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子どもの「生きづらさ」を「らしさ」に変える【ギフテッドを知ると見えてくる、子育てのヒント Vol.2】

マンガで解説! 「ふつう」が子どもを苦しめる【ギフテッドを知ると見えてくる、子育てのヒント Vol.1】の続きです。



『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』楢戸ひかる著 より


ここ数年で少しずつ認知が広がってきた、ギフテッド。しかし、言葉だけが先行し、ギフテッドである当事者の生きづらさや、周囲の人たちの最適な接し方といった本質的なところまではなかなか理解が進んでいません。

そこで今回の【きほん編】では『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』から一部抜粋・編集し、ギフテッドとはどんな特性をもっていて、どのような配慮が必要なのか、をご紹介します。

『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』では、ギフテッドをとりまく現状や課題、有識者たちによる知見やアドバイス等を、楽しみながら読めるマンガでわかりやすく紹介。「子どもの成長に必要なもの」が生き生きと描かれていて、当事者のみならずすべての親たちに役立つ子育てのヒントが詰まっている。
本書ではギフテッドをとりまく現状や課題、有識者たちによる知見やアドバイス等を、マンガを交えてわかりやすく紹介。「子どもの成長に必要なもの」が生き生きと描かれており、当事者のみならず「すべての親たちに役立つ子育てのヒント」が詰まっている。

さらに、この本の著者 楢戸ひかるさんに、日本におけるギフテッドの現状や課題についても伺いました。(次回【インタビュー編】にてご紹介)

本連載は、初めてギフテッドについて触れる方にもわかりやすいよう【マンガ編】【きほん編】【インタビュー編】の3部構成でお届けしています。これを機に「ギフテッドをとりまく環境」に少しでも関心をもっていただき、すべての人が生きやすい世の中をみんなで作っていけたらと願っています。

『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』
著者:楢戸ひかる 監修:北海道教育大学旭川校 片桐正敏教授
本書では片桐教授のほか、佐賀大学教育学部講師の日高茂暢さん、ギフ寺住職の小泉雅彦さんの3名をはじめ、ギフテッド当事者・保護者に繰り返し取材をし、その叡智を楢戸さんが結晶させた“富良野カムイ”という架空のキャラクターも登場。
※本記事は、楢戸さんがナビゲーターを務め、カムイが答えるQ&Aページや一般社団法人ギフテッド応援隊とみんなの教育技術編集部による座談会ページなどから一部抜粋し、編集しています。

\ ギフテッド【きほん編】 /


知ってるようで知らない、そもそもギフテッドって?

『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』楢戸ひかる著 より


「ギフテッドとは、教育学や心理学で使われる用語で、一般的には知的能力(知能)の高い子どもを指して使います。医学的な診断名ではないので、医療機関を受信しても、ギフテッドと診断してもらうことはできません。

アメリカではギフテッドに関する項目に定義が記載されていますが、日本には定義はまだありません。しかしながら、2022年秋に有識者会議から文部科学省への提言がおこなわれ、今後の施策が示されるなど、日本でも議論がスタートしているところです」


IQや能力が高いひと=ギフテッド なの?

「ギフテッド」とは、知能が高いだけでなく、“学校や日常生活で困ることがある”お子さんのことを指します。


「ギフテッドの教育整備が進んでいる北欧のデンマークでは、2024/25年度からギフテッドのスクリーニングチェックリストの活用を目指していますが、このチェックリストのもととなった研究では、ギフテッドに該当した子どもの84%がIQが120以上だったという報告があるそうです。

知能が高いというのはギフテッドのひとつの特性といえます。そしてもうひとつ大切なポイントは、“学校や日常生活で困ることがある”ということです。


『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』楢戸ひかる著 よりギフテッドのおもな特性や、デンマークのスクリーニングチェックリストなども紹介。


知能が高くても、学校や日常生活で困っていない子もいるでしょう。あえてギフテッドというラベルを使うのは、実際に困っている子がいるからです。

ギフテッドは、言語理解力や記憶力、好きなことに対する探究心などは高いです。一方で、日常のルーチンが定着しない、精神的にちょっと幼いと感じるケースが、よく見受けられます。

幼児期はとりわけ知識の高さに生活力が追いつかない時期で、そこにギフテッドによくある完璧主義や正義感の強さが結びつくと、イライラが募って癇癪を起こすなど、周囲の人との軋轢を生んでしまいます」


ギフテッドの子が感じている“生きづらさ”って?

