■保育園で聞いてしまったママ友たちの会話に…週明けの午後。
保育園のお迎えの時間、私はいつものように少し早めに着いて、門の前で待っていた。
「ねえ、それほんとに言ったの?」
ふと聞こえたのは、後ろのベンチに座っていた2人のママたちの声だった。
最初は聞き流すつもりだった。
でも、その中に聞き覚えのある名前が出てきて、思わず足が止まった。
「うん、佐伯さんがさ。いらなくなった服ぐらいで、恩着せがましいって」
「え、それって……岡本さんのこと?」
「たぶん。なんか、文句言われたらしくて。売ったくらいで責められるとか重すぎって、愚痴ってたよ」
私の心臓が、どくん、と大きく打った。
少し離れていたけど、その会話は私の耳にまっすぐ刺さった。

私は、言葉を選んで伝えたつもりだった。
怒りたかったわけじゃない。ただ、悲しかっただけ。
“ありがとう”の奥に、少しでも心があると信じていたから。
■いっそのこと服を取り返したい。でも…でも、えりかさんにとっては――

手元のバッグを握る手に、力がこもる。
何気なく視線をあげると、ちょうどえりかさんが門の向こうに現れた。
いつも通りの、華やかな笑顔。
そしてその隣には、譲った記憶のあるワンピースを着た娘さんの姿。
(……それは着せるんだ。でも、すぐにまた売るんだよね)
そう思った瞬間、いっそ取り返したい、と思ってしまった。
彼女と目が合う。すぐに外らされる視線。
納得はできない。でも、一度は譲ったものにいつまでも未練を持つのも、やめないと。
私はそっとその場を離れる。
バッグの中で、携帯電話が震えたけれど、すぐに切れる。
少し冷たくて、涙のかわりに心を刺してくるような風が吹いていた。
※この漫画は読者の実話を元に編集しています。また、イラスト・テキスト制作に一部生成系AIを利用しています。
(ウーマンエキサイト編集部)