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子育てがツラいのは自己肯定感のせい? 「親子の自己肯定感」の育み方 【子どもサポートのプロ・本山勝寛さんに聞く(前編)】


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仕事や育児に追われていると、つい子どもをきつく叱ってしまったり、周りと比較して自分の子育てに自信を持てなくなったり…。もしかすると、その原因はママ自身の“自己肯定感”が低いからかもしれません。

子どもの自己肯定感の大切さはあちこちで耳にする機会がありますが、ママ自身が自分の自己肯定感にまで思いをめぐらせる機会は、あまりないのではないでしょうか。


今回は日本財団が推進する「子ども第三の居場所」(*)プロジェクトを通して、子どもたちの自己肯定感の育みに取り組んでいる本山勝寛さんにインタビュー。プライベートでは5児のパパでもある本山さんに、家庭でできる子どもの自己肯定感の高め方をうかがいました。

日本財団 子どもサポートチームチームリーダー 本山勝寛さん
“地域の子どもたちのもうひとつの家”となる場所を目指す「子ども第三の居場所」の運営を統括。5児の父親で、これまで育児休業を4回取得。東京大学工学部システム創成学科知能社会システムコース卒業、ハーバード教育大学院国際教育政策修士課程修了。独自の子育て論、教育論が話題で『16 倍速勉強法』(光文社)や『自力でできる子になる好奇心を伸ばす子育て』 (大和書房)など著書も多数。
*子ども第三の居場所とは…
さまざまな困難に直面する子どもたちが安心して過ごせる環境で、自己肯定感、人や社会と関わる力、生活習慣、学習習慣など、将来の自立に向けて生き抜く力を育む放課後の居場所。学習支援や生活習慣支援のほか、キャンプ・音楽・プログラミング等の教室を通して、自己肯定感やコミュニケーション力など非認知能力を育むことにも力を入れています。

■子育てに自信がないのは自己肯定感が低いから?
仕事に子育てに忙しい日々。余裕がなくて、イライラして、子どもにきつく当たってしまって、なんだか自己嫌悪…。そんなネガティブなループの裏には、もしかすると「ママ自身の自己肯定感の低さ」があるかもしれないと本山さんは話します。


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「親自身の自己肯定感が低いと、子どもをありのままに受け止めてあげられなかったり、他の子と比較して子どもの良さよりも子どもができないことを気にしてしまったり…。その結果、子どもにきつくあたってしまう、強く叱ってしまう、ということもあると思います」

自己肯定感とは「生まれてきてよかった」「生きていていいんだ」と自分の価値や存在をポジティブにとらえられる感情のこと。これがあると、自分が関わることや自分がやることに対して前向きな気持ちになれるといいます。

「自己肯定感は、おもに幼少期から青少年期に育まれます。その期間に、親や周囲の人たちから愛され、存在そのものを受け止めてもらって、『生まれてよかったんだ』と感じる機会がたくさんあったどうか。また直接的ではありませんが両親の夫婦関係や家庭全体の雰囲気も関わってきます」

“自己肯定感”という言葉が注目されてきたのは、比較的最近の話です。昔はきびしい親も多く、成長の過程で自己肯定感がうまく培われてこなかったママもいるでしょう。

「今の子どもたちの自己肯定感がなかなか高まらないのは、自己肯定感の低い親に育てられているから、という面もあるのだと思います」

自己肯定感を育むには家庭環境が重要となるようです。

■自己肯定感が低いのは、親がまじめすぎるから!?
自己肯定感が高いと、どんなメリットがあるのでしょうか。本山さんによれば、「幸福感が高まり、人生全般にいい影響をもたらす」そう。

「なにごとにもポジティブで前向きになれるので、失敗を恐れず新しいことに挑戦でき、好奇心をもって世界を広げていけます。自分を『このままでいい』と肯定できるので、人間関係においても相手のことを尊重でき、良好な関係を築きやすくなります」


