循環資源を活用した餌料供給技術で、アサリ資源の保全と水産業振興に貢献
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、熊本県玉名郡長洲町において、アサリの陸上飼育における餌料供給の低コスト化に向けた実証試験を開始しました。本実証は、2025年に熊本県長洲町(町長:田成修一)、熊本北部漁業協同組合(代表理事組合長:上田浩次)、西日本工業大学(学長:鶴田隆治)および味の素株式会社九州事業所(所長:岡田篤)と締結した包括的な事業連携に関する協定の取り組みの一環です。
1.取り組みの背景
近年気候変動の影響が懸念される中、特に夏季の高水温や豪雨に伴う淡水流入などにより、全国各地で二枚貝の漁獲量が減少しています。中でもアサリは、出荷サイズに成長するまで3年程度要するため、干潟で大量死や流失などの被害が発生すると、資源の回復に長い時間がかかります。そのため、アサリの稚貝を陸上で飼育・保護し、成長後に干潟に戻すことで、被害が発生した際にも、産卵する母貝を確保し、資源の早期回復につなげることが期待されます。一方、陸上飼育は水温や水流、給餌などを管理しやすい反面、餌料費が高く、実用化に向けた課題となっていました。
大林組は、これまで室内試験を通じて、アサリ陸上飼育の低コスト化につながる餌料供給技術の開発を進めてきました。今回、その成果を踏まえ屋外環境での低コスト餌料の安定供給と飼育装置の大型化に向けた実証試験を開始しました。
2.実証内容
(1)概要
本実証ではアサリの餌となる植物プランクトンの一種であるケイ藻を培養する水槽と、アサリを飼育する水槽を組み合わせた屋外大型実証設備を製作しました。餌となるケイ藻を安定的に培養・供給しながらアサリを飼育し、給餌の量やタイミング、水質管理、海水交換の流量調整などの最適な条件を検証します。

餌料ケイ藻

陸上飼育中のアサリ稚貝

実証設備概要
(2)低コスト化を実現する餌料供給技術の確立
ケイ藻の培養には専用の栄養材を用いた培養管理が必要であり、陸上飼育全体のコストを押し上げる要因となっていました。本実証では、味の素株式会社九州事業所(佐賀県佐賀市)におけるアミノ酸の製造過程で生じる副生液(※1)を、ケイ藻の栄養材として活用します。副産物由来の栄養資源を有効活用することで、餌料の安定供給とコスト低減を両立し、地域で発生する副産物を循環的に利用する仕組みの構築につなげます。
大林組は、これまで技術研究所などで実施してきた室内試験において、米ぬかなどの入手しやすい循環資源を、アサリの餌となるケイ藻に代わる餌料として利用できることを確認しています。ケイ藻の大部分をこうした代替餌料に置き換えることで、餌料費をケイ藻のみを給餌する場合の10分の1程度まで低減できる見込みです。今後は、屋外環境における給餌方法や水質管理方法の検証、装置の改良を進め、米ぬかを活用した餌料供給技術の実用化に必要な運用ノウハウを蓄積します。
(3)陸上飼育と干潟での対策を組み合わせ、アサリ資源の保全を支援
本取り組みは、温暖化で北上した南方性エイなどによる食害の防止網の活用や、干潟の土質改善など、漁業者や長洲町が地域で進めてきたアサリ保全策と組み合わせて実施します。特に、高水温や豪雨の影響を受けやすい夏季を陸上飼育によって補完することで、アサリ資源の保全効果の向上を目指します。
3.今後の展望
本実証を通じて、実用化に向けた課題を抽出し、その解決策を検討するとともに、各地域で発生する副産物や未利用資源を飼料や栄養材として活用するためのノウハウを蓄積します。これにより、アサリをはじめとする二枚貝の資源保全に貢献するとともに、水産業の振興と海の環境改善を両立する「
おさかな牧場(R)」構想(※2)を具現化します。さらに、自治体、漁業者、地元企業など多様な主体との連携を進め、地域の特性に応じた新たな水産資源保全の取り組みへと発展させていきます。
大林組は、こうした取り組みを通じて、循環型社会の形成と、海洋分野におけるネイチャーポジティブの実現に貢献します。
※1 アミノ酸副生液
アミノ酸を製造する過程で副生する栄養培地で、窒素分やアミノ酸など、植物プランクトンの生育に有効な成分を含む
※2 おさかな牧場構想
副産物由来の栄養資源を循環的に利用し、水産資源の育成と海の環境改善の両立を目指す大林組の構想
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