『知らないと増えない、もらえない 妻のお金 新ルール』(講談社)から、妻のお金についての衝撃の事実と対策を紹介します!
106万円の壁の撤廃、年金3号廃止、遺族年金制度の改正の議論など、
「妻のお金」に関わる議論が盛んに行われている昨今。生活費の値上がりもあり、将来のお金について不安を感じているママたちは大勢いることと想像します。
そんなママたちにお悩みのアドバイスを与えてくれるのが、井戸美枝さんの
『知らないと増えない、もらえない 妻のお金 新ルール』(講談社)です。

ファイナンシャルプランナーであり、社会保険労務士である井戸さんが本書で提案するのは
「妻のお金」についての知識です。妻の立場の素朴な疑問から複雑な制度の内容まで、Q&A形式のわかりやすい解説で、収入や働き方から老後資金などお金について漠然とした不安を抱える全てのママたち必見の一冊です!
本記事では、そのアドバイスの一部を紹介します。
<著者 井戸 美枝さん プロフィール>
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、社会保険労務士。生活に身近な経済問題や年金・社会保障問題を専門とし、「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々のメディアで情報を発信。近著に『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP社)『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)などがある。
■「財産の半分は妻のもの」は勘違い!?
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「結婚しているのだから、夫が稼いできた財産の家のもので、
半分は自分のものになる」…漠然とそう思っている人は少なくないと思います。しかし井戸さんは、その
認識は「勘違い」であり、「夫が稼いだお金はあくまでも夫のものでしかない」という事実を伝えています。
▼夫が稼いだお金は夫だけのもの!?
「夫のお金は私のお金でもありますよね?」という妻の質問に、井戸さんはきっぱり
「NO」を突きつけます。なぜなら夫名義の口座に入っているものは「夫のお金」であり、夫の給料の一部を妻の口座に移すことも年間110万円を超えれば贈与にあたるのです。

すなわち「自分名義の口座がない、あるいは
自分名義の口座に残高がなければ「妻のお金は一円もない」ことになるのです。
「家のお金の半分は妻のもの」というイメージは、財産分与制度から来ていることも。ただし、これはあくまで離婚した場合の話。
財産分与は「婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配する」という制度。夫婦で2分の1ずつ分けることを原則とします。
▼夫が万一の時の遺族年金給付が「期限付き」に!?

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さらに、本書では、夫に万が一のことがあったときの
「遺族厚生年金」制度が大幅に変更になりそうなことにも言及しています。現行では無期限のところが「有期給付」に変更というのは衝撃です。「夫に万が一のことがあっても遺族年金があるから大丈夫!」といえる状況でないのは間違いないと井戸さん。
【最新情報】 2025年6月、年金制度改革の関連法が参議院を可決・成立。2028年4月から20年かけて移行していき、最終的には、受給期間が男女とも原則、配偶者の死去から5年間に。配慮が必要な場合は最長で65歳まで受け取れる仕組みに改められました。
▼他にも大きな理由が…それはインフレ!

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そして、インフレ基調になり、今後は
「節約」だけでは乗り切れなくなる可能性が高いこと。

女性の平均寿命はどんどん伸びており、夫より長生きする可能性が高いことや、離婚した夫婦の5割以上が養育費を受け取っていないこと等々、「旦那がいればどうにかなる」「公的な制度が守ってくれる」と楽観視することのリスクを丁寧に説明してくれています。

Point:自分のものだと主張できる「妻のお金」を試算してみよう
■「年収の壁」を超えないと将来どうなる? 本書では、年収の壁の見直しなどによって昭和世代の母親のような
“扶養される生き方”は難しくなってきていることや、年収の壁と向き合い方について懇切丁寧に書かれています。
夫側が「無理に正社員にならなくても」「扶養の範囲内で働いてほしい」と希望する家庭もあると思いますが、本書では、
妻が扶養内で働いたことで得するのはあくまで「夫」であり(夫側の税金控除が増えるから)「妻が得するのではない」というハッとする問いかけも。

