■知らない子のヘアゴムも作ることに…
坂井さんがそう声をかけてきたのは、週明けのお迎えのときでした。
「この前つけていったら、◯◯ちゃんママにも『どこで買ったの?』って聞かれてさ〜。手作りって言ったら、『うちの子にも欲しい!』って言われちゃって」
そう言いながら、封筒を差し出されました。その中には、細かく切られた可愛い布たちが入っています。
「これ、家にあった余物なんだけど、これで作ってくれたら嬉しいな〜。もちろん急がなくて大丈夫だから!」
“急がなくて大丈夫”――その言葉に、私は少しだけほっとしました。
でも同時に、また夜なべコースかな…という不安も残りました。
「うん、大丈夫。できるだけ頑張ってみるね」
■ヘアゴムだけじゃなく、巾着も?次の日、私は結芽のリュックから外れかかっていた巾着を付け直していました。
その様子を見ていた坂井さんの目が、それを捉えました。
「ひよりさん、その巾着もしかして……」
その言葉に、嫌な予感が過ぎります。
「あ、これも作ったの?やだ、めっちゃ可愛い!“ゆめかわ”ってやつじゃん〜!ユニコーン柄って、うちの子も絶対好きだわ〜!」
「え、ほんと? ありがとう」

一瞬、浮かんだ考えに返事が遅れてしまいました。
「えっ……」
「こんな素敵なもの作れるの、ほんとすごいわ! じゃあ、よろしくね!」
坂井さんは満足げに手を振って帰っていかれました。
私は笑顔のまま固まってしまい、しばらく動けませんでした。勢いに負けてしまったと少し後悔しました。
頼られるのは、少し嬉しいです。でも、少しだけ違和感もありました。
(あれ……? 私、どうして作らないといけないの?)
夜、娘が寝静まったあと、また針と糸を手に取ります。
いつも通り、手は動くのに、どこか気持ちが落ち着きませんでした。
※この漫画は読者の実話を元に編集しています。また、イラスト・テキスト制作に一部生成系AIを利用しています。
(ウーマンエキサイト編集部)