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“不倫”はなぜ人々の興味を引く? “托卵女子”と“サレ夫”の運命は――「子どもへの愛情の根拠は血縁か?」

2023-06-22 11:15 eltha

 昨今、エンタメコンテンツにおいて多くの人の関心を引くテーマでもある“不倫”。家庭内DVや保育園でのマウンティングする保護者など、身近に起きるさまざまな社会問題を描いてきたマンガ家の森脇葵さんの近作『托卵妻とサレ夫』(LINEマンガ)も、そんな“不倫”にスポットを当てたもの。しかも、夫とは違う男性との子どもを、夫の子どもと偽って生み育てさせる“托卵女子”をテーマにしたスリリングな作品で、ランキング上位常連の人気作となっている。なぜ、人々は、そこまで“不倫”に魅かれるのか?

LINEマンガ『托卵妻とサレ夫』 (C)Aoi Moriwaki/LINE Digital Frontier

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■ニュースで知った“托卵女子”…男性視点で描く不倫作品の“謎要素”にふさわしい

 タイトルから強烈なインパクトを放つ、LINEマンガの人気作『托卵妻とサレ夫』。そもそも“托卵”とは、カッコウなどの鳥類が、自分の卵と誕生した雛への世話を他の個体に托すこと。その習性を人間に置き換え、夫以外の男性との子どもであるにも関わらず、夫の子どもであると偽って、夫に育てさせるという意味で使われ始めたのが、2000年代に入ってから。もともと、インターネットのスラングとして使われていたものが、最近では一般化し、ニュースなどでも「托卵女子」などの言葉が使われている。本作のテーマも、そんなニュースで見かけたところから誕生したと、森脇葵先生は言う。

「編集担当の方との新作の打ち合わせのなかで、女性向けでは“不倫”ネタが定番人気と聞きました。個人的に女性主人公の作品が続いていたので、男性主人公で話を描いてみたいと思っていたなかで、“不倫”に“托卵”要素を加えたらどうかと提案して、現在の形になりました。単純に不倫を描くだけでは目新しさがなかったので、“托卵”をテーマにすることで男性の被害者目線になり、作劇としてはちょうど良かったです。
 実在の“托卵女子”については、以前ニュース記事で見かけて気になっていました。男性主人公で物語を展開させる場合、男性視点で驚く“謎”要素としてふさわしいのではとも思い、取り入れました」          

■「『子どもへの愛情』の根拠は、血縁か、一緒に過ごした時間か、考えてもらえたら」

LINEマンガ『托卵妻とサレ夫』 (C)Aoi Moriwaki/LINE Digital Frontier

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物語の主人公は、市役所に務め、優しく美しい妻・栞子(かこ)とかわいい息子・幸大に囲まれ、平凡ながら幸せな家庭を築いた義人。だが、そんな平穏で温かい日々は、息子の血液検査の結果を見たことで崩壊していく。夫婦からは生まれるはずのない血液型の息子の存在は、妻への疑念へとつながり、妻もまた本性を現わしていく。物語が進むにつれて、清純だった妻の豹変ぶりに驚かされるが、このキャラクターを作り上げるのも苦労があるという。

「感情表現は、できるだけキャラクターに寄り添いながら考えています。栞子ちゃんには、特定のモデルはいませんが、過去の人生で出会った『うわぁ』と感じた場面を思い出しながら、人物像を掘り下げています。栞子ちゃんは、自分が生きるために『都合の良い演技を習得してしまった』子でもあるので、話が進むに従って、徐々に『本当の栞子ちゃん』が現れるように心がけています。実は自分でキャラを作ると『みんな良い人』になりがちなので、編集担当さんに『もっと悪女に』と言われながらお話を考えています(笑)」

 劇中の行動で「夫婦間の信用」「性善説」をなきものにする栞子の存在は、エンタテインメント作品とはいえ、男性から見れば非常に恐ろしいもの。一方で、栞子の不倫相手で幸大の実の父である皇成も、お金目当てでお金持ちの家に婿に入りながら平然と浮気をするような男性だが、作品に寄せられるコメントは、妻・栞子の本性に対するものが多い。この“人間の本性”の恐ろしさについてはどのように考えているのだろうか?

「男性と女性で行動(表現)のしかたが違うだけで、本質的な善良さや恐ろしさは男女で変わらないと思います。
 本作を通じて『子どもへの愛情』の根拠は、血縁か、それとも一緒に過ごした時間か。皆さんでそれぞれ、ご自身で考えてもらえたらと思っています」

 先述の通り、昨今注目を集めている“不倫マンガ”だが、その人気の秘訣はどのようなところにあると考えられるのだろうか?

「読者の皆さんに不倫願望があるのではなく、不倫に伴う憤りや怒り、そして仕返しが起きたときのスカッと感などの『感情』を、読書体験として共有したいのかな?と思っています。これは憶測ですが、特に女性読者の媒体に掲載されていた経緯があるので、女性読者さんの方が多いのではと思っています」

 また、家庭内DVや保育園でのマウンティングする保護者など、本作を含めて、家庭あるいは社会のなかで起こっている、“一般市民に身近な闇・泥沼”をテーマに作品を描き続け、人気を博している森脇先生に、マンガの魅力について聞いた。

「人間は生きていれば、生きているだけで、誰でもいろいろな出来事に関わります。そんな人生の『もしも』を体験できるのが、マンガの醍醐味なのではと思っています」

 最後に、義人同様、それまで全く疑っていなかった妻の言動が、少し不自然であると感じた時、どのような対応を取るのがベストだと思うか聞いてみると、このような答えが返ってきた。

「疑っているとは相手に悟らせず、せっせと裏取り&証拠集めするのが一番だと思います」



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