もし扶養のままでいた場合、万が一
夫が亡くなったり、離婚したりした場合、自分が生きていくお金が足りない、ということにもなりかねません。
「扶養内でパートをする」という働き方が本当にベストなのか、このタイミングで見直してみると良いかもしれません。
▼「パートタイムしかない」と思い込んでいませんか?
共働きが増えているイメージの昨今ですが、本書によるとフルタイムで働いている妻の割合は、じつは40年前との比較で5.4%しか増えていないそう。「扶養を外れると損」「家事と育児と両立するには、パートタイムしかない」と思い込んでいる人が少なくないことがわかります。

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そこで誤解しがちなのが『壁』という表現。井戸さんは「税金は、壁を超えた途端に重くのしかかるのではなく、超えた分の所得に応じて少しずつかかってくるもの」と説明。突然目の前にそびえ立つ「壁」のイメージは実態にそぐわず「これ(年収の壁)を意識して働き控えすることも意味がない」という鋭い指摘も。
▼壁をどれくらい超えれば得になる?
それに、扶養を外れて自分名義の社会保険に入っておくことのメリットもあり、
「収入と手取りの逆転現象が起きるのは、壁を“ちょっと”超えた場合だけ」ということは心得ておく必要があるでしょう。
また本書では、じつは最も意識すべきは「130万円の壁」と紹介されています。130万円は国民年金と国民健康保険についての扶養の壁。現状の制度では、扶養に入っていても年金額は変わらないため「壁を越えても特にいいことがありません」と井戸さん。
しかし、手取りと収入の逆転現象は、あるラインで正常化すると次のように説明されています。
●「106万円の壁」を超えても…125万円を超えれば、手取り収入アップ!(+社会保険の恩恵も!)
●「130万円の壁」を超えても…170万円を超えれば、手取り収入アップ!

会社員や公務員の配偶者に扶養されている人の年金は「第3号被保険者」と呼ばれますが、世間的に風当たりが強くなっているのも事実。将来同じ制度が続くとは限りませんし、妻自身が働いて入る厚生年金は国民年金よりも手厚い保障があり、働けば働くほど年金額を増やすことも可能とのこと。
▼壁を気にせず働いた方がいい理由

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壁を超えて働くと、税金や保険料は増えながらも「世帯収入がプラスになる」という事実は見逃せないもの。たしかに悩みどころですが「将来的に働き続けそうならば、
壁を気にせずに働いたほうがいいのではないか」と井戸さんは提言しています。
Point:「壁」を越えても、125万円・170万円のラインで手取りは回復する!
■「いったん育児に専念」で約1.7億円を失う!?妻の仕事に大きく影響するのが「育児」との兼ね合い。「仕事か?育児か?」という葛藤にはそれ相当の覚悟が必要になってきますね。夫の理解や共感が得られないとなれば、なおさらです。

特に出産前後は体も生活も変化し、仕事を続ける不安も大きいもの。会社を辞めて出産や育児に専念し数年後に復帰するプランが頭をよぎる人もいると思います。
しかし井戸さんは「とりあえず、いったん会社を辞めよう」という考えは、その時点では気分を軽くしてくれるかもしれないが「長い目で見ると悪手」として、待ったをかけます。
▼職場復帰が益々厳しくなる理由とは?
なぜなら、
テクノロジーが進化する時代に、6〜7年も休むことが死活問題になりかねないから。これからは益々「ブランクを経て仕事に戻る難しさ」に直面することが予想されます。

