会社員に転身した片瀬那奈、「このままでいいのかな…」立ち止まった40手前、挫折を経て見えた“自分軸”の働き方
2022-12-26 08:40 eltha
■「41歳にして天職に出会ったんじゃない?」新しいキャリアでのやりがい
オフィスでも一際目立つ華やかな佇まい。しかし一社員であることに変わりはない。名刺交換をさせていただいたが、部署や役職といった肩書がないことが気になった。
「肩書がありすぎて書ききれないんです。業務的には企画開発、商品開発、マーケティング、ブランディング、サイトの精査、社長室付みたいな仕事もしています。あとはモデルもですね。『世界一、新入社員らしくない動きをしてる』と言われてます(笑)」
現在は週5日で出社している。そもそものきっかけはロコンドの田中裕輔CEOから、片瀬のYouTubeチャンネルに案件の問い合わせがあったことだった。
「前からロコンドという会社に興味がありサイトもよく見ていたので、せっかくお会いできるならと『ロコンドで実現したいアイデア』を50個くらい用意していったんです。それで当初 は『片瀬那奈、社員になる!』みたいな企画をやろうというお話になったんですが、それだと視聴者さんを騙す感じにもなってしまう。だったら本当に入社したほうがいいのでは? とトントン拍子に話が進んだんです」
当時持っていったアイデアのいくつかは、すでに実現に向かって動いているという。
「自分から発信したアイデアが形になっていくのがとても新鮮でやりがいがありますね。芸能界は自分がどんなにやりたくても、必要とされなければ仕事として成立しないというジレンマもありましたから。もともとビジネス書を読むのが好きでしたし、企業研究みたいなことも趣味でしていたので、親しい人たちからは『41歳にして天職に出会ったんじゃない?』と言われますね」
■全力で駆け抜けてきた芸能生活 40歳を前に味わった初めての挫折
17歳でデビュー以降、モデル、女優、歌手、司会など幅広いジャンルで活躍。芸能界の第一線を走り続けてきた。
「高1でスカウトされたので、アルバイトもしたことがないんです。もともと目立つのが好きなタイプではなかったんですが、ヘアメイク志望だったので“される側”を経験しておくのもいいだろうと。まさかずっと芸能界で生きていくとは想像もしていなかったのですが、『やるからには150%出し切る!』みたいな性格は向いていたところもあったのかなと思います」
途切れることなく舞い込む仕事に全力で取り組みながらも、芸能界で夢や目標を持ったことは「なかった」と振り返る。
「芸能の仕事ってだいたいゴールがあるんです。連ドラだったら3ヵ月でワンクールだったり。その1つ1つの現場で150%を出し切れば、必ず明日の仕事に繋がるという想いでやってきて、おかげさまでずっと恵まれた環境にいさせていただきました。その分、遠い未来を見据えて『こうなっていたい』と考えることもなかったんです。だけど40歳が近づいてふと立ち止まったんですよね。このままでいいのかなって」
折しもスキャンダルに巻き込まれたのは、40歳になる少し前のことだった。
「自分が起こしたことではなかったけれど、大勢のタレントが所属する大手の事務所に自分がいることで迷惑をかけていることも事実。バッシングされることよりも迷惑をかけていることが何より辛くて、『この場所を離れなければいけない』と自分から退所を申し出ました。仕事を始めてから初めて味わった挫折でしたね」
■フリーランスに転身、YouTuberを経て見えてきた働き方「もっと自分軸で生きてもいいんじゃないか」
芸能界を順調に歩みながら、ふとよぎった「このままでいいのか」というモヤモヤ感。その正体は「自分軸or他人軸」という生き方にあったと彼女は振り返る。
「思えばスカウトされたときから、私はずっと他人軸で生きてきたと思うんです。でも芸能界では他人軸=ニーズに合わなければ仕事は得られないですから、それはそれで正解だったでしょうし、自分の好き嫌いで仕事を選んだことは一度もありませんでした。だけど自分が楽しまなければ、人を楽しませることはできない。もっと自分軸で生きてもいいんじゃないかと、ここ数年ずっと考えるようになっていました」
事務所を退社した2ヵ月半後にはYouTubeチャンネルを開設。もともとの多趣味ぶりを存分に発揮している。
「昔から趣味が仕事に繋がることは多かったんです。大好きなサッカーを追求していたらサッカー番組の司会の仕事が来たり、ガンダム好きを公言していたところ富野由悠季監督と対談させていただいたり。自分が本当に必要とされる仕事をいただけたときは、何物にも代えがたい喜びがありました」
フリーランスで芸能活動するようになった今は、さらに"求められる人材"であることを意識するようになったという。
「好奇心を忘れず、引き出しを増やし続けて『この人と仕事したら面白そうだ』というワクワク感を掻き立てる人間でいることが大事。それは会社員でも芸能人でも同じじゃないかなと思いますね」
ロコンドでは兼業も認められており、芸能活動は今後も続けていく意向だ。
「1つの仕事を突き詰める人生もカッコいいなと思うんです。だけど私には“枝分かれ”のほうが向いていました。モデルを一生懸命やっていたら女優や歌手のチャンスをいただいて、やがて司会業にも展開していって。時代の流れの早い今は特に、枝分かれのタイミングで柔軟に動けたほうが波にも乗りやすいですし、そういう意味では目標に固執しなかったのも悪いことじゃなかったのかなと思いますね」
(取材・文/児玉澄子)