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三浦透子、デビューから20年でブレイク 快進撃の裏で乗り越えた“迷いとコンプレックス”

2022-12-22 eltha

 映画『ドライブ・マイ・カー』で日本アカデミー賞新人俳優賞のほか、数多くの賞を総なめにした三浦透子。2019年には映画『天気の子』で主題歌を担当し、紅白にも出場。今年は『カムカムエヴリバディ』、『鎌倉殿の13人』で朝ドラ・大河ともに初出演を果たした。三浦のデビューは、5歳の時のサントリー「なっちゃん」のCMだったが、それから20年の時を経て、俳優・歌手としてブレイクを迎えた彼女の転機とは何だったのだろうか。

初共演の東出昌大は「すごく頼りになる存在」 “微妙な距離感”のヒロインを好演

 現在は長澤まさみ主演ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(フジテレビ系)にキーパーソンとして出演中の三浦透子。今月16日には主演映画『そばかす』が公開されたばかりだが、来年1月6日より順次全国ロードショーされる東出昌大主演映画『とべない風船』では、ヒロインを演じた。

「私は広島という土地が好きで、個人的に縁を感じているんです。子どもの頃に広島ガスのCMに出演させていただき、映画の撮影も『ドライブ・マイ・カー』に続き、これで3回目。今回はスタッフさん含め、広島で活躍される方が多く、全編物語を通して現地で作る意味を感じる作品でしたので、オファーを頂いた時は率直に“参加したい”と思いました」
 『とべない風船』は、広島出身の宮川博至が脚本・監督を担当。数年前に起こった西日本大豪雨の土石流被害で愛する妻と子を失った憲二(東出)、教師になる夢を叶えはしたが、心に傷を負い、縁遠かった父(小林薫)のもとへ来た凛子(三浦)が出逢い、心を通わせていくうち、2人の心を覆っていた闇が消えていく姿を描いた、広島の多島美が舞台のヒューマンドラマだ。

「東出さんとは10年ほど前に初めてお会いして、知り合ってからは長いのですが、共演は初でした。決して楽ではないスケジュールの中で、体力的に過酷なシーンもあったんですけど、とてもフラットな方で、すごく頼りになる存在でした」
 憲二と凛子は、恋人でも家族でもない。東出とは“微妙な距離感”を作り上げた。

「それがこの映画の一番の核であり、この出逢いは本作の象徴かもしれません。恋愛でも友情でも家族でもない、ちょっと距離のある誰かだからこそほぐせる心の何か、距離があるからポロっと言えてしまう何かがあるのではないでしょうか。無言で一緒にいる。そうした時間を実際に広島という土地で重ねていった結果、見えてくる関係性のようなものも感じました」
 役を固めず、現場で感じたままに演じるのが三浦流だが、撮影に入る前には、バックボーンをしっかりと考え、人物像を固めていく。凛子は教職に就いて2年目に鬱を患い、退職した。その経緯や心情は台本には描かれていない。

「本質的には、やっぱり彼女は何か曲げられない強さがあった。だからその反動でちょっと視野が狭くなってしまい、心が疲れてしまったのではないかと思います。脚本に描かれる出来事を1つ1つ結んで、彼女の性格や背景を丁寧に考えながら演じました」

高校進学のタイミングで芸能界引退を考えていた…抱えていた“コンプレックス”とは

 人生の挫折を味わい、瀬戸内海の島を訪れた凛子。5歳から芸能活動を続けている三浦自身はこれまで挫折の経験があったかと尋ねると、高校進学のタイミングで芸能活動を辞めようと思っていたことを明かした。

「お芝居は好きなんですけど、人前に立つことが楽しいと心底思えているタイプではなかったんです。俳優だからといって、決してお芝居だけが仕事ではない。芸能界に入って10年ぐらい経った時に、その部分が苦手かもしれないと悩んでしまったんです」
 そもそも、自分が強く望んで入った世界ではなかった。さまざまな迷いを持つタイプでもあった。それらが彼女の中ではコンプレックスになっていた。

「ですが、周りにお芝居を続けて欲しいと思ってくださった方がいたこと。また、これだけ長い時間やり続けてこられたというのは、何か意味があるものだったのではないかと客観的に思って。…もしかしたら、その“意味”というものをもう少しちゃんと知りたいと思ったのかもしれません」

