどき質問を投げかけたりしながら、体のしくみや性について楽しくポイジティブに学べます。ミッションでは、“自分の脈をはかってみよう!”“自分の性器を見て見よう”などチャレンジしながら自分の体を正しく知ることができ、コラムでは“性器の洗い方”など役立つノウハウもわかりやすく解説しています。

【お知らせ】
サッコ先生と!みんなで学ぼう「性ってなに?」
〜小学生向け・はじめての性教育ワークショップ〜
高橋幸子先生
●講師
高橋幸子(産婦人科医、『サッコ先生と!からだこころ研究所』著者)
●日時
2021年5月9日(日) 1回目 11:00〜/2回目 13:30〜
※1回目、2回目は同じ内容です。
●会場・お申し込み
詳細はリトルモア HPをご覧ください。


(佐々木彩子)

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