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しかし残念ながら、日本の若者は、海外にくらべて自己肯定感が低め。13〜29歳を対象にした内閣府の意識調査(2018年度「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」)では、「自分に満足しているか」という問いに対して、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツなどが軒並み8割を超えるなか、日本は45%以下で調査対象国のなかでは最下位でした。

「子どもたちの自己肯定感が低いことは、『子ども第三の居場所』に通う子どもたちと接するなかでも感じることが多いですね。具体的には『どうせ自分はダメ』『やったことがないからできない』という発言が多くなる。お友だちや大人に対して攻撃的な態度をとってしまう。さらには自分自身を傷つけるような言葉を発してしまう子もいます」

日本の若者の自己肯定感が低い理由のひとつには、まじめな国民性もあるようです。

「とくに親がまじめすぎるところはあると思います。加えて、何かひとつが飛びぬけてできるより、すべてが平均的にできていることをよしとする平均主義も影響しているかもしれません。日本社会全体として、個性や強みを見出して伸ばしてあげる力が弱いように思います」


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そこでぜひ意識してほしいのが、子どもをよく観察して、好きなことや得意なもの、個性を見つけて、それをほめて伸ばす機会をつくること。たとえば、子どもが車を好きそうだと思ったら、ミニカーをそろえたり、リアルな車を見に行く機会をつくったり、そこで得た車の知識をほめてあげたり…というふうにするとよいそうです。

「小さくても成功体験を積むと、自己肯定感に加えて、どんなこともやればできると思える自己効力感も培われていきます。『子ども第三の居場所』でも毎日チャレンジタイムという時間を設け、音楽やプログラミングなどを通して成功体験を積める機会をつくっています」

■忙しくてもこれだけは!子どもの自己肯定感を育むコツ

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「好きなことを見つけてあげる」以外にも、子どもの自己肯定感を育む方法はいろいろあります。

「基本的には何があっても受けとめてあげることですね。何かができたらほめるという条件付きではなくて、別にできなくても失敗しても、どんなことがあっても存在そのものを認めて愛してあげる。

具体的には『大好きだよ』とか『愛してるよ』と言葉がけしたり、手紙を書くのもいいですね。あとは子どもの話を関心をもって聞き、一緒に話をして、いろいろ聞きだしてあげる。そういうシンプルなことがまずは大事ですね。

言葉に加えて態度も大切なので、特に幼少期はスキンシップを積極的にとってあげるとよいと思います。小さいうちは抱っこ、少し大きくなってきたら手をつないだり、遊びの中でスキンシップをとったり、意識的に機会を作ってみてください」


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たしかにどれもシンプルなこと。でも時間に追われている日々のなかでは、そんなシンプルなことすら、案外難しかったりします。

「そんなときは、短い時間でも楽しくできるように工夫するとよいですよ。私は家で運動系のスキンシップを担当することが多いんですが、子どもが大きくなると“高い高い”も大変。かわりに『バランス平均台のチャレンジだ〜』なんていって背中を歩いてもらっています。ちょっとしたマッサージになりますよ。

もう少し大きくなったら、実際にマッサージや肩たたきをしてもらってもいいと思います。そんなに本格的じゃなくても、ちゃんと『気持ちいい』『上手だね』と伝えれば、子どもも親が喜んでいることがわかってうれしい気持ちになれます。疲れているときは、そんな感じでよいと思います」

寝かしつけのときの絵本の読み聞かせタイムも、スキンシップのいいチャンスだそう。でも、読み聞かせだからといって、かたくるしく「言葉を覚えさせなきゃ」と考える必要はないとのこと。寝そべって肌を触れ合わせる親子のコミュニケーションタイムとして楽しむのがよいそうです。


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「私自身も5人兄弟で、母親はとても忙しく、子どものころはあまり一緒に過ごす時間はなかったのですが、夜寝る前の読み聞かせがすごく楽しみでした。兄弟みんなで母親を奪い合うように聞いていたんですが、それでもすごく幸せでしたし、思い出に残っています。のちに母も、忙しい日々のなかの幸せな時間だと感じてくれていたことを知りました」

