【医師解説】赤ちゃんの“いびき”は大丈夫? 体調不良や睡眠障害のサインであることも
2023-11-15 eltha
一時的であれば心配ない…赤ちゃんでも大人のような“いびき”をかくことがある
赤ちゃんは、大人と比べれば呼吸の通り道はもともと細いため、ちょっとしたことで鼻息が大きくなったり、いびきをかいたりします。ましてや自分で鼻をすすることも、鼻をかむこともできません。風邪やアレルギーで鼻水がたまる、鼻くそがつくだけでも鼻呼吸ができず口で呼吸するようになり鼻息、いびきをおこすようになります。鼻の通りを良くすることで、いびきは改善されますが、かといって綿棒でむやみに鼻の穴を掃除したりすることは傷をつけることによりかえって鼻詰まりを悪化させることがありますのでやめておきましょう。
また、赤ちゃんの喉は、喉頭(大人の喉仏の部位)が上方に位置し舌が押し上げられているため、喉のスペースが小さくなっていますので仰向けに寝ると気道が狭くなりやすいこともいびきの原因となります。横向きに寝かせることでいびきが軽減されることもあります。
一方で、赤ちゃんは疲れやすく、深く眠る特徴があります。睡眠中に筋肉が緩むと、気道がさらに狭くなり、いびきが出やすくなります。この場合は、睡眠の質を高めることや、部屋の湿度を適切に保つことで、いびきが改善される可能性があります。
赤ちゃんのいびきは、上記のような赤ちゃん特有の理由で鼻や喉の気道が狭くなることによるものがほとんどですので、むやみに心配せず、どのようないびきかよく観察してください。しかし場合によっては、病気のサインになることもありますので以下のような症状がある場合は、注意が必要です。
「激しいいびきが毎日続き何度も起きてしまう」、「睡眠中に呼吸が止まる、口を開けて苦しそうにしている」、「いびきに伴って胸(鎖骨の上、みぞおち)がへこむ」、また日中でも「ミルクを飲むときに顔色が黒くなる」といったことも注意したいものです。これらの症状がある場合には病的原因があるかもしれません。
赤ちゃんのいびきは、体調不良や睡眠障害のサインであることも
しかし、このアデノイドは年齢により肥大していきますので肥大が重症の場合は、風邪でなくとも常にいびきをかくようになり口呼吸となり、睡眠時に時々呼吸が止まることもあります。さらに、重症になり毎晩睡眠中に呼吸が何度も止まるようになった状態を「睡眠時無呼吸症候群」と呼ばれ、酸素不足や睡眠不足によって、成長や発達に悪影響を及ぼすことがあります。無呼吸の回数が多い、時間が長い場合は、大人の「睡眠時無呼吸症候群」と同様に、長期にわたると、心臓への負担が強くなります。
これらの病気は、早期に発見すれば、薬や手術などで治療することができます。しかし、放置すると、重篤な合併症や後遺症を引き起こすこともあります。赤ちゃんのいびきは、体調不良や睡眠障害のサインであることもあります。いびきが激しくて呼吸が苦しそうだったり、無呼吸や陥没呼吸がみられたりした場合は、早めに小児科や耳鼻咽喉科などの医療機関を受診することをおすすめします。
「親御さんが、『いびきが心配です』と赤ちゃんを連れ受診されますが、それらの多くは寝ている時に口は閉じていて、鼻息がズルズルしているだけのことが多いです。音がしていても口を閉じて熟睡しているならばいびきではなく、問題とはならない呼吸と考えます」(もたい耳鼻咽喉科の院長・甕久人さん)
監修者 甕 久人(もたい ひさと)さん
「もたい耳鼻咽喉科」院長。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医、日本聴覚医学会会員。名古屋市立大学医学部卒業後、大学附属病院ではがんを専門に研究、豊橋市市民病院にて臨床経験をつんだのち、地域に根ざしたクリニックの実現のため「もたい耳鼻咽喉科」を愛知県東海市に開業。