■前回のあらすじ
文武両道だったキミちゃん。生徒会長として卒業式で生徒代表挨拶をするはずだったのですが…受験に失敗したショックのためか、卒業を前にして、学校に来なくなってしまいました。
合格確実と誰もが疑わなかった第一希望の高校を落ちてしまったキミちゃん。
生徒会長を務めていたキミちゃんは卒業式の生徒代表挨拶をする予定でした。でも、卒業式を前にして学校を休み続け…当日来れるかわからないまま卒業式を迎えました。
今回が最終回です!
※このお話は実際の経験をもとに、フィクションを交えてお伝えしています。登場人物の名前は仮名です。
キミちゃんは卒業式の生徒代表の挨拶の場に姿をあらわしました。
その姿はクラスが違う私が見ても、というか誰が見ても痩せ細って衰弱している様子でした。
マイク越しから聞こえてくる弱々しい声。
そんな状態ですら生徒代表の挨拶を務めあげようとする意志の強さに目をみはるばかりで、話していた内容は全く覚えていません。
この時私は、キミちゃんが卒業式に姿をあらわしたのは生徒会長として最後の挨拶をするためだと思っていたのですが…
時が流れ、成人式でのことです。
中学を卒業してから久々に再会する友だちも多い中、みんなの変わったり変わってなかったりしている様子にソワソワしながら式が始まりました。
新成人代表の挨拶。誰だろう。と思っていたらキミちゃんでした。
卒業式ぶりに見たキミちゃんは健康的な女性そのもので、堂々と代表の挨拶を読み上げていました。
元気そうで良かった
実際元気かどうかはわかりませんが、卒業式に明らかに弱っていた姿を見ていたので晴れ姿のキミちゃんを見て少し安心しました。
小学一年生以来、同じクラスになっていなかったキミちゃんとはこれきりになるだろうと思っていたのですが…
成人式が終わった後、キミちゃんから声をかけてきました。
そしてまさかのあの事件のことを謝ってきたのです。
ビックリしすぎて私まで震えました。
卒業式の日に来たのはそのためでもあったのかと知りさらに驚きました。
「大丈夫だよ」「もういいよ」かける声は沢山あったはずなのに、あまりに驚き過ぎて振り絞って出た言葉は
「うん」
強張った笑顔で「うん」と言うのが精一杯でした。深々と頭を下げてキミちゃんは去って行きました。
時が流れ、私も子どもを産み、その子が今年小学一年生になりました。今でもあの時、どうしたら良かったのか考えます。
もし我が子が同じ経験をしたら…?
もし、キミちゃんがしたのと同じような行動をしてしまったら?
そんな時どうしたらよいのでしょう。
キミちゃんのようにしっかりした子でも、強すぎるプレッシャーで押しつぶされれば、歪んでしまうことがある。子育てをしながら時々思い出します。
もし子どもが間違ったことをしてしまったときは、子どもを追いつめる何かが背景にあったのでないか、まずは探ろうと思うのです。
(はなうさ)