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お芝居に必要なのはテクニックではない、林田岬優「今でも心に刻まれている言葉」

2022-08-28 eltha

林田岬優

林田岬優

 演じるとき、役として「そこにいる」ことができなかったーー。モデルとして数々の雑誌でキャリアを築き、凛とした佇まいや透明感あふれる演技で俳優としても注目される林田岬優は、映像作品に初出演した2016年当時、演じることを自分のなかでどのように昇華していくか思い悩んでいたという。「自分には向いていないのかもしれない」と葛藤を持ちながらも、「演じることをやめることはやめよう」と割り切って経験を重ねてきたからこそ今の自分があるという。

「お芝居はテクニックではない」 ひたむきな姿勢や滲み出る人柄が大きな魅力に

22歳当時の林田岬優(C)ORICON NewS inc.

22歳当時の林田岬優(C)ORICON NewS inc.

――林田さんが女優として役名のある形で登場したのは、2016年『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)で、22歳のときでした。当時ORICON NEWSのインタビューでは「やっと……」という言葉もありましたが、実際にはどういった印象だったのでしょうか?

林田岬優モデルの仕事以外にも色々と挑戦していきたいという思いで19歳のときに上京したのですが、もともとモデルとしてのキャリアが地元であったので、当時の事務所のマネージャーと話して「まずはモデルからやっていって仕事の幅を広げていこう」という考えでした。

――そのまま順調にはなかなかいかなかった?

林田岬優私は「上京したらお芝居ができる」っていう安易な考えでいて、オーディションもワークショップに行っていない状態で受けていたので、時間がかかって当たり前だなって…。むしろ自分の実力からしたら早く挑戦させていただいたほうなんじゃないかなと、今振り返ると感じます。

――当時はお芝居が全然できなかったと振り返っています。演技を始めたばかりの頃は、どういったことがうまくいかなかったのですか?

林田岬優『いつ恋』が決まって、事務所の先輩が受けているワークショップにも参加したのですが、実際に現場に行くと数少ないセリフも言えないし、まずお芝居の基本である「そこにいる」ということができないんです。「セリフを言いに行くぞ」みたいな気持ちでやっていた感じで…。だから、力が入って一言のセリフが言えなくなって、現場を止めてしまうという状態でした。なので、その現場で私はお芝居の壁というよりも、そもそも取り組み方や心構えがまったくわかっていないし間違っているということに気づかされましたね。

――まだ新人のときに現場を止めてしまうというのは、プレッシャーも相当かかったと思いますが…。

林田岬優現場には正直行きたくないと思うこともありました。今思うと準備不足だと思うけど、そのときは自分なりに準備をしていたんですね。ただ、そのやり方が間違っていることにもそのときは気づけなかったから、「どうしたら先輩が演じているようにできるんだろう?」と悩んだり、「私はお芝居に向いていないのかな」と思ったりもしました。

――それでも演技の仕事に力を入れていきたいと思うようになったきっかけは?

林田岬優朝ドラのオーディションを受けたときに、プロデューサーの方からお手紙をいただいたんです。そこに「お芝居はテクニックではないです。あなたのひたむきなお芝居に対する姿勢とかキラキラした姿がとても印象的に残っていて、いつかお仕事を一緒にしてみたいと思っています」といったことが書かれていたんです。

 その言葉がすごく心に響いて、今も私の心の中に刻まれている言葉なんです。みんなよりも時間がかかってもいいから、「お芝居をやりたい」という気持ちはなくさずに持っていようと感じました。やめたら本当に終わってしまうので、「やめることはやめよう」と思いました。

モデルは「話さない女優」と実感 芝居をやっているおかげでモデルの仕事にも好影響

――林田さんは『Oggi』『25ans』『mina』『CLASSY.』などのファッション誌、主要な美容雑誌、ライフスタイル誌などで活躍されています。モデルと演技の仕事を現在どのようにとらえていますか?

林田岬優少しずつお芝居に触れていくことで、モデルという仕事は「話さない女優だな」っていう認識に変わっていきました。例えば雑誌でも、服を着た女性がただ歩くのではなくて、なぜ歩くのかを考えることで、すごく写真にも深みや物語性が出ることに気づいて、お芝居をやっていたおかげでモデルのお仕事にもいい影響が出ました。

――毎回違う女性人の人生や生活を考えているかもしれないので、俳優としても百本ノックのような状態になるのでしょうね。

林田岬優『私が女優になる日』というオーディション番組で、是枝監督が「役作りするときに、まず何の靴を履いているかを意識される方がいる」って言っていて、女優さんもモデルに近いなと感じたんです。パンツを履いているのかスカート履いているのか、ヒールなのかスニーカーなのか…身に着けているもので歩き方も仕草も違ってくる。モデルはすごくそれを考えるんですけど、女優さんもそれを考えているんだって。共通するところがやればやるほど見つかるので、アプローチの仕方は近いものを感じます。

――これまでオーディションに落ちてしまうこともあったと。その間にモデルさんとしての仕事もあって、切り替えは難しくなかったですか?

林田岬優切り替えの難しさにはすごく悩みました。演じるっていう部分ではモデルも俳優も一緒ですよね。だけどオーディションの台本をもらったあと、女優一本でやっている子は私がモデルの仕事をやっている間も役のことを一生懸命考えているんだろうな…という考えになってしまうときもありました(笑)。オーディションはどれだけ落ちても慣れないし、諦めないっていう気持ちがあってもやっぱり落ち込みます。だから、もう落ち込むのも仕事だと思ってやっています。
『新・信長公記』に出演中の林田岬優(C)読売テレビ

『新・信長公記』に出演中の林田岬優(C)読売テレビ

――今は俳優とモデルの仕事を両軸でされていますが、いかがですか?

