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「性への違和感」を自覚するのは小学校入学前!? 親が知っておきたい性の多様性


参照元:「多様な性への理解と対応ハンドブック〜ちがいが尊重される長崎県をめざして〜」


「LGBT」という言葉を聞くことが増えたり、ジェンダーレスな人たちの活躍を目にしたりする機会が増えていませんか?

「性の多様性」とはいうけれど、子どもたちにどうやって教えてあげればいいのか、悩んでいる人は多いのではないでしょうか?

今回は、長崎県人権・同和対策課が発行する「多様な性への理解と対応 ハンドブック」を元に、親だからこそ知っておきたい性の多様性について、考えてみたいと思います。

■性の多様性って?

参照元:「多様な性への理解と対応ハンドブック〜ちがいが尊重される長崎県をめざして〜」


一般的に「性別」とは生まれ持っての性差を指します。「性別」では、男性か女性の2択だけですが、現代には、「性のあり方」を理解するために必須な3つの要素をご紹介します。

<性のあり方を理解するための3つの要素>
からだの性別:からだ(出生届・戸籍)の性
性的指向:どういった対象を好きになるか?
性自認:自分の性別をどう捉えているのか?

これらの要素の組み合わせによって、さまざまなセクシュアリティが存在します。

参照元:「多様な性への理解と対応ハンドブック〜ちがいが尊重される長崎県をめざして〜」


その他にも、性自認や性的指向がはっきりしない人、決めたくない人、女性とも男性とも認識していない人など、さまざまな性のあり方が存在します。


この3つの要素を元に考えてみると、自分の性に違和感がない人や異性を好きになる人といった多数派の人もまた、多様な性の当事者であることがわかります。

「多数派か少数派か」という2択ではなく、みなが多様な性の当事者だという事実を一人ひとりが受け止めていくことから「多様性」について考えてみるといいかもしれません。



■性的少数者はどんな悩みを抱えているの?

2020年に電通が行った調査(※1)によると、性的少数者は日本のなかでは8.9%という結果に。その他の調査でもおおむね10%程度の結果が多く(※)、およそ10人に1人が性的少数者であることがわかります。
※国や民間の研究機関などによる統計データは、その数にばらつきがあり、はっきりしていません。

2019年に長崎県が実施したアンケートから、人数の少なさや偏見、理解のなさから、生きづらさを抱えている人の実態が明らかになりました。

参照元:「多様な性への理解と対応ハンドブック〜ちがいが尊重される長崎県をめざして〜」※このアンケートは、回答者を無作為に選び回答を依頼したものではなく、県ホームページへの掲載等による周知のほか、性的少数者支援団体の支援活動への参加者等へ周知を行い、調査対象者であれば誰でも回答できるものとしたため、回答者のセクシュアリティの割合や各質問の回答割合は、県民全体の傾向と捉えることはできません。


アンケートに回答いただいたのは、トランスジェンダー85名(*1)、非異性愛者168名(*2)、性別違和感のない異性愛者435名、性的少数者 253名で、回答者は688名になります。
*1トランスジェンダーの中には、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル等の性的指向の方もいますが、この調査では、そのような方も含めてトランスジェンダーに分類しています。
*2本アンケートにおいて、性別違和感がなく、異性愛者以外の性別指向を選択された方

このアンケートの結果によると、トランスジェンダーで43.5%、非異性愛者では45.8%の方が、「性的少数者であることが要因で暴力などを受けた経験がない」と答えています。逆をいえば半数以上の回答者は暴力などのつらい経験をしていることになり、その割合の高さには驚かされます。

また、6割以上の方が、「学校の同級生・先輩・後輩など」から暴力などを受けたとしています。

そして一番の理解者であってほしい家族である「父母」からの暴力などが3番目に高く、つらい現状がうかがえます。

メンタルヘルスの状況グラフ

参照元:「多様な性への理解と対応ハンドブック〜ちがいが尊重される長崎県をめざして〜」



さらに、「死んでしまいたいと思ったことがある」と回答した人が、トランスジェンダーで61.2%、非異性愛者で51.8%にも上り、続いて多かったのは、「将来に希望を持つことができない」という回答でした。

性的少数者であるという事実だけが影響したかどうかははっきりしませんが、この数値は非常に高く感じられます。性的少数者の人たちが抱える苦悩の一端が読み取れます。



■覚えておきたい心構え3つ

親としては、子どもにそうした様子が見られた場合も想定した対応の仕方として、リーフレットでは3つのアドバイスが送られています。
【大切にしたいこと】
●肯定的な言葉を使う
●カミングアウトを肯定的に受け止める
●アウティング(他言)しない

具体的にどのようにすればいいのでしょうか?

参照元:「多様な性への理解と対応ハンドブック〜ちがいが尊重される長崎県をめざして〜」



▼肯定的な言葉を使う

性自認や性的指向を表現する言葉が多くある中で、中には性的少数者が不快に感じてしまう否定的な言葉もあります。
<差別用語の代表例>
「普通の人」や「ホモ」、「オカマ」、「オネエ」、「レズ」、「オナベ」、「ニューハーフ」

<肯定的な言葉>
「レズビアン」、「ゲイ」、「バイセクシャル」、「トランスジェンダー」

これまで意識せずに使ってきた言葉には、その気がなくても相手を傷つけてしまう可能性があります。こういった情報をきちんと自分の中で取り入れていくことの必要性がわかります。

▼カミングアウトを肯定的に受け止める

自身の性自認や性的指向を他の人に打ち明けることを「カミングアウト」といいます。

カミングアウトは大変勇気がいるため、信頼している相手だからできる場合が多いようです。だからこそ、もしカミングアウトされたら、肯定的に受け止めてあげましょう。

▼アウティング(他言)しない

「アウティング」とは、他人の性自認や性的指向を本人の許可を取らずに他の人に話すことをいいます。

当事者が意図しないところで、個人のセクシュアリティが知られてしまうと、当事者が傷つき、精神的に追い込まれてしまう可能性もあります。SNSなどでの発信にも十分に注意したいですね。


ここまで、性の多様性について、長崎県が発行したリーフレットを元に学んできました。性的少数者の中には、幼少期に学校や家庭の中で理解してもらえず、つらい思いをした人が多くいることもわかりました。性的少数者が自分の性別に違和感を自覚しはじめる時期については、56.6%が「小学校入学以前」だというデータ(※2)もあり、幼い頃から自らの性について思い悩んでいる子どもが多いことがわかります。

そうした子どもたちに対して、周囲の大人がどのように受け止めるかは、その子どもの将来にも大きく影響してくるといえそうです。また、子どもに正しい知識と対応方法を教えてあげることで、子ども自身にも差別意識がなくなり、多様な性を柔軟に受け止められることにつながります。まずは親が知識を身につけ、子どもたちにも伝えていくことで、多様な性が当たり前の社会を、軽やかに進んでいってくれることでしょう。

【多様な性への理解と対応 ハンドブックとは】
長崎県では、多様な性のあり方への理解を深める一環として、県内の性的少数者支援団体「Take it! 虹」(ていく いっと にぃじぃ)と協働して、性の多様性に関する正しい知識や対応などについて、わかりやすく解説したハンドブックを作成。このハンドブックは「令和2年度人権啓発資料法務大臣表彰」の「出版物部門」において「優秀賞」を受賞。
長崎県:「LGBT等(性的少数者)について正しい理解をしましょう」

※1.データ参照元:電通ウェブサイト「電通、「LGBTQ+調査2020」を実施」
※2.データ参照元:公益社団法人 日本小児保健協会「性同一性障害と思春期」/中塚幹也

(高村由佳)

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