■合理的で、悪びれる様子はないけれど…昼過ぎ、園の帰り道。
門の前で、えりかさんが娘と手をつないで立っていた。
「あ、彩香さん〜」
いつもと変わらぬ笑顔。明るい声。
その姿を見た瞬間、喉の奥に何かが引っかかるような感覚が走った。
(今、言わなかったら……きっと、ずっと言えない)
私は歩み寄りながら、自然を装って声をかけた。
「ねえ……この前のカーディガン、どうしたの?」
えりかさんは一瞬ぽかんとした顔をしたあと、すぐに「ああ〜」と笑った。

その一言に、胸の奥がずきんと痛んだ。
「……処分って、リユースショップに?」
私の声が少しだけ硬くなったのを、自分でも感じた。
「うん。誰かに使ってもらえたらいいな〜と思ってさ。もったいないし? 捨てるのもアレだし」
さらっと言うその口調に、“悪びれた様子”はまるでなかった。むしろ、合理的で正しいことをしたような顔だった。
「……ごめんね。私、その服、たまたま見つけちゃって」
「え、そうなんだ?すごい偶然じゃない?」
「うん、でも――少し、ショックだったよ」
■それでも傷ついた…正直に気持ちを伝えると?私が目を見て言うと、えりかさんの表情が、ほんの一瞬だけ曇った。
「え、なんで? もらった服だし、 一度も着ないまま捨てるより、知らない人でもちゃんと使われた方がいいじゃん?」
問い返されて、私は一瞬、言葉に詰まった。
そう問われれば、確かに“ルール違反”をしたわけじゃない。
でも――それでも、傷ついたのだ。
「……ううん。ダメとか、そういうのじゃなくて。あの服、娘がすごく気に入ってたの。だから、大事にしてて……それを手放すの、ちょっとだけ迷ったんだ」
言葉を選びつつ、続ける。
「でも、えりかさん達の役に立つならって手放したんだけど……」
えりかさんは、気まずそうに笑っていた。
そして、肩をすくめて言う。

えりかさんは面倒くさそうにそのまま去っていった。
「私も、それなら譲らなければよかったよ…」
思わず、呟いていた。
※この漫画は読者の実話を元に編集しています。また、イラスト・テキスト制作に一部生成系AIを利用しています。
(ウーマンエキサイト編集部)