林田岬優今は両方にいい影響が出ていると思います。慣れもあると思うんですけど、やっぱり集中力が一番です。雑誌の撮影現場でもセットに入るまではスタッフさんと和気藹々とやっているんですけど、入るときにはカッと切り替える集中力が身についたから、今こうやって色々な仕事ができているのかなって感じます。その切り替えは徐々にできるようになってきたもので、若いときはワークショップで学んだらお芝居ができると思っていたんです。実際はもっともっと自分が思うよりも難しいものだったし、月日がかかるものだったと実感しています。今でも自分が目標としているところには行けていないので、時間がかかって当たり前だと本当に思います。

――モデルにとってはプラスである身長の高さが、俳優の仕事ではマイナスに働く場合もあるのでしょうか?

林田岬優それこそオーディションに行って、背があまり高くなくて可愛らしい感じの方がたくさんいたときには、「これは私は違う感じなのかな」って思いながらやっていたこともあります。ただ、尊敬する女優さんでも背が高い方はたくさんいらっしゃるので、むしろ武器にしてやっていくのが一番かなと思います。お芝居をするときに自信のなさが出てはいけないと思うので。私が背が低い役ができないのと一緒で、背が低い方も背が高い役ができない。そこは本当に平等だと思うので、ちゃんと受け入れてやっています。お芝居をやり始めた当初は、身長がコンプレックスになっていた部分はありました。でもそれは言い訳だったと今は思います。お芝居の力があればそこはカバーできるし、むしろ武器に使えるということが経験でわかったことでしたね。

喜劇に初挑戦「ものすごく真面目にやらないと笑えないんだと実感」

『新・信長公記』に出演中の林田岬優

『新・信長公記』に出演中の林田岬優

――俳優は相手と呼吸を合わせて化学反応を起こしていくような感じがありますよね。

林田岬優モデルの仕事もカメラマンさんとかスタイリストさんとかヘアメイクさんとか、みんなで作っていくんですけど、でもやっぱり話さない。女優の仕事は声に出して、ほかの役者さんとお芝居をしていく。台本を読んで自分の役をちゃんと理解して、お話も理解していかないといけない。だから、違いはたくさんありますね。

――現在出演中のドラマ『新・信長公記〜クラスメイトは戦国武将〜』は、クラスメイトが戦国武将だったら…という設定が放送前から話題になっていました。現場の雰囲気はいかがですか?

林田岬優もう本当に男子校みたいで、見ていて楽しいです。まったくピリピリとかはしていなくて、本当に学校にいるみたいな感じです。で、そのみんなが15歳という設定なのも改めて笑えてきてしまって(笑)。
『新・信長公記』に出演中の林田岬優

『新・信長公記』に出演中の林田岬優

――林田さんが演じるのは秘書の役で、原作には登場しません。そういう面で演じる難しさはありますか?

林田岬優私が演じるのはすべてを冷静に見ている秘書の魔村という役なんですけど、原作には登場しなくても台本がちゃんとできていて、そこで魔村はこういう感じなんだなと捉えていたので、演じる難しさとかはあんまりなかったです。ただ、魔村はとてもクールな役で、そういった役は初めてだったので、なりきったり落とし込んだりするのは難しかったですね。

――共演者のみなさんの演技をそばで見て、何か印象的なことなどはありましたか?

林田岬優初日から武将さんたちはみんなすごく熱量があって、私はその武将さんたちを仕切る役なので、自分が思っていたよりももっと熱量を出さなきゃって感じました。台本を読んで自分でイメージをしているんですけど、実際に現場に行って相手のお芝居を見て自分が変わっていくっていうのは、そこがモデルとの大きな違いですよね。みんなすごく真面目で一生懸命だからこそ逆に笑えるっていう作品なんですけど、初めて喜劇の現場を経験させてもらって、ものすごく真面目にやらないと笑えないんだということも実感しました。演じる方を見て、そのシーンをモニターで見て、こういう風に映って伝わるんだなあっていう楽しさがありますね。

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

林田岬優まだまだやったことのない役柄がすごくたくさんあるので、一つ一ついただいた役をすべて一生懸命やっていけるような女優さんになりたいです。作品と向き合って、作品をちゃんと理解して、作品を愛して、どれだけ自分の役も愛していけるか。私は経験がまだまだ浅いので、そこだけはもう誰にも負けないくらいの気持ちでいきたいなっていうのはありますね。

――先ほども「お芝居をやめることはやめようと思った」と言っていましたよね。

林田岬優そうですね。やめないで一つ一つに向き合い続けていくってことですね。監督さんとかみなさん、「お芝居はテクニックじゃない」って仰る方が多くて、それだったらもう役と作品を本当に理解しまくって、気持ちで取り組んでいきたいなって感じました。きっとテクニックもあるのでしょうし、それを使ってお芝居をすることも今後はあると思うんですけど、自分の基盤としては役に向き合って、役と作品のことを好きっていう気持ちは誰にも負けないという思いで取り組んでいきたいなと思います。

『新・信長公記』

(C)読売テレビ

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