ケイト・ブランシェット「つぎはパン屋かも」驚きが人生の醍醐味
2016-01-31 09:10 eltha
これまでの人生の中で運命を変えた出来事について聞くと、「たくさんあるわね。だって人生は創造していくものだから、一直線ではないもの」と笑って答えながら、8年前にオーストラリアで劇団の監督をすることになった時のことをあげた。
「当時、女優として築き上げてきたこれまでのキャリアや名声のことを考えると、自国で劇団の監督をするという新しい挑戦を決断するのは怖かったけれど、自分の直感を信じて決断したわ。そのような大きな決断をしなければならない時は、正直、ちょっと怖い気持ちがあっても、私は常に自分の直感を信じると決めているの」。
役柄を決断する時も自己流を貫いているようで、「大抵、ディレクターやスタッフに魅かれてしまうことがほとんどなので、映画『シンデレラ』で継母を演じることになった時は悪者を演じることにワクワクしていたけれど、その映画の衣装デザイナーとともに働けることが楽しみでした。『エリザベス』の時も、その時代背景にとても惹かれました」と話し、演じる役の好き・嫌いではなく、誰と働けるか、どのようなストーリーかなどを大切にしているとのこと。
凛とした立ち振る舞いと洗練された雰囲気からはプライベートのケイトさんをなかなか想像できないが、4人の子供を育てている母親らしく、「(手間のかかる)ドライクリーニングが必要な洋服は着ないわね(笑)。普段は、すぐ洗濯機に突っ込めるような洋服ばかり(笑)。その中でも、ジャンプスーツとオーバーオールが多いわね。とっても楽なのよ。シューズも実用的なものばかり」と親しみやすさを滲ませた。
「私だけでなく、世界中でたくさんの女性が、男性とは比べものにならないほど、間違いなく忙しいと思うの。もっと女性たちが心身ともに健康的でいられることが大切なのよね。私の場合は夫のサポートはとても大きいわ。けれど、きっと、私たちの欧米の文化と違って、日本はいつでもキチっとしなければいけないという印象があるから、日本の女性は私たちに比べてもっと大変なのではないかしら。私の国の文化はそうでもないから、まだ、楽なのかもしれないわ(笑)」。
そんなライフワークバランスがしっかりとれているケイトさんを完璧な女性像に近いと感じる人は多いと思うが、「コンプレックスだらけでどこから話していいかわからないほどよ」と苦笑い。「例えば、そうね、私は完璧ではないのに完璧主義者だし(笑)、落ち着きがないわ。我慢強くないのよね。だから、夫から『少しは座ってゆっくり映画でも見たら?』と、よく言われているわ(笑)。じっとしているのが苦手。なかなか克服はできていないの」。
女優、劇団の監督、そして、環境活動にも熱心なセレブリティとして知られているケイトさん。さまざまな分野で活躍が期待されるだけに、今後について気になるところ。それについては、「今、交差点にいるような気分」と話し、「女優以外にもやりたいことがたくさんあるので、今後に関してはまだ全然わからないわね。もしかしたら、パン屋になっているかも(笑)。でも、それこそが人生だと思うんです。常に驚きがあることが、人生の素晴らしさなのだと私は思います」。ケイトさんが歳を重ねる度に美しさを増していく理由、それは、変化を怖がらないその懐の深さなのかもしれない。
(文/武田奈々)
⇒【インタビュー全文】ケイト・ブランシェット「人生を切り開く力」