担当課・市町村の垣根を越えた鳥取県の戦略的PRが全国で話題に
「県政情報は、発信するだけでは届かない。」
鳥取県では、こうした課題意識から、ドラマや映画、漫画など話題のコンテンツ、SNS上のトレンド、そして働く職員自身の個性などを組み合わせ、県政情報への「入口」をつくる広報に取り組んでいます。SNS等の広報に使用する写真や文章は、全て職員の手作り。小さな県ならではの、「予算をかけない効果的な情報発信」を行っています。
その一つが、TBS系日曜劇場「VIVANT」をきっかけに展開してきた「VIVANTごっこ」です。

鳥取砂丘や県内ロケ地を作品の世界観と重ね合わせて発信するだけではなく、その話題を観光、地域振興、県職員募集など異なる県政情報へ横断的に展開。
8月28日には、「VIVANT」で阿部寛さんが演じる公安・野崎守を思わせる県広報課職員を県職員採用試験のSNS投稿に起用したところ、9月8日時点で約180万回表示、約2.5万件の「いいね」を記録しました。


さらに、その職員を9月7日に湯梨浜町で開催された全国初の「温泉文化・世界サミット」にも起用。「テルマエ・ロマエ」の原作者・ヤマザキマリさんとの対面が全国報道され、今度は「温泉文化」の情報が広く発信されました。
一つの話題を、一度だけの“バズり”で終わらせない。
SNSで生まれた関心を報道へ、報道で高まった認知を次の県政施策へ。
鳥取県では、担当課や市町村の垣根を越えながら、「世の中の話題を県政情報へつなげる」戦略的な広報に取り組んでいます。
※IPとは、Intellectual Property(知的財産)の略。ドラマ、映画、漫画、アニメ、キャラクターなど、作品やコンテンツが持つ知名度、世界観、話題性などを含めて使われる言葉です。
■「県が伝えたい」だけでは、情報は届かない
鳥取県からは、毎日さまざまな県政情報が発信されています。
観光、産業、食、移住、県職員採用、防災、福祉、文化、イベント――。
いずれも県として伝える必要のある重要な情報ですが、情報があふれる現在、県のホームページやSNSに掲載するだけでは、必ずしも多くの人に届くとは限りません。
特にSNSでは、行政情報も、ニュース、エンターテインメント、企業広告、著名人の投稿など、あらゆる情報と同じタイムライン上に並びます。
そこで鳥取県では、「県が何を伝えたいか」だけではなく、
「生活者が何を入口にすれば、その情報を見てくれるのか」
という視点を重視しています。
その入口の一つとして活用しているのが、ドラマや映画など世の中で注目を集めているコンテンツの話題です。
■きっかけは「VIVANT」
鳥取砂丘から始まった“話題との接続”
鳥取県では、3年前の「VIVANT」第1シーズン放送時から、鳥取砂丘の風景が劇中に登場する架空の国「バルカ共和国」を思わせることをきっかけに、「VIVANTごっこ」を活用した情報発信に取り組んできました。
平井伸治知事をはじめ、県職員らも参加。
単に「鳥取砂丘が似ている」と発信するだけでなく、作品の放送やSNS上の盛り上がりに合わせ、鳥取県の観光や地域情報へ関心をつなげてきました。
第2シーズンでは、鳥取県内で実際にロケも行われ、撮影が行われた日南町をはじめとする地域でも作品を生かした情報発信が広がっています。
8月27日には日南町が期間限定の愛称「NICHI VIVANT CHO」を発表。
県、町、市町村、地域関係者など、行政組織の枠を越えた「VIVANT」を活用した情報発信へと発展しています。


