以前フランスのチョコレート会社に勤めていたとき、自腹では手の出せないチョコレート作品をいやというほど試食できる至福の日々を送っていましたが、中でも感動をおぼえたのが「ショコラショー(ホットチョコレート)」でした。
それまで、ホットココアといえば子供向けのものか、よほど疲労して大量の糖分を手っ取り早く摂りたい時の非常用ドリンク、くらいにしか考えていなかったのですが、その会社が製造しているのはまさしく「大人の飲むショコラ」。
価格も高いため、国内の取扱店はほとんどないようでしたが、当時サロンドショコラでそちらを提供したところ、長蛇の列ができてあっという間に完売してしまったことを覚えています。
その特徴はまず、濃厚であること。ひと口飲んだとき、口の中に広がるのはまるで生チョコをゆっくりと舌の上でとろかせた時の感覚そのものなのです。ほどよくビターで、ショコラのアロマが際立っていて、何よりも虜にさせるのはその舌触りでした。
そんなショコラショーをおうちで自作できたら、バレンタインに彼を招くために最強の武器になるのでは!? こればっかりはラッピングして外で手渡せないので、ご足労いただくしかありませんからね(フフフ)。
レシピはネット検索すれば星の数ほど出てきますが、こっそりお伝えしておきたい重要ポイントがいくつかあります。
1.材料には必ず、高品質なクーベルチュールチョコレートを普通の板チョコと異なり、カカオマスに加えて植物油脂ではなくカカオバターを使用しており、ホットでいただくときのなめらかさ、コクがまったく違います。製菓材料を扱うお店で購入できます。
2.チョコ:牛乳:クリーム、の黄金比率基本の作り方は、刻んだチョコレートに温めた牛乳と生クリームを注いで溶かしていく、というごく簡単なもの。まぁ、チョコを細かく刻むのがじつはもっとも手間だったりします。インパクトのある濃厚ショコラショーにするには、思い切った配合比率にしたいですね。
いろいろ試したところ、黄金比率はチョコ(g):牛乳(ml):生クリーム(ml)=1:2:2。大量には飲めないと思うので、デミタスカップに注いでナッツやドライフルーツをおしゃれにトッピングしても。
3.チョコレートは、とても温度に敏感温めすぎるとカカオバターが分離して脂っこさが出てきたり、クーベルチュールが持つベルベットのような舌触りが損なわれたりします。
理想では湯煎しつつ60〜65℃でチョコレートを溶かし、同温度のミルクなどと混ぜていくのがよいのですが、家庭でそこまでの温度管理は難しいのが現実。チョコレートは「人の体温で溶ける」ことを思い出しつつ、熱しすぎないようにしましょう。牛乳や生クリームは粗熱をとってから少しずつチョコレートに加えるようにします。
これらのポイントをふまえておけば、バリエーションは無限です。リキュールやスピリッツでアクセントをつけるもよし。ハーブやスパイスなどで香り付けしたいときは、牛乳と生クリームにそれらを入れて一煮立ちさせ、漉しながらチョコに注げばOK。
子供にはもったいない、贅沢な大人ショコラショーをご堪能あれ!
(Kikka)