また、復職時に希望条件の再就職が難しく、やむをえずパートという働き方になった場合、正社員とパートでは、
生涯年収の差は、なんと約1.7億円と試算されているそうです。
「年収の壁を超えてパートでどれだけ長時間働いていても、正社員の年収には及ばず、将来の年金額の差も大きい」と井戸さんはアドバイス。
▼公的支援を使ってスキルアップ!
もちろん出産後に副業や起業などで収入アップに成功する女性もいますが、具体的な計画がない限りは
「できる限り会社を辞めない」ことが、ある程度の世帯年収を確保する最善策となるでしょう。
また、資格取得などで選択肢を広げ、両立を目指す道もあります。
スキルアップなどの公的支援制度は充実してきており「利用しない手はありません」と井戸さんも推奨しています。
Point:育児休暇制度や公的支援制度を利用して「辞めない」選択を!
■家計の泣き所「教育費」…どうすれば?子育て中のママが一番頭を悩ませる「教育費」。子どもの意思の変化、受験の合否などによって、かかる費用は大きく変わります。
井戸さんも、教育費は家庭の方針や進む道によってあまりにも違うため、「平均で1000万円かかる」という
平均が参考にならない、家計の泣きどころだと指摘しています。
一方で、教育費は、介護費や老後資金などに比べて
「貯蓄計画のロードマップを描きやすい」ことも特徴といいます。
▼小さな頃の習い事に要注意!
本書では、学資保険と貯蓄の考え方、教育ローンや子ども自身の借金となる奨学金のことなど、専門家の立場から詳しく説明されています。また、井戸さんが注意を促すのは、小さい頃の習い事に費やすうちに将来の
大学進学の費用が捻出できなくなる可能性がある、ということです。
やはり現代社会においては、
大学に通う前提で学費の準備はしておいたほうがいい、とアドバイスしています。

先の読めない時代だからこそ、親の役目は子どもが「しぶとく生きていける力」をつけてあげることではないか、という井戸さんのメッセージには、多くの人が共感するのではないでしょうか。
Point:教育費は、大学進学を想定して計画的に準備を!
■老後資金は「ストックよりフロー」が重要最後に、教育費と並行して考えていかなければならないのが「老後資金」。

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老後資金のやりくりは先代から学びたいところですが、今の現役世代は、親世代のように
「60〜65歳で引退して、年金だけで生活する」という老後の過ごし方は望めない可能性があります。
加えて、物価の値上がりが続く昨今、「自分たちの老後に一体いくらのお金があれば十分か」もイメージしにくくなっていますよね。
但し、少子高齢化が進んだとしても年金財政の運用は良い状態で、
年金がもらえない可能性については「絶対にありません」と井戸さんも断言しています。
一方で、寿命が伸びるなか「公的年金だけ」では十分でないとアドバイス。以下の
3本柱の組み合わせで考えることを促しています。
(1)公的年金
(2)企業年金やiDeco
(3)足りない分は働く
そして出産後と同様、重要なのは「仕事を
辞めないで、できるだけ長く働くこと。貯金があれば安泰と考えがちですが、引き出し続けていればゼロになってしまいます。
あくまで年金の足しが前提なので、現役時代ほどの収入ではなくて大丈夫。まとまった収入は税金も高くなるため、
「ちびちび長くお金が入ってくることが重要」、と井戸さんは推奨しています。

長く働くと、受け取る年金額も増えますし、「人のつながりや生きがいにもなり得る」と井戸さん。仕事のメリハリと、無理のない程度に頭や体を動かすことは健康にも役立ちそうですね。
Point: 老後は「資産(貯金)」よりも「収入」を重視しよう
そのほか、資産運用や各種給付金について「聞いたことがあるのによくわからない」お金にまつわる専門用語集など、ママたちが自分自身の人生やお金を考えるにあたって有用な情報が余すことなく紹介されています。
▼必読!井戸先生とゆむいさんの体験談
さらに本書のもうひとつの読みどころは、
井戸先生自身が専業主婦からどうやってキャリアを積んできたのかと、そしてコミックパート担当の
漫画家ゆむいさん自身の「妻のお金」についても紹介されており、二人がお金の自立をどのように果たしたかの実話もとても参考になると思います。
「妻のお金」について少しでも気になることがあるママは、この機会にぜひ本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
※本記事で紹介する情報は、2025年8月時点のものです。

働く妻、扶養妻、専業主婦妻、元妻……すべての「妻」のためのお金の本。物価が高すぎる。節約も限界。子供の将来も自分の将来も不安。収入の壁だけじゃなく、お金をとりまくさまざまな制度が変わりつつある今。「お金で失敗したくない」と不安を抱えるすべての妻に捧げます。
(外山ゆひら)