■話題を「観光」だけで終わらせず、県職員募集へ
鳥取県が今回特に重視したのが、「VIVANT」の話題を観光以外の県政情報へ広げることでした。
8月28日、鳥取県広報公式Xで発信したのは「鳥取県職員採用試験」の募集情報です。
県庁内で「VIVANTごっこ」に参加していた、阿部寛さん演じる野崎守を思わせる広報課職員を写真に起用し、
「俺にふさわしい仕事をよこせ!」
「俺をトトリーの幹部にしろ!」
というコピーとともに投稿しました。
発信した情報そのものは、極めて真面目な「県職員募集」です。
しかし、作品を想起させるコピーと職員自身の個性を入口にしたことで、通常であれば県職員採用情報に接点を持たない層にも投稿が拡散。
9月8日時点で、
表示回数 約180万回
いいね 約2.5万件
リポスト 3,950件
ブックマーク 1,779件
返信 155件
となりました。
さらに、テレビ、新聞、WEBニュースなど多数のメディアで紹介され、「県庁の野崎さん」として全国的な話題となりました。
重要なのは、「似ている職員が話題になった」ことだけではありません。
そのニュースの中で、
「鳥取県が職員を募集している」
という県政情報も同時に全国へ届けることができました。
■県庁の“中の人”も広報資産に
鳥取県では、著名人やタレントだけではなく、県庁や市町村で働く職員自身も、県政を伝える大切な「人材」であると考えています。
今回SNSに登場したのは、広報課に勤務する松田健係長(41歳)。
実は、松田は日吉津村職員。人事交流で現在は鳥取県庁広報課で勤務しています。
約20年前から時折「阿部寛さんに似ている」と言われてきたことから、「VIVANT」関連企画では野崎守を思わせる職員として参加するようになりました。
出演依頼があると1週間ヒゲを伸ばすなど、本人も楽しみながら県の情報発信に協力しています。
ただし、今回の取り組みの主役は「そっくりな職員」そのものではありません。
県庁や市町村の中にいる職員の個性や専門性を発掘し、それを県政情報と結びつけること。
松田のケースは、その一例です。
■鳥取砂丘、日南町、県職員募集――
担当課も地域も越えて“話題”を横展開
今回の「VIVANT」をめぐる情報発信は、一つの担当課だけで完結していません。
鳥取砂丘では観光。
日南町ではロケ地を生かした地域振興。
県広報公式Xでは県職員採用。
それぞれ発信したい情報も、担当する部署も異なりますが、情報を受け取る側にとって、担当する部署が異なることは必ずしも重要ではありません。
むしろ、
「鳥取県、またVIVANTをやっている」
「この人、この前も見た」
「今度は何をするんだろう」
という連続した関心を生むことが、別の県政情報を見てもらうきっかけになります。
鳥取県の情報発信では、こうした“話題の横展開”も戦略的PRの重要な要素と考えています。
■「VIVANT」の次は「テルマエ・ロマエ」
話題を温泉文化へ接続
そして9月7日。
鳥取県湯梨浜町で、全国初となる「温泉文化・世界サミット」が開催されました。
サミットは、「温泉文化」の2030年ユネスコ無形文化遺産登録を目指し、日本の温泉文化(「自然の恵みである温泉に浸かり、心と体を癒す」という、日本人に根付いている社会的慣習)を国内外へ発信するものです。
会場には全国の自治体や温泉関係者、地域住民ら約450人が参加。
漫画「テルマエ・ロマエ」の原作者・ヤマザキマリさんが「温泉文化アンバサダー」に就任しました。
ここで再び活用したのが、“県庁の野崎さん”として認知が高まりつつあった広報課職員です。
映画「テルマエ・ロマエ」で阿部寛さんが演じた主人公・ルシウスを思わせる浴衣姿でヤマザキさんと対面し、その様子は共同通信をはじめテレビ、新聞、WEBメディアなどで報道されました。
ヤマザキさん本人からも「雰囲気もそっくりで驚いた」とのお声をいただきました。
結果として、
「温泉文化・世界サミット」
「温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録」
という、本来であれば少し硬く感じられる政策テーマにも、新たなニュースの入口が生まれました。

■SNSで生まれた話題を、次の県政施策へ
鳥取県が今回重視しているのは、この“連鎖”です。
【X投稿再生数ランキング上位】(PV・いいね数は9/9時点)