 それから10年――三浦は代表作『ドライブ・マイ・カー』に出会う。本作で俳優としての確かな手ごたえを得たことも大きかったが、濱口竜介監督からその“意味”を知るヒントを授かっていた。

「私が人前で上手く言葉が出てこなかった経験を話した時に、『言わざるを得ない時が言うべき時です』っておっしゃってくれたんです。もちろんせっかくだから目の前にいる人と分かり合いたいし、伝える努力はしようと思っているんですけど、その言葉はお守りのように持っておこうかなって思ってます」
 そんな彼女が凛子の挫折を分析する。「鬱になるのは心が疲れるってことですから、やっぱり苦しい時間だったんでしょうけど、逆に必要な時間でもあったと思うんですね。くじけなければよかったと私は思わない。その時間を経て、もう一度教師をやろうと思えた時って、何もなく続けていた時よりきっと良い状態で教師をやれるだろうし、決してずっと続けることだけが正解でもない。彼女にとって、島へ行き、父と向き合おうとした時間で得たものも絶対にある。落ち込んだ時にしか考えられないことってあると思うので」

 父が暮らす島への訪問が凛子のターニングポイントとなるが、三浦自身の転機は“上京”だったという。

「故郷の北海道では周りに同じ仕事をしている人は少なくて、ある意味、特別になりすぎてしまって、普段の生活が大変になることもあったんです。でも東京に来て、同世代の役者さんと出会って、色々な刺激を受けて。自分の仕事をより深く見つめられるようになって、俳優の仕事がさらに好きになりました。北海道に住み続けていたら、辞めていたかもしれないですね」

俳優と歌手を「両立している感覚はない」ブレイクしても変わらぬ“表現者”としての姿勢

 結果、仕事の幅も広がった。俳優として着実にキャリアを重ねる中、歌手としては『天気の子』(2019)主題歌に抜擢、紅白出演にもつながっていく。これを三浦は「恵まれていたし、ありがたい経験だった」と振り返る。だが一方で、“1つのことを極めるべき”という考えもある。昨今は副業や兼業は当たり前になってきたが、彼女は今後も二足のわらじでやっていくのだろうか。

「2つのことを両立しているという感覚はあまりないんですよね。もちろん表現方法は違うんですが、私の中では自然に心が行き来しているというか、どちらも“表現者”であることは変わりませんし、今後も“表現者”としての道を歩めたらと思っています」
 ますます活躍の場を広げる三浦透子への世間の注目度は、ここ数年、間違いなく急激に高まっている。デビューから20年、突如向けられたスポットライトに戸惑いはないのだろうか。

「それはありがたいなと思いつつ、環境や状況、人の見る目が変わっても変わらなくても、自分のやることは自分で決めていくのには変わりません。これまで丁寧にやってきたことの積み重ねをしていければいいのではないかと思うんです」

 それは“ブレない”ということとも少し違う。「変わらないことが絶対唯一の良いことだと思ってるわけではなくて、変わりたいと思う瞬間も、自分の中から湧き上がってくるものでありたいなって。“人からこう見られるからこうしよう”ではなく、“なりたい自分になろう”と変化していきたい。今まで続けてきたことがあるからこそ今の状況があると思っているので、今の状況に感謝しているんだったら、今までやってきたことをきちんと続けていくべきかなと思っています」

 その為にも「“表現者”として、にじみ出るものが大切。まず人として、自分が素敵だと思える自分で生きていたい」とまっすぐな目で語る三浦透子。自分自身が「迷いやすい」と自覚している彼女の言葉だからこそ、その一本通った生き方の道筋は、果てしなく強度の高い、“決意”のようにも感じられた。


(取材・文=衣輪晋一)

三浦透子インタビュー撮りおろし

  • デビューから20年を迎えた三浦透子
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映画『とべない風船』
2023年1月6日(金)より 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷、
アップリンク吉祥寺、MOVIX 昭島ほか全国順次ロードショー

監督・脚本:宮川博至
出演:東出昌大、三浦透子、小林薫、浅田美代子
原日出子、堀部圭亮、笠原秀幸、有香、中川晴樹、柿辰丸、根矢涼香、遠山雄、なかむらさち

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