夫婦で不倫！ 「つい出来心で…」後悔する妻と開き直る夫、“どっちが悪い？”巻き起こる論争

　夫とすれ違う日々に寂しさを覚えた妻が、同窓会で再会した元カレと不倫。すぐに夫にバレてしまい、夫婦関係も仕事も失い、両親からは勘当。すべて失ってしまったと思いきや、翌日目を覚ますと、不倫する前にタイムスリップしていた。改心してやり直そうとするも、今度は夫が不倫を始めて…。マンガアプリ『comico』で連載中の『サレシタ逆転夫婦』は、「不倫＋タイムスリップ」という斬新な企画で人気を集めている。原作者の山口夢さんに、企画のいきさつを聞いた。

――不倫をしてしまった妻が、タイムスリップして人生をやり直そうとしたら、不倫されてしまったという物語は斬新です。

山口夢さん不倫してしまった側がされる側になるというのが、この作品の旨みだと思っています。もともと婚活で出会い、条件がよかったから…と結婚した2人。でも妻が不倫をしてダメになって…、それからタイムスリップをして「やり直せるチャンス」と思って夫に心から思いを寄せ始めたら、今度は裏切られる…というところを描きたかったんです。

――いったいこの夫婦はどうなってしまうのか…今後の展開が気になります。

山口さんいじめでも不倫でも、してしまった人は「反省しています」って言いますけど、「本当かな？」と思うことが多々あります。やっぱり心から反省するのは、逆の立場になって自分が“やられて”みないと自覚できないものなんじゃないかなと思うんですよね。だから立場を逆転させて、彼女は本当に反省できるのかどうかも描きたかったんです。自分が不利益を被ったことで反省するのと、被害者側に立ってみての反省は違います。真の反省をしたうえで、夫と不倫相手にどう立ち向かうのか、というお話です。

――そもそも、この作品を描かれたきっかけは？

山口さんもともとは、現在の配信先の『comico』とは別の会社から、「今までになかった不倫漫画を企画してください」と依頼されたんです。ちょうどその頃、『comico』で配信中のもう1本の作品『整形美人の楊貴妃転生』を構想しているところで、そちらでは「転生もの」を考えていました。同時期に不倫と転生ものを交互に考えていたら、頭の中で「なるほど、これだ！」と1本に繋がっちゃったんです。その後、いろいろありその会社での配信はなくなったのですが、『comico』の編集さんに企画を送ってみたところ、すぐに快諾していただきました。

――主人公以外の登場人物もキャラが濃いですね。とくに優しく穏やかだと思っていた夫は、じつはとんでもない腹黒男。さらに不倫“シタ夫”へと変わっていきます。

山口さんこの夫は多分、普通にいるタイプの人なんです。よくニュースなどで事件が起こった時、犯人について近所の人が、「おとなしそうな人でした」「あんなことをする人だとは思いませんでした」って言いますよね。だけど、大人しい人が本当に大人しいとは限らない。大人しい人が、心の内に真っ黒いものを抱えている可能性は、大いにあると思うんです。いじられキャラの人はプライドが高いというのも、よくある話なので。そういう夫の真っ黒い部分を、天才的な小悪魔キャラである不倫相手に見出されて、どんどん開花させられていくんです。

――不倫相手の女性も、したたかで他人の不幸を喜ぶ性悪女です。

山口さん妻が不倫してしまってからのスタートなので、最初の方に頂いたコメントを見ると「誰も応援できない作品」、「全員嫌い」といったことをよく書かれていたんです。妻に対してあまり読者の方が感情移入できない分、せめて悪役をとんでもない悪党にしないと成立しないだろうと…。不倫相手のキャラは、最初はすごくマイルドな子をイメージしていたんですけど、編集さんと「もっとあくどくしよう！」って話し合っていくうちにだんだん楽しくなってきちゃって、私の作品史上、もっともサイコパスなキャラが誕生しました（笑）。

――妻の“出来心の不倫”を上回るくらい、強烈なキャラにしないといけなかったわけですね。

山口さん夫と不倫相手の関係をあくどくしないと…結局妻のほうも不倫してしまっているわけですから、復讐を描こうとしても「不倫しておいて何？」って読者の方々は思いますよね。とはいえ、妻も悪いし。そんな割り切れなさを描きたかったので、この一抹のモヤッと感を味わってもらえれば、この作品はすごく楽しめるんじゃないかと思います。

――登場人物4人が全員、不倫経験者という…。

山口さん言ってしまえば全員クズですよね（笑）。「もっと激しくいきましょう」と言われているうちに、クズしか出てこない作品になってしまいました。

――“サレシタ”の逆転物語に加え、夫のモラハラなど盛りだくさんの物語。今後のストーリーも気になるところです。

山口さん今シナリオを描いているところですが、まだまだ今後もいろんな展開を考えています。ますます面白くなってきているので、読んで「こう来たか！」と思っていただければ嬉しいです。
（取材・文／渡辺麻美）