(参考)
1.鳥取砂丘でVIVANTごっこ中(7/22)
https://x.com/tottori_kankous/status/2079853388549017663?s=46&t=yEU7PTSSbCVBZSCIbjbDDQ
2.土曜早朝 砂丘除草(9/6)
https://x.com/tottori_kankous/status/2096584499228516649?s=46&t=yEU7PTSSbCVBZSCIbjbDDQ
3.除草 除草 除草の順守(9/7)
https://x.com/tottori_kouhou/status/2096763494775542146?s=46&t=yEU7PTSSbCVBZSCIbjbDDQ
4.鳥取県職員募集告知(8/28)
https://x.com/tottori_kouhou/status/2093250985145573683?s=46&t=yEU7PTSSbCVBZSCIbjbDDQ
5.天網恢恢疎にして漏らさず(ドラマパロディ)(8/28)
https://x.com/tottori_kankous/status/2093197439960490404?s=46&t=yEU7PTSSbCVBZSCIbjbDDQ
5.野崎が身を置いている「π」のような世界(9/1)
https://x.com/tottori_kouhou/status/2094667100849869040?s=46&t=yEU7PTSSbCVBZSCIbjbDDQ
6.県庁敷地内でも野崎目撃。(8/28)
https://x.com/tottori_kouhou/status/2093215630682136824?s=46&t=yEU7PTSSbCVBZSCIbjbDDQ
そこで生まれた認知や関心を、別の県政施策へつなげる。
この「話題の連鎖」を意識して情報発信を設計しています。
■“バズること”が目的ではありません
SNSで180万回表示されたことは、大きな反響です。
しかし、鳥取県が目指しているのは「バズること」そのものではありません。
重要なのは、その先に何を届けられたかです。
「VIVANTが面白い」
↓
「鳥取砂丘を知った」
「野崎さんに似ている」
↓
「鳥取県が職員を募集していることを知った」
「テルマエ・ロマエっぽい」
↓
「鳥取県で温泉文化・世界サミットが開かれたことを知った」
↓
「温泉文化のユネスコ登録を目指していることを知った」
“面白い”から入って、“知る”へつなげる。
そして、“知る”から鳥取県そのものへの関心へつなげる。
これが、鳥取県が情報発信で目指しているものです。
■「広告」だけではない、自治体PRの可能性
自治体の情報発信では、広告を出稿したり、タレントや著名人を起用したりする手法も重要です。
一方で、県庁には日々さまざまな情報が集まり、多様な経験や個性を持つ職員が働いています。
県内19市町村にも、それぞれの地域を知り尽くした職員や関係者がいます。
地域の中にすでにある「人」「出来事」「話題」を見つけ、それを世の中の関心と掛け合わせることで、広告とは異なる情報の広がりをつくることができます。
鳥取県広報課では、県庁だけで完結するのではなく、各担当課、市町村、地域関係者とも連携しながら、こうした“鳥取県にすでにある広報資産”を発掘していきます。
■鳥取県× IP × 県職員
“話題を借りて、県政を届ける。”
人気作品が生み出した社会的な話題を入口に、
鳥取県を知ってもらう。
県内の地域を知ってもらう。
県の施策を知ってもらう。
そして、これまで県政情報に触れる機会がなかった人にも情報を届ける。
鳥取県では今後も、SNS、メディア、話題のコンテンツ、そして県庁や市町村で働く「人」を柔軟に組み合わせながら、
「発信する広報」から
「届く広報」へ。
戦略的な情報発信に取り組んでいきます。
■SNS・報道で見る今回の広がり
8月28日
鳥取県広報公式Xで「VIVANT」の話題を県職員採用情報へ展開。
9月上旬
投稿が新聞、テレビ、WEBメディアなどで相次いで報道。「県庁の野崎さん」として全国的に話題に。
9月4日
鳥取県広報公式Xで、9月7日の「温泉文化・世界サミット」を告知。「VIVANT」で生まれた認知を次の県政情報へ展開。
9月6日、7日
鳥取砂丘の除草について発信
9月7日
湯梨浜町で全国初の「温泉文化・世界サミット」を開催。「テルマエ・ロマエ」原作者・ヤマザキマリさんと広報課職員との対面が報道され、温泉文化の情報発信へ波及。
【取材について】
松田健への取材・撮影、鳥取県の「VIVANTごっこ」、県職員を活用した広報施策等への取材をご希望の場合は、下記までお問い合わせください。
鳥取県 令和の改新戦略本部 広報課
0857-26-7020
kouhou@pref.tottori.lg.jp
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