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いまの時代の喪失感に希望の光を 映画『八日目の蝉』成島出監督

2011-04-28 13:30 eltha

 角田光代によるベストセラー小説を映画化した『八日目の蝉』があす29日(金・祝)より公開される。小説を読み終え、すぐに出版社に映画化権を問い合わせたという成島出監督は「自分の居場所がない、自分は“からっぽ”だと思っている主人公の喪失感が、いまのこの時代にも通じる、リアルな問題群として胸に迫ってきた」と話す。

 1985年、秋山丈博(田中哲司)、恵津子(森口瑤子)夫婦の間に生まれた生後6ヶ月の女児が誘拐された――赤ちゃんを連れ去ったのは、野々宮希和子(永作博美)。会社の上司であった丈博と不倫の末、子供を身ごもるが産むことは許されなかった。絶望の中で、希和子は衝動的に罪を犯す。本当は恵理菜という名前の赤ん坊を、中絶した子のために用意していた「薫」という名で呼び、わが娘として愛し、4年近い逃亡生活を続ける。

 希和子が逮捕され、恵理菜は実の両親の元に戻るが、4年間の空白を埋めることはできなかった。心を閉ざしたまま成長し21歳になった恵理菜(井上真央)は、かつて母と慕った希和子と同様に、妻子ある男の子供を身ごもってしまう。実の両親との絆が希薄で、自分が母親になった時に子供を愛せるのかと悩む恵理菜は、封印していた過去と向き合う旅に出る。

 恵理菜は自分が圧倒的に愛されていたことを思い出していくのにしたがって、希和子は「今日一日、明日一日、薫と一緒にいられますように…」と、ただその思いだけを募らせながら、どんどんキレイになっていく。

 「井上さんと永作さんはほぼすっぴんです。メイクなんかで表現できるものではないし、僕の演出でもない。彼女たちが手を抜かず内面にリアリティーを持って役を生きてくれた。女優はすごい、強いと思いました」。

 成島監督は、『日本沈没』(2006年、樋口真嗣監督)、日航ジャンボ機墜落事故を題材にした『クライマーズ・ハイ』(2008年、原田眞人監督)などの脚本を手がけ、昨年は現代の医療現場が抱える問題を扱った監督作品『孤高のメス』(2010年)が高く評価された。

 「日本映画を作っていく以上、今の状況の中でできることは何か、ということを考えますので、描きたいと思わせる何かが、どの作品にもある。前作の『孤高のメス』は責任をとる男の映画でした。『八日目の蝉』は責任をとらない男と、何かを背負った女性たちが登場しますが、どんな人生も愛すればそこに光が差す、人間の愛の素晴らしさを描きたかった。恵理菜が見る光を、劇場で観てくださった方々にも届けることができたら、うれしいです」。

【動画】映画『八日目の蝉』予告編⇒


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成島出監督 「エンドロールの小豆島(香川県)の夕景を撮るのに1週間粘りました。風景写真や絵葉書のような美しさではない“光”は、僕のありったけのメッセージです」 (C)ORICON DD inc.  

成島出監督 「エンドロールの小豆島(香川県)の夕景を撮るのに1週間粘りました。風景写真や絵葉書のような美しさではない“光”は、僕のありったけのメッセージです」 (C)ORICON DD inc.  

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