モラハラは連鎖する? 「大したストレスもないくせに倒れるな!」母に怒鳴り散らす父、気づいた娘と乗り越えた親子の絆
2022-03-14 eltha
モラハラ、整形、パパ活、悩める女性たちを「助けてあげたい」
利木実さん自分が普段生活する中で、「これどうなんだろう?」とか「嫌な気持ちになるな」などと感じたことを、「みんなどう思う?」と読者に投げかけるような感じで描いている感覚はあります。例えばメディアで人が整形したことについて、昔と今の顔を比較して「顔違くない?」みたいなことが取り上げられますが、それをイジって何がしたいのかなって考えてしまうんですよね。「パパ活」のことを知ったときは、「絶対に危ないのに…なんでこんなことするんだろう」と思いました。登場人物たちを、どうにか助けてあげたいという気持ちで描きました。
――そんな想いをふくらませて物語に起こしていくんですね。オムニバスの1話目は、ひどいモラハラを受ける気弱な女の子・鈴香が主人公でした。
利木さんモラハラの問題はテレビやネットでよく見かけていて、そこからいろいろ調べてみたら、こんなに悩んでいる人がいるんだと驚きました。モラハラする側は完全に自分が正しいと思い込んでいることや、ひどい仕打ちも実は心の底から相手のためを想ってやってあげている、といった事例を知ったときは衝撃でしたね。
――モラハラの加害者は、よかれと思ってやっているんですね。
利木さんどうやらその場合もあるようです。それから、父親が母親に対してモラハラするのが当たり前という家庭で育った子どもは、もしかしたら何かしら影響を受けるかもしれません。そんな想いをいろいろ考えて、ストーリーを作っていきました。
――鈴香の母親もモラハラ被害者でした。物語では、娘をかばうことができず、同じ道を歩んでほしくないという母の苦悩も描かれます。
利木さん鈴香の婚約者が酷いモラハラ気質なんですけど、彼は外面がいいんです、だから、鈴香の母親は本性を知ることができず、始めは鈴香からモラハラの相談をされても信じませんでした。母親自身がモラハラ被害者なので、夫と違ってモラハラをしない婚約者の彼を羨ましいとすら思っていたんです。なかなか被害が伝わらないところも、モラハラ問題のつらいところですよね。また、鈴香の状況を知り、同じ被害者だからこそ分かり合えるところもあるでしょう。そんな関係を描きたかったんです。
「人はすぐには変われない…」キャラクターに投影するリアル
利木さんたとえば、鈴香はモラハラ被害から逃れることができましたが、意見を言える強気な女の子になったかというと、そうではありません。筋トレやダイエットのように、コツコツと少しずつ積み上げていくことでしか変われないと思うんです。正直、少年漫画みたいな劇的な変化がすぐに起こるというのは信じていません。私が作品を描く時は、そういうリアルなところを大事にしたいと思っているんです。
――本作がプロデビュー1作目となります。そもそも利木さんが漫画を描くようになったきっかけは?
利木さん絵を描くことが好きで、中高生の時に「絵を描いて稼げたらラクできるのでは…?」と考えたところからです(苦笑)。一度そう考えてしまったから、本当に絵で頑張るぞとしか思っていませんでした。今では軽い学歴コンプレックスというか、真面目に勉強しておけばよかったなと思うこともあります。
――次回作を進めているとのこと。将来的に描いてみたいテーマは?
利木さんここ最近、BLや百合漫画など、恋愛対象を異性だけにこだわらない作品をよく読んでいるんですけど、もう恋愛は男女であることが前提じゃなくてもいいのでは…、と感じています。世間では、女性だったら「彼氏いるの?」、男性だったら「彼女いるの?」と聞かれる場面がまだ多いけど、そういう質問もいずれなくなったらいいなと思います。将来的には、そういった作品が描けたらいいですね。
(文/渡辺麻美)
『#彼女たちのコンプレックス』(外部サイト)/利木実(C)comico
■あらすじ
桜井鈴香(27)は一見完璧な恋人に見える彼から、モラハラ行為を受けている。同棲している彼との結婚を間近にして悩む鈴香だが、友人も家族でさえも、その気持ちを理解してくれなかった。追い詰められた鈴香は、お悩み相談アプリの「share!」にたどり着きそこで同じく理解されない悩みを抱える“彼女たち”に出会う。
(モラハラ編/パパ活編/ブスと呼ばれた女編/女子会編/整形美人編/ダメな恋に酔う女編/ハラスメント編/闇のmytuber編/モラハラリターン編/推し沼編)