ギフテッドの生きづらさはさまざま。例えば…

・仲間に出会えずひとりで孤独を抱えている子が多い

・多くの人が自然に受け入れることができる物事に、過剰に反応してしまう。同年齢の集団の中で浮いてしまう

自分に合った学習環境が手に入らず、知能に見合った学習成績が得られない

…など。

これまでの教育実践や研究から、ギフテッドの生きづらさを大きく3つに分類してみました。まず 1 と 2 について説明しましょう。



1. ギフテッドは「姿」が見えづらい
2. 「非同期発達」と「過度激動」が知られていない
3. ギフテッドと発達障害との混同(→次ページで解説)



1. ギフテッドは姿が見えづらい


まず量的な問題として、ギフテッドが少数派であることから、仲間に出会えず、孤独を抱えている子が多いということが挙げられます。

内閣府がギフテッド(特異な才能のある子ども)と仮定したIQ130以上に該当するのは、約2.3%。ボリュームゾーンである約7割の多数派からは外れてしまいます。

小・中学校の頃は家と家庭が時間の大半を占めている時代です。今いる世界の中で多数派でないことは、大人が思っている以上に辛いものです。

そしてもうひとつは、才能というのはそもそも見えづらいという点です。ギフテッドの中には、その子に合った学習環境を手に入れられず、知能に見合うだけの学習成績が得られない子(アンダーアチーバー)もいます。

才能は学業成績だけでは測れませんし、子どもたちの中には学校の勉強に興味を持たないという子もいます。まずは、好き! やりたい! を尊重することが大切です。


2. 「非同期発達」と「過度激動」が知られていない


どちらも聞き慣れない言葉かもしれません。
まず「非同期発達」について。

いわゆる知的能力(認知能力や言語能力)、社会的な能力、情緒的な能力、運動能力は、一般的には相互に関係しながら、年齢とともに発達していきます。

この発達が同期している(相互に関係がある)状態に対して、ギフテッドの場合は発達が同期していないように見えることが多いため、「非同期発達」(発達の非同期性)と呼ばれます。得意な領域の発達が目覚ましいため、ほかの能力の発達と大きな開きが出てくることがあるのです。

情緒面では同年齢の子より幼さが見られることもあるほか、運動能力も比較的ばらつきが大きいかもしれません。



そしてギフテッドの多くに見られるもうひとつの特徴である「過度激動」とは、文字通り、過度な感情や行動を示す状態。

多くの人が自然に受け入れることができる物事に過剰に反応してしまうなど、過度激動があると集団生活の中で苦しいことがあります。環境からの刺激に対して、強い行動力・感情的な反応を引き出すので、同年齢集団の中で浮いてしまうことも。

普通を主語にして物事を考えること自体が、時代遅れ。その状態がギフテッド本人の葛藤になったり、周囲の人や環境との軋轢を生むことになる可能性もあります。

そのため、ギフテッドのカウンセリングをする際には、過度激動に対して否定的に捉えるのではなく、自分の過度激動に関して理解を深めることが重要視されています。(※より詳しい過度激動の5つのタイプは書籍にて紹介)

「普通の枠内に収まらない強い個性を持ったギフテッドが、普通であることを求められる環境にいると強いストレスを感じます。

日本では“多数派”側にいないと“普通”じゃないといわれがちですが、多様性が尊重される今の時代、普通を主語にして物事を考えること自体が、時代遅れ。いわゆる普通でない仲間もたくさんいることや、本人の辛さやSOSに周囲が気づくことが大切ですね」


ギフテッド=発達障害 ではないの??

