乳がん検診「マンモだけで大丈夫」はNG、分岐点は40歳も「年代に応じた検査を」専門医の見解

　日本人女性の9人に１人が乳がんに罹患する現代。早期発見（※）・治療を行うことで9割が完治すると言われ、定期的な検診は女性たちにとって欠くことができないものになっている。一方で検査における知識となると、意外と知らないことが多いことに気がつく。乳がんの専門医、嶋本裕医師が明かす検査の基本とクリニックの見つけ方とは。

■「検査は単独ではなく併用で、受診は画像診断できるクリニックへ」

　乳がん検診で一般的に知られる検査には『超音波（エコー）』『マンモグラフィ（X線）』などがあるが、現在、“乳がんの死亡率を下げる”と証明されている検査は『マンモグラフィ』のみ。そのため国も40歳以上の女性に２年に１回、同検査を受けることを推奨し、自治体が公費助成している。このことから「マンモグラフィさえ受けていれば大丈夫」という印象を持つ女性も多い。ところが医療現場では、「この現状を以前から疑問視している」と嶋本医師（品川ブレストクリニック院長）。

「アジア人女性の約半数は乳腺組織が発達している“デンスブレスト（高濃度乳房）”と言われています。実はこの“デンスブレスト”の場合、マンモグラフィで病変を見つけにくく、今のマンモグラフィ単独検査だけで果たしていいのか、という議論がなされています」

　これらのデータに加え、それぞれの検査の特長から「併用することが大事」と指摘する。

「超音波は“しこり”を見つけ、マンモグラフィは“病変のサイン”を見つけます。全く異なるアプローチなので、どちらか一方を受ければ大丈夫ということではありません」

　検診を始める年齢については明確なガイドラインがないが、ひとつの目途とされるのが「40歳」だ。

「乳がんは40歳以降で発症しやすく、全体の9割を占めています。ただ、最近の印象では若い患者も増えているので、個人的には統計自体が変わる可能性もあると思っています。これらから、年代に応じて内容を選択しながら検診するのがベストです」

【嶋本医師の推奨する年代別検査法】
20代…毎年の「超音波」検査
30代…毎年の「超音波」、30代前半と後半に「マンモグラフィ」検査を併用
40代以降…毎年の「超音波」、2年に1度以上の「マンモグラフィ」検査を併用

　さらに、嶋本医師が活用する最新の医療機器として『3Dマンモグラフィ』『乳腺MRI』がある。

「従来のマンモグラフィでは、平面的な1枚の画像しかとることができませんでしたが、『3Dマンモグラフィ』では、角度を変えて複数の方向から撮影するので、乳腺構造の重なりにより見えにくかった部分も見やすくなります。病変の発見率が高まるというよりも、例えば、白く映った影が“乳腺”か“しこり”か、これまで判別しにくかったものに対して診断精度が高くなるというメリットがあります」

　造影剤を静脈内に注射して行う『乳腺MRI』は、『超音波』や『マンモグラフィ』に比べ感度が高く、より小さな病変が検出可能と言われている。

「感度の高さを考えると『乳腺MRI』だけでいいのでは、と思う方もいるかもしれませんが、『乳腺MRI』は造影剤を使用しないと全く意味がないと言われており、気管支喘息や高度腎機能低下の方など、造影剤へのリスクがある方は使えないという側面もあります。それぞれの検査に“強いところ”と“弱いところ”があるので、やはり、乳がんの診断はそれらを総合的にあわせてすることが必要です」

　さらに最先端では、血液や唾液、尿などからバイオマーカーを診断・測定する『リキッドバイオプシー』も注目されている。がんの再発モニタリング、がん治療の効果予測などに加えて、がんの早期診断にも期待が持てる。「まだ確立したものではないですが、将来的にはまずこのような低侵襲の検査を受け、リスクが見つかった方が画像による検査を受けるという流れになる可能性もある」と話す。

　2月4日の「世界キャンサーデー」に合わせ、MICIN少額短期保険が開催した“乳がん勉強会”にて、検査の基礎から最新手法までをレクチャーした嶋本医師。最後に、受診する際には「ぜひ画像診断できる機器のあるクリニックへ」と呼びかけた。乳がんの早期は病変が小さく自己触診で見つけるのは難しい。問診や触診だけでなく、定期的な画像検診こそが重要だ。

※乳がん早期とは「Tis」「0期」「I期」。

2023-02-28