寝かしつけや読み聞かせも、どうせやるなら義務感でやるより、忙しい一日のなかで子どもと気持ちを通わせ合える幸せな時間だととらえれば、気持ちも軽くなりそうです。

「もちろん子どもがなかなか寝てくれなくて、先に眠くなってしまう日もありますよ(笑)。あんまり意気込みすぎないで、子どもと一緒に楽しい時間を過ごそうと思えばよいのではないでしょうか」

ちなみに本山さんが好きなのは『パパだいすき』という絵本。ぎゅうっとだっこするシーンがあり、読み聞かせしながらそのシーンでは実際に子どもを抱きしめるそうです。

■「認めてほしい」ママの気持ちを満たすには?

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自己肯定感を育むには、小さいときほど影響が大きいといわれます。大人になると変わりづらいのは事実ですが、変わらないことはないそうです。

「大人になっても家族や友人や先輩など周囲の人に愛されたり、しっかり気にかけてもらったりすることで高まることは大いにありえますね」

ママであれば、一番身近なパパが育児や仕事のがんばりを認めてくれれば、自己肯定感が上がるチャンスがありそうです。育児に協力的なパパは増えているものの、まだ「育児はママがやって当たり前」と思っているパパがいるのも事実。ほめてもらえないママも多いと思います。

「子ども一人を生み育てることって、本当に一大事業です。子どもを産んで大人にするだけで、絶対的にほめられるべきことだと思うんですね。ママでいる、親でいる、それだけですばらしいことだと、私は声を大にしていいたいですし、社会全体がそう思うべきだと思っています。ですからママたちには『こんな大変なことをやっているのだから、私はがんばってるよね』と自分で自分をほめてほしいですね。

ママが笑顔でいることが、子どもや旦那さんの幸せにもつながります。だから笑顔でいるために、ママも自分を甘やかすじゃないですけど、好きなことをやる時間をとって充電することも必要です」


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子どもの自己肯定感を培う方法のひとつに「好きなことを見つけてあげる」がありますが、ママ自身にも好きなことに没頭できる時間をつくることが大切だといえそうです。

「あとは、あんまりまじめになりすぎないことも必要かなと思います。多少適当でいいや、と思うくらいでちょうどいい。他人と比較したり、自分のできていないことを気にして不安になったりする必要はないと思いますよ」

幸せな人生を切りひらいていくために大事な自己肯定感。ママの意識がほんの少し変わるだけでも、育児に対する気持ちや日々の親子の時間にいい変化が生まれ、親子の自己肯定感を高めることにつながりそうです。

『自力でできる子になる好奇心を伸ばす子育て』(本山勝寛 著/大和書房)
今回、お話を伺った本山さんの著書。公立校から独学で東大、そしてハーバードで学んだ本山さんの合格の原動力は「好奇心」でした。本書では子どもの好奇心を伸ばすヒントを、国語・理科・保健体育・算数・社会のカテゴリにわけて紹介。自分の教育方針に自信がもてない人や世界の最新教育事情を知りたい人にもおすすめの一冊です。
「子ども第三の居場所」とは
自己肯定感を育むには家庭環境が重要となりますが、現代は孤立や生活面などさまざまな困難に直面している子どもも少なくありません。本山さんが携わる「子ども第三の居場所」は、そうした子どもたちに温かい家庭のような“第三の居場所”を提供する施設。現在までに全国に39拠点が開設されています。
「おもに小学校低学年の子どもたちが放課後に通い、信頼できる大人や友だちと安心して過ごせる場所です。さまざまなプログラムや食事を一緒に食べることなど、活動全般を通して、自己肯定感や社会と関わる力など、将来の自立に向けた生き抜く力を育んでいくことを目指しています」(本山さん)


(古屋江美子)

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