ギフテッドと発達障害は、分けて考えることが重要です。なぜならば支援ニーズが全く異なるから。

大切なのは「この子はなぜ生きづらいのだろうか? ギフテッドの特性があるからなのか? それとも発達障害の特性があるからなのか?」という問いなんです。



「たとえば、発達障害の種類のひとつであるASD(自閉スペクトラム症)の特性である“こだわり”がある子は、興味関心のある分野についてかなり深い知識を持っているため、それを他者に滔々と話すことがあります。

これはギフテッドに見られる知性過度激動の【知的好奇心が強く、言語発達も早熟。時として、周囲と話が合わずに困る】という状態と、一見すれば似たように見えます。

しかしギフテッドは、総合的な学習の時間などの話し合いのある場面では、イニシアチブを発揮しながら、友だちの意見を交えつつ問題解決に向けて学習を進めていくことが可能です。

話題が噛み合っていないなと感じることもできますし、話をしている相手の感情なども感じ取ることができます。ギフテッドとASDが決定的に異なる点は、ASDのある人は他者の感情や意図の読み取りが難しいということです。


また、ギフテッドの中には発達障害がある人もいて、このような人を2E (ツーイー)といいます。

発達障害とギフテッドでは異なる支援ニーズがあり、アプローチも異なります。したがって、両者をしっかり分けて考え、両方の特性がある場合はそれぞれの配慮と支援を考える必要があります。両者を同じだと考えたり、どちらか一方しかないと思い込むと、支援がうまくいかないことがあります」


ギフテッドの子への配慮や声がけ、どう気をつけたらよい?

義務教育のカリキュラムは、平均的な知的能力の人向けなので、その環境に自分を合わせようと無理をしてがんばっているギフテッドがいるということを、まずは知って欲しいです。

ギフテッドの強みと弱みは表裏一体。子どもの個性を多角的な視点で捉えることが重要です。



『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』楢戸ひかる著 より


「仮にわが子が不登校で、その子が久しぶりに学校に行って帰ってきました。何て声がけをしますか? 頑張ったね! すごいね! という声がけをする気持ちはわかります。でも、その声がけを子ども視点でチェックしてみて欲しいのです。学校に行ったことを褒めることで暗黙のプレッシャーを与えていないでしょうか? 

久しぶりに学校に行ったときには『大変だったね』『お疲れさま』『ご苦労さま』と、まずは気持ちを汲みとり、いたわることが大切です。

ギフテッドはとりわけ環境に敏感な子どもです。がんばって合わせようとしていても、そもそも合わない環境に置かれているので、フィットするのは至難の業。それを怠けている、我慢が足りないで片付けられてしまうと、本当にしんどいのです。

特性である強い集中力は、強みでもありますが、集中しすぎる(過集中)状態のときはまわりのことが見えていなかったり、ほかのことはおろそかになりがちです。

つまり、強みと弱みは表裏一体。強みをうまく扱うことができれば強力な武器になりますが、一方で自分や周囲を傷つけてしまう可能性もあります。

現状、日本の教育現場では、どうしても弱みや困っていることに対する配慮や支援が優先され、強みに対する配慮や支援の重要性はあまり議論されていません。

ギフテッドへの理解が学校現場に浸透することで、強みに対する配慮や支援という発想が広がっていくことを期待しています」

ギフテッドについて理解し、多様性を受け入れよう!
今回の【きほん編】では、ギフテッドとはどんなものなのか、いくつか抜粋してご紹介しました。


まずは、ギフテッドは単に知能が高いだけでなく、学校や日常生活で困ることがたくさんあるということを理解しましょう。そして、社会全体で多様性を認め合って、誰しもが生きやすい環境を整えていけるよう、関心を寄せていくことが大切です。

次回は、『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−(小学館刊)』の著書であるライターの楢戸ひかるさんに、日本のギフテッドの現状や課題について、さらにお話を伺います。

\ ご紹介した書籍 /

『ギフテッド応援ブック −生きづらさを「らしさ」に変える本−』(小学館刊)

2023年10月3日発売
定価1,760円(税込)/192ページ

著:楢戸ひかる
監修:片桐正敏(北海道教育大学旭川校教授)
取材協力:小泉雅彦/日高茂暢/ギフテッド応援隊
マンガ:黒川清作
https://www.shogakukan.co.jp/books/09840227


著者:楢戸ひかる プロフィール


ライター。息子の通級をきっかけに、「特別な教育ニーズのある子どもたち」を軸に教育記事を執筆。通級を経験した母親として、当事者目線の発達障害理解教育の講師活動も行っている。主事業の最適化を考えるサイト「主婦 er」運営中。ウーマンエキサイトでも執筆中。

HP:https://hikaru-narato.com/

(佐々木彩子)

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