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SNS普及のなか出産・育児の“正しい情報”を知る拠り所に…雑誌不況の中でも30周年を迎えた『たまひよ』の強み

2023-02-21 eltha

 ベネッセコーポレーションが発行する『たまごクラブ』『ひよこクラブ』が創刊30周年を迎える。雑誌不況が叫ばれて久しい中、妊娠・育児雑誌は安定需要がある数少ない雑誌ジャンルとされる。とは言え、今年に入って老舗の著名雑誌が相次いで紙媒体の発行終了を発表していることも事実。あらゆる情報をSNSやネットで入手してきた世代が、親になっていくこれからの時代、妊娠・育児雑誌が担う役割と価値ついて探る。

“読者=ママ(女性)”ではないジェンダー平等のいま、多様な家族のあり方に寄り添った紙面作り

 『たまひよ』の愛称で親しまれる妊娠雑誌『たまごクラブ』と育児雑誌『ひよこクラブ』が、創刊30周年を記念した企画「30年の子育ての物語」を行なっている。第1弾では創刊当時の『たまひよ』に登場した赤ちゃんやパパ・ママから当時のエピソードや写真を募集。

「出産や子育てで大変だったことも、30年経ったいまでは大切な思い出。ご自身の体験を振り返る長いお手紙を寄せてくださる方も多く、私たちも感動しながら読ませていただいています。当時の赤ちゃんの中には、すでにパパやママになっている方、出産・育児をひかえている方もたくさんいます」(『たまひよ』編集統括・米谷明子さん)

 この30年の社会の変化とともに、妊娠・育児を取り巻く環境も大きく変わった。昨年、東京都で「パートナーシップ宣誓制度」が設けられ、ジェンダー平等が掲げられる中で、育児雑誌においても親の性別を限定しない誌面づくりが求められる。

「私たちもかつては“読者=ママ(女性)”と捉えていましたが、近年は読者の性別を限定しない表現を強く意識しています。アンケートからも多くのパパが『たまひよ』読者になっていることが伺えますし、若い世代で『チーム出産・育児』の志向が高まっていることは、喜ぶべき変化です。将来的には、パパでもママでもない人が育児をする、さらに多様な家族のあり方が当たり前になるでしょう。常にその時代の読者に寄り添い続けられるよう、『たまひよ』も時代とともに変わっていきたいと考えています」

雑誌不況の中でも完売 企業やインフルエンサーのハブとなる妊娠・育児雑誌の強み

 多くの雑誌が紙媒体の発行を終了し、デジタルに移行している。『たまひよ』もアプリ(『まいにちのたまひよ』)をメディアの核としてを展開しているが、一方で紙媒体にもますます力を入れている。昨年には、妊娠期別の3冊(初期・中期・後期)と育児期別の3冊(初期・中期・後期)の計6冊、年4回刊行に大きくリニューアルした。

「一昨年『ひよこクラブ』が複数号にわたって完売するという出来事がありました。コロナ禍で両親学級が相次いで中止になったり、立ち会い出産ができなかったりといった不安の中で、“本当に正しい情報”を知る拠り所として『たまひよ』を求めてくれた方が多かったのだと思います」

 妊娠・出産にまつわる情報はネットにも溢れている。しかし膨大かつ玉石混交の情報を目の当たりに、しかも「初めての出産と育児」という心細さの中で、情報の取捨選択に迷っている現代のたまひよ世代の姿が伺える。

「個人の発信や口コミは共感性もある一方で、育児環境は人によって異なります。ものすごくこだわった離乳食を見て『自分にはここまでできない』と落ち込んだり、育児を否定されたような気持ちになることもあるでしょう。『たまひよ』のスタンスは創刊時から一貫して“すべての読者が主役”であること。ですから『たまには手抜きしたい』といった本音や感情も否定せず受け止めます。その上で厚生労働省や医者の監修といった信頼できる情報を届ける。そうした情報を出す順番やバランスには、とても気を配っています」

 すべての読者が主役というスタンスは、『たまひよ』の公式インフルエンサー組織でもより強化されている。

「インフルエンサーの皆さんには、新商品モニターやアンケートなどで誌面づくりに協力していただいています。活動期間は妊娠中〜お子さんが2歳になるまで。この期間にいる方々と接点を持ちたいと考える企業は多いのですが、人口全体から見て極めて少ないため、接点づくりがなかなか難しいと聞きます。ピンポイントの世代を網羅したインフルエンサー組織として、期待してくださってる企業は多いですね」

 広告は雑誌の存続にとって欠かせない。企業がピンポイントで訴求したい読者が確実にそこにいること。さらに、雑誌がハブとなって企業とインフルエンサーを繋げる機能があること。雑誌不況の中で妊娠・育児雑誌が強いのは、そうした要因もありそうだ。

SNSで炎上も…「育児はつらい」風潮が蔓延 祝福の鐘を鳴らすのが『たまひよ』の役目

 30年前に比べて妊娠・育児関連のサービスは格段に増えた。それでも出生率は年々低下している。原因は複数絡み合っているが、気になるのは「育児はつらい」という空気が、かつて以上に世の中に蔓延していることだ。

「育児は体力を使いますし、夜眠れないこともあります。それは今も昔も変わりません。ところが今は誰もが情報発信できる時代。たまには言いたい愚痴や不満が、実態以上に深刻に聞こえてしまうところもあるのかもしれません。またネットニュースなどは、不安を煽る情報をクローズアップしがちです。これから妊娠・育児をひかえる若い世代を後ろ向きな気持ちにさせるのはどうなんだろう、と思うこともあります」

 ネットではしばしば「ベビーカー論争」や「子どもの騒音」が炎上する。「たまひよ妊娠・出産白書2022」の調査で80%以上が「日本は産み育てにくい社会だと思う」と回答しているのは深刻だと言わざるを得ない。

「本来、妊娠・育児は祝福されるべきこと。その価値はいつの時代も永遠に変わらないはずです。社会からの祝福の声が聞こえづらくなっているのであれば、『たまひよ』はもっと大きな声で『おめでとう』を伝えなければいけないという思いを強くしています」

 『たまひよ』では生後0〜1ヵ月の保護者に「新生児向けお誕生ギフト」を応募者全員に無料進呈している。こどもビームスとコラボした肌着や、新生児育児に特化した情報誌などの詰め合わせは初めての出産・育児で不安いっぱいの中、どれほど心強いだろう。

「祖父母世代もかつてのように子育てに参加するのではなく、自分の人生を主体的に楽しむ方が増えています。現代は誰もが自分らしく生きることが尊重されますし、それはとても素晴らしいことです。一方で少子化の観点から社会全体で子育てを支えていくことが重要になっています。この一見、相反するような価値観にどう整合性をつければいいのか──。『たまひよ』でも社会全体の子育ての新しいあり方を模索し、産み育てやすい社会づくりに寄与していきたいです」

(文/児玉澄子)
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